真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「OL調教 私、変態ですか」(1998『OL奴隷監禁 もらす』の2001年旧作改題版/製作・関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督:関根和美/脚本:片山圭太/撮影:小山田勝治/照明:秋山和夫/編集:《有》フィルムクラフト/助監督:片山圭太/撮影助手:新井毅/照明助手:臼井幸男/監督助手:竹洞哲也/音楽:シノゾー/効果:東京スクリーンサービス/出演:桜井倫子《新人》・浅倉麗・原田なつみ・やまきよ・岡田謙一郎・真田亮宏・杉本まこと)。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒のOP開巻に従つた。
 ハークション!商店街をポップに大きなくしやみをしながら田所岩男(杉本)がホテホテ帰宅する。夫の扱ひがぞんざいな妻・時枝(原田)に自ら夫婦生活を求めておいて、田所は情けなくも中折れ。二回戦の要求を、当然臍を曲げた時枝に突つ撥ねられたところでタイトル・イン。丸井物産営業一課、席次が判明する成員は時計回りに、十時の位置に雪子(浅倉)。十二時上座に係長の田所、以降順に武井信夫(やまきよ)・若林冴子(桜井)と続く。相変らず大きなくしやみを連発、見事な昼行灯ぶりに雪子や武井からは舐められてゐる田所に、冴子は優しくポケット・ティッシュを差し出す。そんな冴子を、豹変した田所が衆人環視の下暴力的に陵辱するのは、勿論関根和美一流の妄想オチ。武井と交際中の冴子と、武井の元カノであつた雪子が諍ふ会話を立ち聞きした田所は、帰宅途中忘れて来たことに気付いた財布を取りに戻つたオフィスでの、冴子と武井の情事を目撃する。そんなある日、更衣室や手洗ひを覗いた覗いてないで、冴子が田所に喰つてかゝる。その夜、冴子とラブホテルに入つた武井が、バットで後頭部を殴打され襲撃。冴子は野球のユニフォームにマスカラス・マスクの怪人物に、シーユーではなくソーロング閉店後のスナック「美風」に拉致監禁される。
 配役残り岡田謙一郎は、冴子失踪事件の捜査に際して乗り込んだ営業一課にて、武井と田所相手の事情聴取をブライバシー完無視でやらかす大雑把な刑事、真田亮宏はその部下。営業一課にもう二名若い男が見切れるのは片方が竹洞哲也につき、もう一人のパッと見山名和俊似が片山圭太なのか。
 関根和美1998年第四作、川井健二をもう三発残しつつも、DMMのフロンティアが消滅した今、関根和美未見―あるいは未感想―のド旧作が放り込まれるのはひとまづ何にせよ有り難い。開巻で三番手、序盤で二番手の濡れ場を順調に消化。展開上の大技込みで残り尺を主演女優に傾注する構成も磐石、であつた筈なのに。そもそも目つきが悪く、首から上も下もよくいつて十人並でしかない桜井倫子が清々しく訴求力に乏しい。加へて目元の大きく開いたマコカラス・マスクで素性をほぼ曝し、挙句に御丁寧にもユニフォームのまゝ帰宅するとあつては、監禁犯が謎ですらない以上サスペンスも機能するしない以前に成立してゐない。土台が、ミス・リードするに足る頭数さへビリングに見当たらない始末。抽斗の二段目と三段目二段構へのバッド・エンドは、手際のモタつく下手な手数ぶりが進歩の窺へぬ、もとい今も変らぬある意味安定はしてゐるけれども信頼は別にしてゐない関根和美クオリティ。兎も角もしくは兎に角、第三の野望あるいは悲願“ハンドレッド・関根和美”まであと二十有余本。デジタル・オーピーが観られる目処が未だ立たない中、正直小屋だけでそれを目指すのは絶望的な戦況であるやうに思へなくもないとはいへ、不発であれ不作であれ不毛であれ。ひとつひとつ、与へられた機会は全部観て行くのみ。何なんだその、頓珍漢に悲愴な決意は。

 桜井倫子の新人特記に関して一点、公開だけならば、「痴漢エロ恥態 電車・便所・公園」(1998/監督:勝利一・坂本太・佐々木乃武良/脚本:有馬仟世)の方が早い。桜井倫子は佐々木乃武良の第三話「公園の痴漢」に主演、勝利一と佐々木乃武良は当作で合同デビュー。


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