真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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たわゝな気持ち 全部やつちやはう
は行
/
2020年09月30日
「
たわゝな気持ち 全部やつちやはう
」(2019/制作:不写之射プロ/提供:オーピー映画/脚本・監督:古澤健/企画協力:佐々木浩久/撮影:山田達也/照明:玉川直人・柴田裕哉/録音:臼井勝/音響:川口陽一/音楽:宇波拓/編集:松竹利郎/助監督:島崎真人・菊嶌稔章/ヘアメイク:五十嵐良恵/スチール:平野敬子/合成:金魚事務所/合成・タイトル:古澤健/画面制作:東海林毅/撮影助手:高嶋正人・丸山圭/ヘアメイク助手:木田芙優美/撮影応援:高橋裕美/演出応援:高杉孝宏・綱木謙介/オフラインデスク:蟇田忠雄・土井直樹/仕上げ:東映ラボ・テック株式会社/美術協力:イースト・プレス、辰巳出版株式会社/協力:久保田修・菅原文・立石勝・ドルショック竹下・二村仁・馬場誠・原崇・原吟子・細野牧郎・村山えりか・森平晶・CLOP CLOP・松庵稲荷神社・TWO-WAY・トヤジ・長谷川時計眼鏡店・ユリイカ・株式会社アップサイト・クリッパーエンターテイメント・グンジ印刷株式会社・株式会社テックス・株式会社東宝映像美術・日本照明株式会社・株式会社マービィ/出演:松本菜奈実、あけみみう、川瀬陽太、加藤ツバキ、古澤健、佐藤文吾、春埼めい、佐藤考太郎、後藤ユウミ、加藤紗希、大野大輔、鏡ゆみこ、つかさ、深澤しほ、阿久沢麗加、飯田一広、柏木風子、田歌理恵、タケ、永井ちひろ、魔子、蜜蜂マーヤ、村井健太、もりへー、モリ・マサ、山下桃子、和ルイ子)。出演者中、阿久沢麗加以降は本篇クレジットのみ、このゾーン五十音順だな。
開巻の開口一番口跡がカミッカミで早速屋号が聞き取れない、ファッションヘルス「出たとこゴニャゴニャ」。佐藤文吾が電話を取る店長の赤城で、左右からアタシアタシと出撃を買つて出る嬢の二人は不明。電話で注文を受ける、そのお店はファッションなのかデリなのか。兎も角その頃別室では風俗ライターの三留綾(松本)が、始終スマホを弄つてゐるノリカ嬢(春埼)にインタビュー。まるでヤル気のないエリカもといノリカが碌に答へても呉れなかつた紹介記事を、綾が自室にて適当に捏ち上げる画にクレジット起動。不毛な仕事に一段落と溜息ついたタイミングで出て来た、贈られたのも忘れてゐた手作りの鉛筆を抜いてタイトル・イン。結論を先走ると、タイトル画にまで使つた割に、後々ワンマンショーで用ゐるのが関の山。結局鉛筆が主モチーフにしては心許なくも機能しない、そこで雌雄が決せられてゐたのかよ。
鉛筆の贈り主である、会社員の大塚肇(古澤)と綾の同棲生活は、大塚の粘着質な説教癖に綾も毅然とした対応を示せず、徒な長尺を捏ね繰り回すばかりでメタ的にも煮詰まる。出入りするアングラ出版社、芳賀ならぬ「破瓜出版」の編集長・田中一郎(川瀬)から雑誌の休刊を告げられる一方、中略して大塚のジーパンを洗はうとして風俗店のスタンプカードを見つけた綾は、業態が不明な―衣装があるみたいだからイメクラかなあ―「ノモレ」の嬢で大塚贔屓の篠原カレン(あけみ)に、取材を装ひ接触。棹姉妹とでもいつた塩梅からか、二人は何となく仲良くなる。そんな、こんな。藪から棒に映画を撮つてゐるといふカレンは、自作に出てみないかと綾を誘ふ。ところで破瓜出版の編集部には、竹洞哲也2018年第二作「
青春のさゝくれ 不器用な舌使ひ
」(脚本:深澤浩子/主演:川上奈々美)と、関根和美2015年第四作「
特務課の罠 いたぶり牝囚人
」(主演:きみと歩実)のポスターが貼つてあつたりする、凄くランダムな二本ではある。
全部は詰めきれない配役残り、加藤ツバキは、田中と飲みに行き潰れた綾が意識を取り戻すと、田中と致してゐたセフレの篠原マリア。ロケも田中の部屋でなく篠原家、娘は店に出勤中か。後藤ユウミと加藤紗希は、相変らず田中と飲んでゐたところ緊急事態と呼び出した綾を、サプライズの誕生会で迎へる友達の皆川芹那と木下優香。綾が三十になるといふのは、公称を真に受けると結構な逆サバ。大野大輔は、ノモレの店長・星野大輔。蜜蜂マーヤと和ルイ子は綾がカレンも伴ひ取材に行く、SMクラブ―公式にはカミングアウト・サロン―「ユリイカ」の女王様セルフで、鏡ゆみこがママセルフ。その他辿り着けないのが、二人見切れる破瓜要員。通された控室にて、カレンを待ちくたびれた綾が寝落ちてゐるとペットボトルを取りに来るノモレの嬢と、ラバーマスクで吊られる―当然完全に面相は見えない、判る訳がない―ユリイカの奴隷氏。に、綾を多分主演に撮影するカレン組の、見た感じ助監督か制作部・ナベちやん、メガネがエモい。芹那が録音部、優香がレフ板を抱へ、カメラはカレンが8mmを回す。それでもなほ余る頭数ないし名前は、どうせピンクには映つてもゐまい。大事な点ゆゑ繰り返す、どうせピンクには映つてゐまい。
