真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「巨乳秘書 逆レイプ」(1994/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志・小山田勝治/照明:秋山和夫・永井日出雄/音楽:藪中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:女池充・戸部美奈子/制作:鈴木静夫/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:小山美由紀・田代葉子・如月ジュン・栗原良・ジャンク斉藤・山本竜二)。
 出し抜けに山竜が主演女優をレイプ、顔立ちは幼さを残す主演女優の、デローンと迫力あるオッパイがエクストリーム。二人は文学少女と作家先生らしく、挿入のストップモーションにタイトル・イン。半年後、ロマン派ミステリー作家・和田俊一(山本)の秘書の座に納まつた早苗(小山)に、前秘書の証言も得て和田の下半身スキャンダルを追ふゴシップ誌『現代ジャーナル』編集者・岡田(栗原)がしつこく食ひ下がる。ここは一旦振り切られつつ、金縁のサングラスをキメた栗原良(=リョウ=ジョージ川崎=相原涼二)が完全に悪党にしか見えないものの、それはそれとして画になる。早苗が、抽斗の中にも酒を常備する和田のアシスタント・筒井(ジャンク)と仕事をしてゐると、端から喧嘩腰な、バツ5で一応目下は独身である和田の前妻(田代)が和田宅―勿論旧旦々舎―を急襲する。一方、和田の前秘書・ミチヨ(如月)は、岡田曰く“スキャンダルを暴露することで日本の権力構造を撃つ”とやらの『現ジャー』編集方針にコロッと心酔。ロケーション的には公園のベンチにて、岡田がニーハイに置いた手の甲に手を添へる、要は膳を据ゑたかと思ふや、次のカットはそのまゝズバリ「旅館」なるポップ過ぎる連れ込みの看板。ザクザク濡れ場に突入する高速感が堪らないのと、序盤は田代葉子の裸は温存した上で、俳優部全員が十分そこらで出揃ふ手際も地味に光る。
 「-男あさり-」と「-のしかかる-」(二作とも脚本:山崎邦紀/主演:辻真亜子)、「近所のをばさん」二部作に挟まれた浜野佐知1994年第六作。因みにDMMのピンク映画chが、2000年新版「巨乳秘書 いたぶる!」と重複して収録ゐる無頓着は御愛嬌。乗り込んで来た前妻の姿と、執拗な岡田の追求。そもそも当初は自身も手篭めにされたこともあり、早苗は次第に、心酔してゐた和田に疑問を覚える。手堅い中盤を経て、何処で解禁するのか、下手を打つと映画全体を壊しかねない危惧も残さぬではない、田代葉子の絡みで早苗の背中を押す展開が女の裸と劇映画、ピンクで映画なピンク映画としてあまりにも秀逸。止(とど)めの一手はそれまで早苗が和田との行為で実は感じてゐなかつた告白を踏まへ、やさぐれた賢者ポジションの筒井に投げさせるその名も“性感奪還闘争”!冒頭レイプされたヒロインが、看板に謳ふ逆レイプで華麗に逆襲。実際に「これからはそんな馬鹿馬鹿しいセックスしない」、「自分の為に気持ちよくなるの」と宣言してみせるクライマックスは旦々舎・オブ・旦々舎な名場面。漂はせる捻くれた知性との兼合ひもあるゆゑ微妙なところながら、これで筒井役がもう少し色男であれば、最終的に仕事と恋路を両立した早苗の勝利がよりサマになり、性感奪還闘争の以前に筒井が早苗に提示する、いはゆるリアルよりリアリティーといふもう一本の魅力的な視座の追求には尺が回らなかつた点には微かに心を残すともいへ、“女の立場から、女が気持ちよくなるセックスを描く”旦々舎らしさが綺麗に形になつた一作。早苗が筒井に跨る騎乗位にクレジット起動、早苗が筒井の上で激しく気をやる、要は開巻を引つ繰り返したストップモーションに“FIN”が被さるラスト・ショットの強度も完璧。

 案外少ないともいへるのか、公開題に“逆レイプ”を冠したピンクは三本しか存在しない。今作と、一ヶ月後公開の矢張り旦々舎、山邦紀1994年第三作「いんらん令嬢 野外逆レイプ」(主演:石原ゆり)。先行する、小川和久(現:欽也)の「監禁《秘》逆レイプ」(1993/脚本:水谷一二三=小川欽也/主演:水鳥川彩)がDMMに見当たらないのが残念。


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