真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「本番女医 濡れまくり」(1997/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山邦紀/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/撮影:田中譲二・田宮健彦・戸田聡申/照明:秋山和夫・中野守/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:井戸田秀行/制作:鈴木静夫/スチール:岡崎一隆/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:水沢侑希・青木こずえ・田口あゆみ・杉本まこと・平賀勘一・樹かず・リョウ《友情出演》)。
 深夜の病院廊下にクレジット起動、“宿直室 平島奈津子”の表札。病室での内科入院患者・楠田雄次(平賀)と、その日―個室である―病室に宿泊することを許された妻・リエ(田口)が夫婦生活をオッ始める様子を捉へたビデオ映像に、楠田の担当医で、当病院の理事長夫人でもある平島奈津子(水沢)が視線を注ぐ。奈津子がブラウスの釦を外すと、首から上はある意味綺麗なおかめ顔ながら、威圧的なまでに見事なオッパイがボガーンと大発射。爆乳を揉みしだきながら大股開きで悶え始めるとタイトル・イン、開巻のパンチ感は圧巻。
 名札が見えさうで微妙に判読出来ない外科医(杉本)に「今夜会へない?」と誘はれた美津子は、「いいはよ」と吃驚して呆気にとられるほどの即答。割烹「富士乃」にて密会、新病院建設予定の関西に張りつく理事長と、事実上別居生活を送る美津子に杉本先生(仮名)は離婚の二文字すら持ち出して迫るも、見事にかはされる。ここで、清々しいまでに真直ぐな棒口跡はこの際―どの際だ―さて措き、水沢侑希は確かに乳も太いが全部脱がせてみると、要は全般的に太い。騎乗位の体勢になるや明らかに自分よりも体積の大きな女に乗られた、杉本まことが正直苦しさうだ。兎も角、水沢侑希V.S.杉本まこと第一戦は中途で切り上げ、平島病院(仮称)にキャップと大きなグラサンとで顔を隠した、明らかに不審な樹かずが現れる。激しい胃の痛みを訴へたミュージシャン・氷室真吾(樹)が検査入院することになつた美津子の診察室に、氷室の熱狂的ファンの看護婦・喜多マキコ(青木)が飛び込んで来る。氷室には呆れられ美津子には嗜められつつ、勿論その夜、マキコはいはゆる逆夜這ひを敢行する。配役残りカメオのリョウは、仕事が一段落ついたとやらで翌日帰京する旨の電話を入れる、美津子の夫・吾郎。
 前を肌蹴ただけだと相当のプロポーションに見えるものの、諸肌脱いだ状態では巨乳といふよりも要は巨体。凄く器用に、且つ物凄く派手に着痩せする主演女優を擁した浜野佐知1997年第二作。量産型娯楽映画が時に打ち込んで来る、吃驚キャスティングも今となつては麗しい、麗しいといふ言葉の意味知つてるか?女の裸をつらつらと愉しむ分には何ら問題はない―寧ろ、デカい女好きの御仁には猛烈に堪らないのかも―ものの、劇映画としては決して芳しくはない。患者を預かる責任だの、チェックは奈津子限定だのといつた戯けた方便で全病室に二十四時間体制の監視カメラを設置してゐるといふ平島病院(仮称)の基本的な設定が、手短な電話を入れるのみの出番で何しに出て来たのかよく判らないリョウの口から語られるのが尺も折り返しを過ぎた後半、といふのは些か遅きに失してはゐまいか。美津子はマキコV.S.氷室戦の翌日、薬物で昏睡させた氷室をマキコの仕業に偽装して喰ふ。尺八で抜いた氷室の精を胸の豊かな正しく双球に垂らすと立体的な弧を描いて流れ、更にそれを自分で舐めるショットは激しく扇情的で素晴らしいのだが、大概なお痛をカメラの存在込みで氷室に辿り着かれてからの終盤が頂けない。娯楽映画の王道たる勧善懲悪に従ふでなく、身から出た錆といふか自業自得とでもいふか、兎に角美津子が追ひ込まれた絶体絶命を覆す奇策が繰り出されるでもなく。表の顔と裏の顔とやらてんで釈然としないキー・ワードで無理矢理畳み込まうとするラストは、最終的には水沢侑希のエクセスライクに阻まれまるで纏まらない。田口あゆみは単なる平勘の恋女房、青木こずえも矢張りただの氷室真吾のグルーピー。女優部後ろ二人が濡れ場要員の枠の中に留まる布陣の中で、旦々舎一流の女性主義を徹底させた結果、よりもう一歩踏み込むならば固執した結果。さりとて悪人でしかないヒロインを素直に敗北させられぬ頑迷さが、物語の着地を歪めたものと評するところである。

 吾郎からの電話を取つた直後に、サンドイッチを買ひ訪ねて来た杉本先生(仮名)を美津子は―理事長が―帰つて来るのは明日だからと自宅に招く。ここもてつきり吾郎が一日予定を早め修羅場が繰り広げられるのかと色めきたつたのは、リョウ(=栗原良=ジョージ川崎=相原涼二)十八番の“どうしてかうなつたんだ”が見たかつたゆゑの勇み足。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )