真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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OL発情 奪ふ!/DMM戦
か行
/
2014年01月27日
「
OL発情 奪ふ!
」(2002/制作:セメントマッチ・光の帝国/配給:新東宝映画/脚本・監督:後藤大輔/企画:福俵満/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:清水正二/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/助監督:佐藤吏/監督助手:竹内宗一郎/撮影助手:長谷川卓也・岡宮裕/スチール:山本千里/協力:小林悟・森角威之・田中康文・小川隆史/音楽:怖(COA) “TRAFFIC MESS” “CELL VISION”・EDDIE MARCON “ブルウス”/Thnks to:J.L・Kyoko・Pocha・Jotaro・Yuta・Bill・Eddie・Mann end mary/出演:奈賀毬子・坂本ちえ・酒井あずさ・平山久能・新納敏正・江端英久・松木良方)。
“われわれは災厄が目に入らぬやう 自分の前に何か荷物を置いたのち 気楽に災厄の中を走つていく”(スペース部で改行、原文は珍かな)と開巻、軽くググッてみてもそれらしきものが見当たらないところをみるに、オリジナルの文句なのかな。どんででででんでコーラスが起動して逆さの奈賀毬子と夢の島の風景を手短に繋げ、シェイクするタイトル・イン。金曜日、何事か一千万用意しないとヤバいらしき尻に火の点いた川田(江端)が闇雲に走り、錠剤を食べ食べ彷徨ふ自殺願望の女子高生・さゆり(坂本)は、自らスカートを捲り浮浪者(松木)を誘惑する。一方夢の島ではゴミ収集車セックスがてらマリ(奈賀)がヤスオ(平山)に、清掃員のバイトで入る会社の金庫に現存が確認されてゐる、一千万の強奪を持ちかける。その夜、マリの手引きでヤスオもビルに侵入、目指すオフィスは地下。何故か寝てゐた一般職の女子社員・圭子(酒井)を拘束し、ヤスオが電動ドリルでロッカーを開け始める。圭子の不倫相手で課長の勝呂(新納)が圭子の身を案じ社に戻るも、マリに見付かり修羅場となる、ところに、浮浪者からさゆりを奪つた川田までもが飛び込んで来る。
挙句に
、勝呂に加勢してマリの腕に噛みつくさゆりは、勝呂の娘であつた。ややこしさの連鎖が一息ついたのも束の間、千代田区を中心に半径六十五キロメートルを壊滅させる直下型大地震が発生。以外のライフラインは意外に健在な割に外部からの情報は途絶え、それ以前に地上への通路を閉ざされた、一同は身動きが取れなくなる。
初陣
を小屋で再見したのをいい機会に、DMMに拾ひに行つた後藤大輔ピンク映画第二作。こちらも見るのはリアルタイム以来―ネタ的に、昨今のナーバスな世知辛さを鑑みると新版公開し難いか―で、大まかな粗筋以外に覚えてゐたのは、協力の先頭に大御大の名前が並ぶ意外性。小林悟は前年十一月に
文字通りの戦死
を遂げてゐるゆゑ、明けて八月公開の今作がクレジットにその名が載る、最後の作品となるのかも知れない。仮にさうなるとそれはそれとして歴史的に重要な一作ではあり、
清水大敬病を発症した堀禎一
のことは無視する。物語に話を戻すと、結果的に極限状況に放り込まれた、全員器用に訳アリな三人づつ六人の男女。そこまでは如何にも映画的にはありがちな話として、それにしても僅かな尺に火種を盛り過ぎた上、ジャンキーにしか見えないマリとヤスオに、食生活から問題があるとしか思へない川田。頭数の半分の足がギャーギャー上滑るばかりで地に着かないとあつては、始終が悉く形にならない。といふか、今気付いたが勝呂父娘は生死すら放置されてゐる、小さな所帯なのにあんまりではある。満足にエモーションをモノにするのは、精々稚拙な一生が切ないヤスオの死に様程度か。あまりにも的確なので感服しつつそのまま引用させて頂くと、m@stervision大哥仰せの“
話がパンクだから演出もパンクであるべきとは限らない
”といふ簡潔にして完全な一言に尽きる。但し、川田の設定に関しては滅茶苦茶なのだが。お馬さんで組の金を溶かした大卒ヤクザが、何がどう転んだとて何処にも掠りさへしない醜聞にテンパッた官僚になるくらゐだから、そこまで聞こえなかつたのかな?あまりにも
台詞が聞こえなくて小屋で匙を投げた体験
ならば、個人的にもなくはないが。それと憚りながら大哥に逆らふ大罪を犯すと、最も魅力的に奈賀毬子を捉へる仕事は、
既に新里猛作が
やつてのけてゐると俺は思ふ。
最後に、再度映画本体に話を戻して、非現実的なオチのほかにもう一点ツッコミ処。マリとヤスオがワーキャーするのは致し方ないにせよ、勝呂が、あるいは勝呂も実は一千万を持ち逃げし圭子と高飛びする腹であつた、といふのは些か非常識ではなからうか。いい大人がしかも二人で、人生を清算出来る額ぢやないぞ。
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