真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「本気ONANIE ‐ひわいな中指‐」(1997/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/音楽:OK企画/編集:㈲フィルムクラフト/脚本:後藤丈夫/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/出演:泉由紀子・小川真実・佐々良淋・久須美欽一・杉本まこと・栗原一良・寺島京一)。晴れやかに中途半端な位置の脚本クレジットは、本篇ママ。
 王冠開巻から、わがまゝボディの泉由紀子が受話器片手に轟然と本気ONANIE。OLの水上昭子(泉由紀子/a.k.a.柚子かおる/a.k.a.吉田チホ/a.k.a.いずみゆきこ)が燃えるテレフォンセックスのお相手は、同じ会社の婚約者で北海道勤務の安井雄二(杉本)。但し安井の傍らには、浮気相手の絵美(佐々良)が。んむむむむ、猛烈に何処かで見た気がするのは、決して気の所為でも迷ひでもないぞ。今上御大和久時代の1997年第一作は、最初で最後にして謎のエクセス作「ザ・変態ONANIE」(1992/小川欽也名義/脚本:池袋高介/主演:藤崎あやか)の焼き直し、もといセルフリメイク。兎も角これで、「ザ・変態ONANIE」が矢張り小川欽也作にさうゐないことは、ひとまづ明らかとなつた。
 配役残り、久須美欽一と小川真実が、昭子隣室の史郎・美保夫婦。五年前から進化した家庭用ビデオカメラを所有し、安井からビデオレターを求められた昭子に頼られる。ところまでは元作を踏襲してゐるものの、史郎は昭子に手を出さず、寧ろ結婚後は百合を封印してゐた、バイの美保が食指を伸ばす。二作皆勤かつ、ほぼ全く同じ配役に座る離れ業をやつてのける栗原一良は、金を貸して呉れた昭子を手篭めにする、外道の極みの小林。但し安井の弟ではなく、単なる横恋慕同僚。寧ろ鉄方面で著名な寺島京一は、史郎の部下・工藤。同じポジションとはいへ、ビデオを借りに史郎宅を訪ねるでなく、登場する必然性は限りなく透明に近く薄い。序盤で二回戦まで戦つた佐々良淋が以降潔く退場するのは、変態ONANIEとの相似といふよりも、三番手の宿命に殉じたと解する方が相当であるやうに思へる。
 最大の相違は、昭子がバツイチとかいふ藪蛇な設定、ではなく。史郎に『ZOOM-UP』誌編集といふ明示された職が与へられ、グラビアのオナニー特集に添へる記事に初めから頭を悩ませてゐる点。結果的に、美保の助力を受け、女がワンマンショーする際のメソッドに関して新たな知見を得た史郎の、原稿の方向性が決まるのが本筋。ビリングには違ひ、昭子はといふと要はその過程に於ける単なる出汁に過ぎず、ついでにスルメは蛸に変更される。泉由紀子のだらしなく豊満な肉体もお腹一杯になるだけ尺を占めつつ、始終を最終的に支配するのは小川真実・久須美欽一の黄金コンビ。逆にこれだけの濡れ場比率の高さで、諸々の展開を幾らやつゝけにせよ盛り込んだものだと感心さへ覚えなくもない、裸一貫ならぬ裸一徹の清々しい一作。客は何を観に来てゐるのか?女の裸に決まつてゐるだらうバッカモーン。腰の据わつた本義を前に、映画として面白いだとか詰まらないだとかその手のいふならば些末な議論は、沈黙するに如くはない。

 付記< ex.DMMで未見の欽也名義作を探してゐて、恐らく周知の事実に遅れ馳せながらこの期に辿り着いた。2017伊豆映画「湯けむりおつぱい注意報」(脚本:水谷一二三=小川欽也/原題:『童貞と激欲の熟女たち』/主演:篠田ゆう)が、「いんらん民宿 激しすぎる夜」(2000/脚本:清水いさお/主演:野村しおり)の矢張り焼き直し。今作に於ける栗原一良と同じ離れ業を、平川直大と久須美欽一が達成してゐる。


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