高齢馬、全身状態が悪い馬、重症の骨折馬などでは、全身麻酔からの覚醒時の起立に危険があることを、いままで何度か書いてきた。
少しでも安全に起立させるために、床の柔らかさを工夫し、麻酔に注意を払い、頭と尻尾にロープをつけて起立を介助し、必要だと思われたときには吊起帯を使っている。
ひとつの理想的な方法は、Barbaro が入院しているNew Bolton Center のようにプールに浮かべて覚醒させる方法なのだろうが、これには数千万かかる施設が必要だ。
子供を連れて行ったスーパーマーケットのゲームセンターの遊具に、柔らかいプラスチック製のボールを厚く敷き詰めて、その中で転がりまわって遊ぶものがあった。
馬を覚醒させる部屋も、そういう柔らかいボールを敷き詰めたらどうだろうかと考えたことがある。
しかし、馬がびっくりしないかとか、どのくらいの柔らかさのボールが適当で、どのくらいの量が必要で、血液、糞、尿で汚れたボールを洗うのはどうすれば良いか、片付けるのにどのくらい手間がかかるか、そして費用は? などと考えただけで、実現は難しいだろうとあきらめた。
が、なんとやっているところがあった。
Equine Veterinary Education 2006, 8(5), p356 に写真がでている。
著者はオハイオ州立大の A.Ishihara 先生(日系人だろうか?)。
馬に体重をかけさせないように、プールに浮かべておくと、約75%の負重を減らすことができるが、骨量の減少、呼吸障害などの問題が起きるとされている。
しかし、この柔らかいプラスチックボールを使えば、それらの問題を避けることができる。そうだ。
もとは人医療でリハビリ用に考え出されたらしい。
一度経験してみたい。子供と一緒に・・・・・・
500kg、600kgある動物を麻酔から覚まして立たせるのはたいへんです。とくにサラブレッドは走っているだけで骨折したり、馬房の中で骨折してしまう動物ですから。
100%安全ということはありえないのですが、人馬ともにできる限り安全な方法を求めていかなければいけないと思っています。