真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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全国変態妻 ‐どスケベ三昧‐/DMM戦
山﨑邦紀
/
2015年03月18日
「
全国変態妻 ‐どスケベ三昧‐
」(1996/製作:旦々舎/提供:Xces Film/脚本・監督:山﨑邦紀/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/撮影:千葉幸雄・嶋垣弘之/照明:上妻敏厚・荻久保則男/編集:酒井正次/音楽:中空龍/助監督:高田宝重・飯塚忠章/制作:鈴木静夫/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:美咲あやの・月野ひとみ・細野里緒・春野ふぶき・泉由紀子・扇まや・杉下なおみ・杉本まこと・佐々木恭輔・鈴木道徳・青木こずえ・甲斐太郎)。
飛行機の着陸をモノレール越しに押さへてタイトル・イン、奥に東京タワーを置いた新幹線の画を挿み、クレジットに乗せて主演女優、二番目と三番目、杉下なおみに泉由紀子、続々と女々が馳せ参じる。更に若干名の男衆を加へた一同が会する一室、四つん這ひのウェディングドレス姿の女が、白衣の鈴木道徳に二股の張形で責められる。達した女が拍手に送られ捌けると、甲斐太郎にピンスポットが当たる。“心の同類と馬鹿をやらう”、“自分の変態を誤魔化さないで愉快な変態を厳密にやらう”をモットーとする、いはゆるマニアさん達の同好会「厳密美学研究会」主宰の梅原潔(甲斐)が会の総決算的な大イベントの開催を宣言したところで、噂を聞きつけたフリーのビデオジャーナリスト・ミナミレイコ(青木)が乱入する。梅原は取材の条件としてレイコが自身等と“心の同類”になれるか否かを提示し、事実上門前払ひ。開巻二番目の大阪から来た女と、鈴木道徳を助手ポジションに強姦プレイを敢行・撮影した梅原は、事後は大阪から来た女が持参した三重名産の赤福に舌鼓を打つ。
配役残り、山﨑邦紀アテレコの高田宝重は序盤で早くも核心を割る、リビング・ニーズの件で梅原を訪ねる保険会社社員。泉由紀子はラバーフェチの女で、佐々木恭輔が泉由紀子戦の助手役。泉由紀子の土産はういらう、漢字で書くと外郎て書くんだ。続いてはビザールかと思ひきや、要は単なるコスプレらしいミチコ(美咲)篇、ここでの助手は再び鈴木道徳。杉本まことは、プレイの最中に雪崩れ込むミチコ夫。飛び込んで来るや出し抜けに女房の頬を張る杉本まことと、ミチコが激しく遣り合ふ一幕では美咲あやのがエクセスライクを吹き飛ばす、予想外の決定力を披露する。田中スタジオのエレベーター前で佐々恭に出迎へられる扇まやは、九州から明太子を手土産にやつて来た自ら曰く“二穴同時挿入の女”、正体不明の説得力を迸らせる。杉下なおみは正直泉由紀子と被る、レザーフェチの女・タカコ。この人は札幌からで、おみやはレーズンホワイト、品のセレクトも弱い。依然残す出演者に関しては、纏めて後述する。
フロンティア・ロスト、
今回は
伊達ではない、
水元はじめも見尽くした
、正真正銘の残弾数ゼロである。オーピーのデジタル新作が観られる目処が未だ立たない中、大蔵時代の凄い旧作の新版プリントを焼いて呉れるのを期待するほかなくなつてしまつた。何気に絶望的な泣き言はさて措き、兎も角山﨑邦紀1996年最終第六作。最期を見据ゑた男が仕掛ける、一世一代の馬鹿騒ぎ。といふと
絶頂研究所
に先行する魅力的な大風呂敷にも思へ、話はなかなかさう単純には進まない。
今回
脱ぎも絡みもする女優が総計八人といふ大軍勢の所以は、対正月の御祝儀布陣。ところがこれが、諸刃の剣が悪い方向に転ぶ。濡れ場濡れ場と正直他愛ない津々浦々感に尺を埋め尽くされた結果、梅原のドラマが一向深化しない以前に、そもそも率直なところ量を優先した、粒の揃はぬ女優部すら自壊する。どストレートに可愛いルックスとプックリ悩ましく膨らんだオッパイの美咲あやのや手短に消化される泉由紀子に加へ、トメ前に座る青木こずえに至つては、クライマックスに及んで駆け込み気味に漸く脱ぐ始末。挙句に、八人も並んでゐるにも関らず、どう見てもなほ名前が少なくとも一人分足らない。オーラス今際の間際の梅原が見る全裸走馬灯の中に登場する点とビリング推定から、大阪から来た女が恐らく月野ひとみで、終盤コンビで片付けられる猿轡女とクスコ拡張女が細野里緒と春野ふぶきの何れかではなからうかとは、容易に推測出来る。ところが、さうなると些かカメラが遠く見慣れない人相が判然としない開巻三番目と、目隠しで隠された顔が殆ど満足に抜かれないウェディング女が仮に同一人物であるとしても、この人がクレジットから抜けてゐる。開巻三番目≒ウェディング女が、大阪から来た女・猿轡女・クスコ拡張女の何れでもないことは首から上的にも下的にも間違ひない。無闇な大所帯自体が混乱を来たしてゐるとなると、映画が纏まらないのもある意味至極当然の結果といつたところか。但し御上に怒られる箇所は強い光でトバした、銘々が微笑みながら順々にお迎へに来るオーラスの全裸走馬灯。役者の違ひを見せつける青木こずえの貫禄が出色、細い腰から骨盤にかけての充実したラインの美しさが比類ない。
薔薇族込みで五十本弱のDMMピンク映画chの山﨑邦紀の頁には、実は浜野佐知1992年第五作「
拷問水責め
」(脚本:山崎邦紀/主演:木下みちる)と、遠軽太朗通算第三作「
喪服妻暴行 お通夜の晩に‐
」(1998/主演:里見瑶子)が紛れ込んでゐる。DMMがザルなのか元々エクセスが仕出かしたのかは兎も角、これ、となると逆に何処か余所に山﨑邦紀作が混入してゐる可能性があるかも知れないのか?
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