真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻女医 性奴隷の悦び」(2013/製作:幻想配給社/提供:オーピー映画/監督:友松直之/脚本:百地優子・友松直之/撮影・照明:田宮健彦/編集:酒井正次/助監督:石川二郎/監督助手:貝原クリス亮/撮影助手:俵謙太・川口諒太郎/ヘア・メイク:江田友理子/スチール:高橋大樹/制作応援:奥渉/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/制作協力:幻想配給社・アウトサイド/出演:小沢アリス・小林さや・青山真希・福天・津田篤・金子弘幸・倖田李梨)。公開題の画期的なまでのどストレートさに震へる。
 総合病院の心療内科診察室、キモいダサいウザい四十代―には見えないが―負け犬を自虐する津田篤が、女医の主演女優を手酷く陵辱するエクストリームを、開巻即叩きつけた上でタイトル・イン。別に休んでゐた訳ではないゆゑ当たり前なのだが、実に迷ひがない。
 ポップに打ちひしがれた田中(倖田)の診察を終へた村上玲奈(小沢)を、夫で外科医の雄介(福天)が訪ねる。夫婦の予定がある雄介は、玲奈の助手・葛西春子(小林)と何事か脛に傷持つらしき目配せを交した上でそそくさと捌ける。その夜の予定といふのは、雄介が実兄のやうに慕ふ従兄弟・宮田秀彦(津田)の来宅。リストラされたのに加へ、離婚した秀彦が鬱を患つてゐるのではないかと案じ、雄介は心療内科の診察を促さうといふのだ。込んだ負けがグルッと一周して厄介にアグレッシブな秀彦は、ガキの頃から長い雄介の風呂に乗じて、玲奈に軽くでもなく手を出す。兎も角いざ診察、元嫁の浮気の現場に出喰はした体験を告白した秀彦は、男女双方の移り気を玲奈のフンドシも借り遺伝子が求める多様性に帰する方便を、とても弱つた人間には思へない立て板に水のアクティブさで開陳。そんな秀彦に、神と契約を交しもせずに“永遠の愛”とやらを信じるだなどと自堕落に口にする春子は接近、シレッと凶悪な共同戦線を張る。
 改めていふと中村和愛の「三十路同窓会 ハメをはずせ!」(2001/共演:星野瑠海・佐々木基子)以来実に十二年ぶりとなる、驚愕のピンク帰還を果たした青山真希(ex.逢崎みゆ)は秀彦の元嫁・佳織と、秀彦が友人から借りたDVDを見る、AVデビューした元アイドル設定でのハーセルフ。DVD内でも青山真希と絡む金子弘幸が、佳織の間男・伊藤、氷売りらしい。何故氷なのか、氷にするならリンゴにすればいいのにといふのはオジサン趣味。
 ①ナイーブなオタク青年が②誰も知らない映画女優と③銀幕の中で終に添ひ遂げる。今世紀空前の美しさを撃ち抜いた衝撃作「囚はれの淫獣」(2011/主演:柚本紗希・津田篤)で干されたといふのが、ためにするリップ・サービスなのか実際さうなのかは在野の一ピンクスには与り知らぬにせよ、何はともあれ二年ぶりに目出度くピンクに復帰した友松直之の2013年第一作。城定秀夫と山内大輔を擁しソリッドに暴れるエクセスも視野に入れると役者が揃つた高揚感が昂りつつ、旦々舎撤退の衝撃から目を逸らさないならば、目下響くのは森山茂雄の沈黙。人の話は措いておいて、何処かで観た気もする薄味の展開を、頑強に御馴染みの友松直之持論で埋め尽くすプロパガンダ戦術は良くも悪くもお手の物。但しそんな中、静かに凶暴なキャラクター込みで口跡を疾走させる、津田篤のビート感が今作の出色。同じく友松直之が十八番とする、春子が雄介を分断しての濡れ場併走も裸と映画両面安定してお見事。申し訳ないが医師国家試験に合格した才媛には一ッ欠片たりとて見えないものの、造形の成果もあるのか、首から上に受ける印象からは予想外の小沢アリスのムッチムチ、ムッッッッチムチな爆裂と、こちらはオッパイは寂しめともいへ、現代風にアップデートした吉行由実に見える小林さや。ともに35mm主砲にその身を曝すのは初めてながら、友松組は経験済みのこともありエクセスライクな痛痒は全く感じさせない。「セカンドバージン」を墜とすのは今作では無理にしても、悪意に満ち満ちたラストの切れ味の鋭さが逆に清々しい印象を残す、ひとまづ挨拶代りの強烈な一作。2013年のピンク映画は、いよいよ面白いことになつて来さうだ。ぼちぼち年の瀬に、何をスッ惚けた寝言を垂れてゐやがるといふのはいはないで(´・ω・`)

 ひとつ友松直之に負け戦を挑んでおくと、相続といふ要素も重視した私有財産制と、生まれて来た子供に初等・中等・高等教育まで基本受けさせたい社会的要請を考慮するだけで、現行の結婚ないしは家―庭―制度を、超克して行くのはなかなかな難事業であるやうにも思へる。ドロップアウトした癖に、パラダイムに囚はれてるかな?


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