真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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痴漢病棟
あ行
/
2015年03月31日
「
発情病棟 女医たちの下半身
」(2002『痴漢病棟』の2014年旧作改題版/製作:ジャパンホームビデオ株式会社・新東宝映画株式会社/配給:新東宝映画/監督:愛染恭子/企画:福俵満/プロデューサー:寺西正己/撮影:飯岡聖英/助監督:石川二郎/録音:シネキャビン/ラインプロデューサー:藤原健一/照明:多摩三郎/編集:酒井正次/音楽:川口元気/脚本:山口伸明/演出助手:亀井享・斉藤勲/撮影助手:田宮健彦/照明助手:宮坂斉志・鈴木秀崇/スチール:山本千里/メイク:原川潮美/現像:東映化学/制作協力:フィルムワークスムービーキング/出演:愛染恭子・小室友里・沢木まゆみ・深澤和明・江口琢也・けーすけ・山科薫・我宮大凱・河内正太・久保和明・中村英児・新里猛作・翔見磨子・高橋りな・早生・青山円・中川真緒・いぬいりさこ・江面貴亮・大西裕・藤原健吉)。出演者中早生が、ポスターには松井早生、脚本クレジットの謎位置は本篇ママ。
平尾総合病院深夜二時、当直勤務の看護婦・谷まゆみ(沢木)が、一人で巡回に出る。得体の知れない気配に怯えつつも恐々ナース・ステーションに帰還、したところで正体不明の暴漢に襲はれたまゆみは、レイプされてゐるといふのにワッシャワッシャ潮を噴く。さざ波のSEとともにタイトル・イン、沢木まゆみが超絶裸身で飛び込んで来る、開巻―だけ―は完璧であつたといへるのか。
平尾総合病院理事長・平尾亜紀(愛染)は、院内で頻発する暴行事件に事務長の相川(山科)と頭を抱へる。亜紀は翌月全国総合病院連合会初となる女性理事長に立候補の予定を控へ、被害者に渡し事件を揉み消す口止め料も馬鹿にはならなかつた。亜紀は院長で婿養子の高志(深澤)の紹介で、弁護士の森山知恵(高橋)に調査を依頼するやう提案。亜紀と相川の遣り取りはさういふ話であつた筈なのに、いざ白衣姿でカウンセラーを偽装する知恵と再会した、高志は激しく動揺する。二人は過去に、因縁浅からぬ仲にあつた。
配役残り高橋りなは、劇中二人目の看護婦被害者・清水里子。深夜コッソリ一服するかとした屋上にて、里子が犯される一幕。そもそも夜中に干しぱなしの点からツッコミ処な、病院風景のクリシェとして一面に広がる白いシーツに、里子が巻かれるなり不自然に自ら飛び込むなりしてゐると、何故かみるみる裸に剥かれて行く爆裂するストレンジ具合がグルッと一周して紙一重をも越える迷描写。リアルタイムに駅前ロマンと故福岡オークラで複数回観て以来、十三年ぶりの再見にも関らずそこだけは記憶にあつた。人の心に刻み込む、サムシングを有したシークエンスではあるのだらう。松葉杖を突く早生は、無理心中未遂の入院患者・本橋美雪。江口琢也はこちらは車椅子の入院患者の、各種資料には小室とされるも作中では伊沢か井沢、職業ホスト。けーすけは、何で入院してゐるのか全然元気な橋田、神崎組のヤクザ。知恵の尋問を軽く受けた橋田は、適当に受け流して読みかけのヤンマガに再び目を落とす。ここで、パーンとヘッドボードにヘッドレスト代りに威勢よく巻きつけたタオルが、直後のカットでは消えてゐる、だから誰も気づかなかつたのか。翔見磨子は婦長の田所君子、この人は脱がない。軽く友松直之似の我宮大凱は、平尾総合病院に入る合同警備のガードマン・塚本。勤務中にも飲酒してゐるのを知恵に嗅ぎつけられた塚本が、それが判るのはアンタも酒好きかと口説きかけるのは、些か奇異に思へる。非喫煙者と同じで、アルコールの匂ひには寧ろ下戸の方が敏感なのでは?その他、知恵が自宅に呼ぶ出張ホスト二人組の片方は中村英児。知恵が参加する「断酒の会」の皆さんは、主に藤原健一・大西裕ら内トラ部隊か。小室友里登場直前に手洗ひで陵辱される入院患者役が、濡れ場を務めるものの暗くて不明、よもや翔見磨子の二役?
