真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「淫乱人妻ドライバー 男を乗せて、乗せられて」(1995『痴漢人妻タクシー』の2014年旧作改題版/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/脚本・監督:北沢幸雄/企画:業沖球太/製作:奥田幸一/撮影:千葉幸雄/照明:高原賢一/音楽:TAOKA/編集:北沢幸雄/助監督:瀧島弘義/監督助手:徳永恵美子/撮影助手:嶋垣弘之/照明助手:原康二/ネガ編集:酒井正次/車輌:スーパー・ドライバーズ/効果:東京スクリーンサービス/出演:生島奈香江・吉行由実・七重八絵・神戸顕一・真央元・倉岡恭平・国沢実・杉本まこと)。
 夜の繁華街、遠山小百合(生島)が運転する益子交通のタクシーが、吉行由実と真央元を拾ふ。クレジット起動と後部座席の二人は開戦、吉行由実が運転席に放り出す足が危なつかしい一頻りを見せた後、運転者証を抜いてタイトル・イン。本格的な吉行由実と真央元の一戦にアテられた小百合は、住宅地の狭い路地に勝手に停車。自宅に飛び込むと台所にモクモク白煙を噴く七色のフラスコを所狭しと拡げ、どうやら新薬開発に励んでゐるらしき夫・健太か謙太か憲太(杉本)に夫婦生活をせがむ。
 配役残り、え!?もう残り配役かよ。国沢実は、休憩中の小百合にちよつかいを出す益子交通の同僚。その件で見切れる小百合の車のナンバーが「練馬55 ね 19-19」、地味に洒落てゐる。倉岡恭平は、泣き落としで自宅に連れ込んだ小百合を、殆ど和姦気味でもあれ手篭めにする関西からの単身赴任男・平岡。七重八絵は実家に帰ると鼻息の荒い客・マーちやん、お揃ひのベアーのトレーナーの画期的なダサさが紙一重を越えて素晴らしい神戸顕一がマーちやんの夫で、新婚一ヶ月未だ初夜に二の足を踏んでゐるタッくん、童貞だけど大巨根。婚前交渉など初めから考へない人生観につき当然未経験のタッくんに対し、マーちやんもさうだよねと話を振られたマーちやんが何気にギクッとする小ネタが秀逸。
 関根和美のピンク映画最高傑作「淫行タクシー ひわいな女たち」(2000/脚本:金泥駒=小松公典/主演:佐々木基子・町田政則)に、新里猛作のデビュー作「痴漢タクシー エクスタシードライバー」(1999/脚本:大河原ちさと/プロデューサー:友松直之/主演:田中要次・奈賀毬子)。池島ゆたかの「人妻タクシー 巨乳に乗り込め」(2004/脚本:五代暁子/主演:持田さつき・牧村耕次)はぼちぼちとしても、母数自体が小さい中打率は比較的高いと思はれるタクシー・ピンク。予習した「暴行タクシー ハメられた女たち」(1997/主演:杉本まことと一応風間由衣)が漫然とした出来であつただけに当初の期待が危惧に翳つた、北沢幸雄の1995年第四作。今作はヒロインが自らハンドルを握つてゐる分、右往左往することなく始終は素直に直進、ビリングもグラつかない。各エピソードが相互にリンクするでなく、これといつた物語があるでもない上で、ラストの呼び水には吉行由実と真央元が再登場し展開を整へる。確かに男を乗せたり乗せられてばかりの、小百合の日々を綴る語り口はさりげなくスマートに纏まつてをり、人妻タクシードライバーが多分養つてゐる旦那は、在野の新薬研究者。予想外の設定が更に斜め上に突き抜けるラストまで、サクッと見させる。何処がどう決定的に面白い訳ではなく、生島奈香江もとりたてて美人といふといふ訳でもないものの、気だてのよさを感じさせる朗らかな雰囲気と、絶妙に熟れた肢体とが十二分に一篇を支へ得る主演女優を擁し、何となくにせよ何にせよ実に安定した裸映画。走行中の車内での本濡れ場を先行車から撮影する意欲があつた時点で、車内プレイが全て停車中である「暴行タクシー」との優劣は既に明らかであつたといへるのかも知れない。北沢幸雄的には、二年を経て後退してゐるのだから宜しくない話ではあるのだが。
 備忘録< オーラスは健太が恐らくハルクなモンスターに変貌


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