真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「お色気セールス 人妻なまめく香り」(1995『セールスレディ バイブ訪問販売』の1998年旧作改題版/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:《有》フィルム・クラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:西海謙一郎/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/出演:早川優美・小川真実・林由美香・杉原みさお・葉月螢・杉本まこと・太田始・栗原一良・青木和彦)。何故か各種資料には池袋高介とあるものの、脚本の水谷一二三は小川和久(現:欽也)の変名。独特の位置は、何か知らんけどそこが落ち着くのであらう。もう、さういふことにでもしてしまへ。
 化粧品訪問販売の森津也子(小川)が得意の主婦・水上美保(早川)に、日頃の謝恩に半額でお分けすると取り出したのが、手首ごとオブジェ感覚の中指バイブ。贅沢にも暇を持て余す、美保から持ちかけたパートの件は決まつたらしく、津也子は辞す。カーテンを閉めた美保が、腰を下し手首を手に取つたところでタイトル・イン。そのまゝスタッフからクレジット起動、まづはお乳首に当てて俳優部、パンティ越しに中指を添へた観音様に、小川和久の名前が入る何気に磐石なタイトルバック。
 社名不明の何とか化粧品何処そこ営業所、所長(杉本)と、上司と部下に止(とど)まらず、所長とは男女関係にもある北村和枝(林)が見やる営業成績のグラフに並ぶ名前が、左から溝口・森・北村・黒沢・成瀬・今村・小津・大島・伊丹。シネフィル臭い、些末か小癪な映画好きアピールなんぞ要らん。さういふ真似がしたいのなら、当時大蔵レギュラーの小林(悟)・山崎(邦紀)・市村(譲)・川合(健二/a.k.a.関根和美)とかにすればいい。案外といふか何といふか、かうして見てみると寧ろ今よりも薄い。兎も、角。常に断トツの売上を誇る、津也子の営業手法に所長―と和枝―は一応程度の猜疑を懐く。
 配役残り太田始は、結婚一年にして早くもレス気味の美保夫。水上に、美保が津也子からガバガバ化粧品を買ふ稼ぎがあるのかしらん、といふのも疑問といへば疑問。葉月螢が、双方熱愛のどうかした勢ひで入れ揚げる水上浮気相手。ここで改めて振り返ると、太田始の最新といふ意味で最後の新作ピンク出演が、大絶賛今をときめかない荒木太郎の2014年第二作「巨乳未亡人 お願ひ!許して…」(主演:愛田奈々)。多呂プロに復権の芽が全く見えない、どころですらない状況下、太田始は今上御大が伊豆映画で救済なりサルベージしてあげればなんて、相も変らず埒の明かない繰言。さて、措き。杉原みさおは、団地を攻める和枝・美保と別れた津也子が例によつてジョイトイでオトす、恐らく戸建住まひの主婦。美保は和枝の勧めで、大東銀行ことぶき―独身―寮(物件的には東映化学/現:東映ラボ・テック)を訪ねる。栗原一良がそこの鈴木で、最終盤に漸く登場する青木和彦が鈴木と同期の山本。適当につけましたといはんばかりの、苗字が清々しい。忘れてた、営業所内にもう一人見切れる男は井戸田秀行、ではなく。テレビ畑を主戦場にキャリアを積み重ね、昨年遂に長篇デビューを果たした西海謙一郎。別館調べだと、旦々舎に参加した形跡が最も多く窺へる。
 ex.DMMに記載された粗筋に目を通した際、如何にも焼き直しの元作臭いと身構へつつ、単に煌びやかなまでに類型的な物語―と、いふほどのものでもない―に過ぎなかつた、今上御大和久時代(昭和51らしい~1998)の1995年第六作。
 津也子―美保も―は何某か良からぬセールスをしてゐやしまいか、あるいは、何気にスリリングな水上夫妻の夫婦仲。展開の動因たり得る二点に関して、前者は本当に触れるだけ触れて綺麗に等閑視。後者も後者でことぶき寮にて自身も羽目を外す美保が当分様子見する方向に、華麗に棚上げする。さうなるとドラマが転がりも深まりもする訳がなく、あとは必ずしも男女の絡みに限らずとも淫具を駆使しての、ひたすらにひたすらにただひたすらに、濡れ場濡れ場を連ねるに終始するある意味ひたむきな、より直截には水のやうな裸映画。前半は残りの女優部に見せ場を譲り、後半ことぶき寮を大爆走して盛り返す主演女優。葉月螢と太田始のエモい対面座位等々見所はそれなりに見当たる中でも、最大のハイライトはパッと見何がどうなつてゐるのかまるで判らない、特殊な器具を陰部に装着した杉原みさおが、豪ッ快な大股開きで飛び込んで来る振り切れたカット。


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