結局
創立五十周年
を記念する体力は残されてゐなかつた新東宝が、四十周年を記念したPINK‐Xプロジェクトの栄えあるのか別にさうでもないのか甚だ微妙な第一弾。いい機会かどうかは兎も角この期に改めて掻い摘んでおくと、PINK‐Xプロジェクトとは新東宝がVシネ会社と組み、本当かどうかは知らないが一本当たり一千万と通常三倍強の予算を投入した、全七作計八本―前後篇の二本立てを一作含む―の作品群。といつて、手放しで面白いといへるのは一作くらゐ。3/8は小さくでもなく汚いキネコで、ピンク映画の記念作にしては概ねキャスト・スタッフともVシネ勢に侵食された挙句に、一体何処に一千万かゝつてゐるのかよく判らずロマンポルノばりの分厚さを感じさせるものは皆無。要は当時的にはやらかした臭が濃厚で、再評価の機運にも寡聞にして触れた覚えのない、よくいへばチャーミングな、端的には清々しく漫然とした企画であつた。
さて今作単体に話を戻すと、知恵が平尾総合病院に入るに当たつて高志は関与してゐるのかゐないのか、主人公の導入路から右往左往する物語。亜紀が見守る中、机上で四つん這ひにさせたまゆみと里子に、知恵がいはゆる手マンで犯行を検証する抜けた底がドリフ桶よろしく頭の上から降つて来さうな珍場面。ある意味、始終は順調に混迷する。そもそも、終に全うにキャリアを積み重ね灰汁が抜けることもなく我が道を歩き通した
塾長
―不脱の仕事は引退してゐないけれど―と、どんな台詞も安く聞かせる、別の意味での特異な才能を有した深澤和明(ex.暴威)がビリング上位に名前を連ねる時点で、明白に脆弱な俳優部。悪い条件しか見当たらない割には、本当に先が読めない謎の犯人探しは不思議と綺麗に展開、してゐたかのやうに思へたのは括つた高に瞳を曇らされた早とちり。上手くサスペンスが機能してゐたのではなく、単に下手に退路を断つてゐたに過ぎなかつた風呂敷を、ガッチャガチャに畳み損なふ粗雑なラストは逆の意味でお見事。百歩譲つて主演女優といふのならばまだしも、大体周年記念の幕開けに監督二作目の愛染恭子を連れて来た人選から問はれるべきなのかも知れない、PINK‐Xを象徴する一作である。
最後に、PINK‐Xプロジェクト一覧、第一弾が本作。
第二弾「プレイガール7 最も淫らな遊戯」(2002/監督・脚本:中野貴雄/誰を主演扱ひしたらいいのか覚えてない)
第三弾「
につぽん淫欲伝 姫狩り
」(2002/監督・脚本:藤原健一/主演:西村萌・りょうじ)
第四弾「紅姉妹」(2002/監督・原作・脚本:団鬼六/脚本・監督補:亀井享/主演:小川美那子・沢木まゆみ/これが前後篇公開)
第五弾「
政界レズビアン 女戒
」(2003/監督:愛染恭子/脚本:藤原健一/主演:愛染恭子・清水ひとみ)
第六弾「
痴漢電車2003 さはられたい女
」(2003/監督・脚本:神野太/主演:中谷友美)
第七弾「
愛染恭子VS菊池えり ダブルGスポット
」(2003/監督:愛染恭子/脚本:寿希谷健一/主演:愛染恭子・菊池えり)
先に触れた、手放しで面白いのは最終第七弾。この際、終りよければ全てよしといふ方向で >どの際だ
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