真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻エロ道中 激しく乗せて」(2013/制作:ラボアブロス/提供:オーピー映画/脚本・監督:田中康文/撮影:下垣外純/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/音楽:小鷹裕/助監督:江尻大・小山悟/撮影助手:佐藤光・竹野智彦/メイク:ユーケファ・岩浅美津子/スチール:本田あきら/協力:小林徹哉/現像:東映ラボ・テック/出演:加藤ツバキ・桜瀬奈・佐々木基子・なかみつせいじ・那波隆史・津田篤・岡田智宏・荒木太郎・太田始・井尻鯛)。出演者中、井尻鯛は本篇クレジットのみ。音楽の小鷹裕が、ポスターには小高裕。
 狭いライトバンの車内、手篭めにするほどでもなく岡田智宏が加藤ツバキに迫り、事に及んでタイトル・イン。二日前、高速道路を西に走る、映画制作会社「映像工房どんまい!」の社有車。堀真希江(加藤)のリストラされた夫・宏(なかみつ)は父急病の報を受け、どんまいに勤める友人・金田将(太田)から借りた車で福岡を目指す。ついでで同窓会に出席する、真希江も同乗する。真希江が離婚届を準備してゐるのを、宏は知つてゐた。睡魔に抗ひかねた宏は、一旦SAで休憩を取る。ところが車外に出たところで他の車に撥ねられ、九州上陸を目前に入院を強ひられる怪我を負ふ。加へて何でか知らんが切迫してるぽい金田の強い求めに応じ、運転の出来ない真希江が、車を東京まで運ぶ羽目に。知人には断られ、業者は条件が合はず。八方塞り気味の真希江に、一仕事終へたトラック助手・刈谷(岡田)が接近。親切な好青年の風を装ふ刈谷に真希江は釣られ、二万円で交渉成立。とはいへ勿論、刈谷はポップなまでの送り狼。ヤることを済ますや、しかも山中で真希江とバンを残し姿を消し、真希江は改めて途方に暮れる。
 配役残り井尻鯛(=江尻大)は、どんまいに出入りする花井。車を借りに来た宏を、金田は不在のどんまいにて迎へる。小山悟を追ひ越してゐるのにも驚かされたが、リアリティある花井の小芝居が地味に超絶。桜瀬奈と津田篤は、刈谷に去られ動きの止まつた真希江が道を挟んで出会ふ、ヒッチハイクで東北方面を目指す菜月とトシ。互ひに渡りに舟と、トシがハンドルを握る。誰かさんを拘束する二人組の内、一人目の声は田中康文、二人目は知らん。佐々木基子と荒木太郎は、トシが目敏く拾ふ、何もない山道を絶望的な風情で進む本城夫妻・加奈子と茂。那波隆史は、茂が金を返しに向かつた街金にカチ込むアウトサイダー・江藤。江藤を追ひ弾けるやうに飛び出して来る若い衆は突破力の衰へない平川直大で、刺されて血塗れの街金が小林徹哉、平川直大も何処かにクレジットしてやれよ。
 黄金週間公開の田中康文2013年第一作、といつて、以降がお盆の薔薇族しかないのは正直寂しく物足りない。2012年末封切りの正月映画もあるとはいへ、勝手な希望としてはもう少し量産態勢をとつて貰ひたいところではある。顔の骨格がヴィン・ディーゼルとほぼ同じ主演女優を美しく銀幕に刻み込むことには成功し、本州を横断しつつ、登場人物が徐々に増え飛び道具込みで転がつて行く物語は頗る魅力的。もうひとつ忘れてならないのは、旅の往路、まだ宏が運転してゐた頃。会話のない車内に、カーラジオから流れるバンドサウンド。映画力が迸る、音楽の富の奪取ぶりがキラキラと輝いて素晴らしい。となるとここは、ヒッチハイクものといふと森山茂雄の大金星と、国沢☆実の白星が続いただけに俄然期待が膨らみかけたものの、残念ながら仏の顔は三度目を待たずにエンド。ヒッチハイク・ピンクがエンストする原因は明白、中盤以降何もさせて貰へないヒロインが、素直に何もしない激しい疑問手。菜月&トシに本城夫妻と、新しく車に乗る面々が何れもカップルゆゑ、それぞれがそれぞれのパートナーと絡みをこなしてゐる間、風呂に浸かるのが精々の主演女優が基本蚊帳の外といふのは、流石にピンク映画として致命的。実は物騒などんまい号の最終的なケリをつけるのは江藤で、そもそも菜月が開けたパンドラの函を、真希江は覗いてさへゐない。受動的極まりない真希江と何時の間にか次の仕事の決まつた宏の夫婦生活で締めの濡れ場を纏めてみせても、それは清々しく便宜的といふものだ。れいの心が世界を包む奇跡はおろか、沙紀と久美が無理矢理抜けた地平にすら遠く及ぶまい。部分的には悪くないと同時に、全体的には決してよくもない。田中康文にも、セカンドバージンは墜とせなかつた。

 それとも、あるいはこの期に及んで今更かも。池島ゆたかなり浜野佐知なり、この人の場合お目付け役のPが居た方が芳しい結果に繋がる、とかいふ考へ方も出来るのかな?


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 白衣妻 不倫... 妹・OL・人妻... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。