真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「スケベ研究室 絶倫強化計画」(2015/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:高橋祐太/撮影・照明:飯岡聖英/撮影助手:矢澤直子・竹川泰斗/編集:酒井編集室/録音:小林徹哉/助監督:菊島稔章/監督助手:馬場慎司/スチール:本田あきら/音楽:與語一平/整音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/タイミング:安斎公一・石井良太/協力:海津真也・《有》アシスト/出演:竹内真琴・美咲結衣・西村ニーナ・橘秀樹・市川裕隆・村田頼俊・知恵蔵・兼田利明・荒木太郎)。出演者中、兼田利明は本篇クレジットのみ。それと久々の何も挟まない無印国沢実は、2010年第一作「THEレイパー<闇サイト編> 美姉妹・肌の叫び」(脚本:新耕堅辰=樫原辰郎/主演:成田愛)以来。
 鮮血飛び散る、フリーク・アウト新ロゴ開巻。食パンこそ咥へてゐないものの、主演女優が「遅れちやふ!」的に道を急ぐ。ドリル大学もとい法慶大学付属病院に飛び込んだ看護婦の二宮茜(竹内)は手始めに白衣の国沢実を突き飛ばし、清掃婦の福原敏江(知恵蔵/野タレ死二から連れて来たのか玉の湯から連れて来たのか判らない扇まや似のオバハン)に注意された上で、研究開発室所属の研究医で、この期に及んでいはゆる牛乳瓶メガネの草野安雄(橘)と正面衝突する。茜と草野は胸を触つたそつちがぶつかつて来たで一悶着、その場を離れた茜に、草野が視線を送つてタイトル・イン。単にその内慣れて来たに過ぎないのかも知れないが少なくともここでは、橘秀樹の発声に舞台と勘違ひしてゐるのではあるまいかと耳を傾げさせられる。
 タイトル明けは深夜の巡回、翌日に手術を控へた森浩二(荒木)は最後の夜と勝手に悲観し、茜に出張風俗を呼んで呉れるやう求める。「私でよければ」とザクザク白衣を脱いだ茜は森に跨り、跨られた森は茜を天使と喜悦する。後日、「又やつちやつた」と脊髄反射の自己嫌悪に暮れる茜は、バイオハザードマークが物々しい研究開発室に配属される。一応セキュリティはそれなりの研究開発室に恐る恐る足を踏み入れてみた茜が二部屋目に入ると、そこには大体ゾンビ化した状態で拘束された村田信之(村田頼俊)が。村田は自力で拘束をパージ、茜に飛びかゝつたところに草野と、女王様造形の研究開発室主任・相沢麗子(美咲)が現れ、麗子は鞭で村田を制圧する。少子化の原因が精子の劣化にあると突き止めた研究開発室は、精子を増強する新薬その名も「スペルマックス」の開発に着手。村田はその被験者で、ゾンビ化は副作用とのことだが、精子増強の効能の有無以前に、そこクリアしないととてもそんな代物ロールアウト出来んぢやろ。新田栄が長く沈黙する今、斯くも鮮やかなツッコミ処を無造作あるいは無防備に放り込んで来るのもアッパー時の国沢実くらゐしか残されてゐないのではなからうかと思ひかけて、関根和美も清水大敬も、ナベも依然全然絶好調に現役である点に思ひ直した。閑話休題、スペルマックスは、要は中出ししないと効果を発揮しないロマン仕様。この半年で十三人の入院患者を喰つた茜が、臨床試験に適任と白羽の矢を立てられたものだつた。茜は一旦当然当惑しつつ、世界を救ふだ何だと言ひ包められるやコロコロその気になる。尻が軽ければ頭も軽い、ピンク映画にうつてつけのヒロイン像を竹内真琴がキュートに快演する。因みに妊娠しね?といふ疑問に関しては、草野から茜に渡される絶対避妊薬「キルピル」で回避。因みにキルピルは単なる小ネタに止(とど)まらず、敏江が仕出かした粗相が時限式に火を噴く、後半巻き起こる大騒動の発端として機能する。のは何気に秀逸にしても、よくよく考へてみると、極秘プロジェクトを預り、暗証番号式電子錠で施錠された研究開発室に、そもそも敏江が普通に入れたのは謎。
 配役残り市川裕隆は、研究開発室開発部長・池井圭太郎、麗子とは結婚の空手形を切る仲にもある。西村ニーナは法慶附属医院長令嬢・相沢麗子、屋内でも日傘を手放さないゴスロリ。事前には鎌田一利の変名かと思ひきや、この人も舞台畑の兼田利明は、菊島稔章と多分馬場慎司とともに失意の茜に天使の羽と笑顔を贈る入院患者A。皆で茜を囲み「笑顔、笑顔」と励ます件、荒木太郎のお株を奪つたが如きプリミティブなエモーションが地味に出色。一撃必殺のシークエンスは、如何に藪から棒なものであつたとて心に残る。
 Vシネ界ではそこそこ戦績もあるらしき、高橋祐太を新たに脚本家に迎へた国沢実2015年第二作。夢の新薬といふよりは悪い冗談の珍薬―更に直截には“チン薬”か―の臨床試験に、股の緩い白衣の天使が大ハッスルする。底の抜けた物語は括つた高を覆す革新的な展開が唸りを上げる、でもなく。他愛ないの一言で片付けて済ますのはいとも容易い始終ながら、近作ここに来て勢ひを感じさせる国沢実は堅調を維持。木に接いだ竹かと思ひきや、起爆する伏線の地味な鮮やかさ込みで、悪魔とマッドエンジェルとが激突するクライマックスは、国沢実の渾身に撮影部も感応、超絶美麗なショットを撃ち抜く名場面。「笑顔、笑顔」の件とクライマックス大激突の二点突破で残りの類型的な顛末はチャラにしてなほ釣りが残る、スッカスカの紙一重でスカッとさせる一作である。裸映画的にはアイドル顔のビリング頭と煽情的な爆乳を誇る三番手を事実上両脇に従へた、二年四作に亘り二番手レギュラーを張つた美咲結衣が場数不足も想像に難くはない男優部を捻じ伏せ、ウッスラ貫禄すら漂はせる重量級の濡れ場を披露。ただ惜しむらくは、国沢組だけでなく、以降の新作に名前が見当たらない点はそれだけに重ね重ね残念無念。


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