真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「喪服不倫妻 こすれあふ局部」(2001『喪服の女 崩れる』の2013年旧作改題版/制作:セメントマッチ・光の帝国/配給:新東宝映画/監督・脚本:後藤大輔/原案:堪忍/企画:松盛健二・福俵満/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:佐藤吏/監督助手:小川隆史/撮影助手:末吉真・馬場元/応援:下垣外純/出演:佐々木麻由子、木村圭作、松木良方、中村方隆、螢雪次朗、新納敏正、かわさきひろゆき、神戸顕一、水原香菜恵、河村栞、森久美子、手塚美南子、あおい・かやの、山咲小春)。出演者中、手塚美南子とあおい・かやのは本篇クレジットのみ。
 親戚縁者の香苗(水原)と娘二人(あおい・かやの/どちらのお嬢さん?)、章(中村)と秋男(新納)、弘之(かわさき)とくみ子(森)に豊(螢)が順々に、故人を偲びながら焼き上がつた骨を箸で拾ひ集める。呆然と一人蚊帳の外気味の喪主代理・立花富子(佐々木)が促され、拾つたお骨を骨壷に入れてタイトル・イン。富子が戻つたのは、零細印刷会社「ローズ社」。葬儀は富子の姑・きぬゑのもので、本来ならば喪主を務める筈のきぬゑの息子、即ち富子の夫・守(松木)は事故で足と脊髄を損傷し、下半身不随で寝たきりの身であつた。足は兎も角脊髄をヤッた割に、上半身は屈強な若い男にスリーパーを極められるほど元気でもあるのだが。さて措き鬱屈と死の気配漂ふローズ社を、喪中の案内を気にしながらも、工員募集の貼紙を目にした坂田隆三(木村)が訪ねる。元々夫婦二人きりで回してゐた仕事は富子一人の手には余り、そのまま坂田は住み込みで厄介になることに。汗の滴る作業場、印刷機の奏でる爆音と、元々は音楽を志してゐたといふ守が指揮者気取りで聴くクラシックのLPレコードに紛れ、坂田は富子を犯す。初めこそ拒んでゐたものの、直ぐに精悍な坂田を受け容れた富子は、やがて閉塞した今の生活を捨てることと、新しい人生とを坂田に求める。
 登場順に配役残りトメの山咲小春は、守の担当医・矢野杏子。富子とは同性愛の関係にあり、男にも抱かれる両刀の富子に対し、杏子はガッチガチのレズビアンであると思はれる。手塚美南子は、一人で見切れる看護婦。神戸顕一と河村栞は松葉杖の患者と、神戸顕一を介助しつつ院内で煙草を吸ふ富子を注意する看護婦・佳織。きぬゑの遺影の主と、富子を坂田が後ろから突くのが戸の隙間から覗くのにも気付かずに、器を回収する出前持ちは不明。
 あのm@stervision大哥が明らかに平衡を失して激賞すらしてをられた、後藤大輔のピンク映画第一作。個人的には清々しくリアルタイム以来で、旦那が片端の工場に流れ者が転がり込む、粗筋中の粗筋しか覚えてゐなかつた。要は、限りなく殆ど初見と変らない。さうしたところ、あらうことか濡れ場に至つても細切れの酷いプリントに妨げられてか、幸か不幸かピンク映画の観方に影響が及ぶほどの衝撃は受けなかつた。ベタ足で作品世界を積み重ねて行く重低音の語り口の中で、富子と杏子が突発的に百合の花を咲かせる浮き足がまづ際立つ。加へてもうひとつの更なる根本的な唐突が、終盤に加速する。普通の映画でも事前に上映時間を調べれば同じことなのだが、尺の尽きるのが予め実感し得るプログラム・ピクチャーにあつて、着地点の明白なラストへの足取りは性急に過ぎる、呆気ないのを通り越した粗雑なものと映つた。中村方隆・螢雪次朗・新納敏正ら地味に潤沢な布陣も、焼き場を都合二度通り過ぎるのみ。となると、らしくない以前に大雑把極まりない与太を吹くやうだが、あともう十分戦へる、ロマンポルノ向きの企画であつたのではと思へなくもない。


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