佐々木浩久が本人の希望を大蔵に繋いだ、古澤健のピンク筆卸作。以降は八月頭に第二作が封切られたのに続き、タスフェスが先行する形で、今作の続篇も情報公開されてゐる。よもや、OPP+のみなどといはないだらうな。それだと何も足してゐないぞ、逆に今まで、何を足してゐたのかも知らんけど。
幾ら蓼食ふ虫も何とやらとはいへ、迸るほど魅力に欠き、何でまた斯くもクソみたいな男と主演女優が一緒に暮らしてゐるのかが最初から破綻したSF設定ばりに解せない、モラハラ野郎との生活に塞ぐヒロインが新しい友人との出会ひを契機にするまではいいとして、行方不明になつてゐた自分ぽいサムシングを何時の間にか見つける物語。何はともあれ、川瀬陽太相手に、正常位で突かれる下から優位に立つ強靭にして素晴らしい見せ場に恵まれる、加藤ツバキに関しては何の問題もない。といふかこの人、大絶賛現在進行形で加速してゐる。グジャグジャ自堕落に決戦兵器のオッパイを持て余す、対大塚戦はこの際忘れてしまへば、松本菜奈実も、締めの濡れ場を川瀬陽太に介錯して貰ひそれなりの形にはなる。そこで完遂しないさせない、小癪ささへさて措くと。反面、まるで二次元から造形したフィギュアの如き浮世離れたスタイルを誇りながら、二番手のあけみみうが甚だ酷い、女優部は一ッ欠片も悪くない。綾と浸かる狭い風呂を除くと、その直後唯一の絡みとなる大塚との店長・店員プレイを一通りなぞる件が致命的。グッダグダ外堀で矢張り尺を執拗に浪費した挙句、いざとなると古澤健が腰のひとつ満足に触れない無様極まりない体たらく。言語道断、慷慨憤激。苟も小屋に木戸銭を落とした客に、見せて許される代物とは到底断じて皆目認め難い。出し抜けであれ藪蛇であれよしんば木に接いだ竹であれ、松本菜奈実と百合の花を咲かせてゐた方が百京倍マシ。役得監督となると池島ゆたかの以前に、古澤健は荒木太郎の爪の垢でも呑んで来ればいい。二人とも放逐されてゐるではないか、全体何処から連れて来るんだ。自らの倫理観にのみ従ひ、アグレッシブに性を謳歌するマリアに対し、綾がてんで掴み処のない経緯を通して啓かれる蒙が、セックス・ワーカー同様、セックス自体を自身には縁遠いものと特別視してゐたとかいふ、薄らフワーッとした覚束ない方便にも何をこの女と開いた口が塞がらなくなるほかない。荒木太郎の爪の垢を呑んだ次は、古澤健は浜野佐知に地獄突きを叩き込まれて血反吐を吐けばいい。結局、己の登場場面でさんざ無駄な回り道に明け暮れた挙句、綾が答へに辿り着く過程は二足も三足も飛ばす。七十分でまだ足らないやうであれば、素人考へでしかないが正直ピンクは難しい気がする。返す刀で大塚の左頬に気がつくと痣が出来てゐるのは、それは性懲りもなく、タス版を観るか見ないと話が繋がらないナメた寸法なのか?大蔵に改める気がないのは先刻承知の上で、こちらも厭かずに最後までいふ、
本末転倒て言葉知らないよね
。普段あれだけ淡白に見えた、竹洞哲也ですらあれで絡みの専門性に余程長けてゐたのかと再認識させられる程度の裸映画にせよ、川瀬陽太による最低保証と、ボヨヨンボヨヨン階段を下りるだけでダッダーン!する松本菜奈実が誇る絶対爆乳の威力とで、呆れたり匙を投げないくらゐには観てゐられる。半分どころか、全殺す気満々の得物を手に女達が朗らかに駆ける一応か力技な爽快感の一点突破で、劇映画的にも墜落するでなくラストまでどうにか漕ぎつける。そんな古澤健大蔵上陸作を評して、橋渡しした佐々木浩久いはく“僕のよりよほど真つ当なピンク映画になつてゐます”。
こ、こんなら(゚Д゚)
F4級倉庫でガッチンゴッチンに凍らせた豆腐の角で、急所を強打せれ、貫通せれ。どの面提げてもしくは、怒髪冠を衝くとは正しくこのことである。まだまだ、あるいは現代的な別の意味の在り方で、ピンク映画が今なほ熱い。
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