真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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どスケベ痴漢電車/DMM戦
あ行
/
2013年04月27日
「
どスケベ痴漢電車
」(1997/製作:植木プロダクション/提供:Xces Film/監督:植木俊幸/脚本:伊藤清美/企画・原案:中田新太郎/撮影:小西泰正/照明:渡波洋行/録音:シネ・キャビン/編集:酒井正次/助監督:堀禎一/監督助手:井戸田秀行/撮影助手:高橋秀明/照明助手:小倉正彦/スチール:平賀栄樹/ヘアメイク:大塚春江/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:宮内マリヤ・南条美樹・林田ちなみ・河合純・樹かず・佐藤一郎・田中一郎・石橋電子レンジ・出口入口・そのまま西・内藤陳毛・HIDEKAZU・林田義行・寺島京一・木澤雅博)。
フレーム内をあつちこつちの方向に走る四本の普通鉄道、劇伴起動とともに、複線の路面電車を正面から捉へたショットに走る女の荒い息遣ひと、公開題の投げやりさに反して闇雲にカッコいいフォントのタイトル・インとが被さる。懸命に走つて追ひ駆けるも電車を一本逃した、女子高生の高橋美奈(宮内)は仕方なく缶ジュースで喉を潤す。角度によつては真咲紀子に見えなくもないが鮮やかなタラコ唇の、主演女優のエクセスライクが事ここに至ると最早清々しい。美奈が乗り込んだ次の電車は、ホームからの画では空いてゐたのに、いざ乗つてみると車内は結構な混雑。瑣末なツッコミはさて措き、美奈は集団痴漢を被弾。一頻り蹂躙された後(あと)拒んだ美奈の背後では、矢張り集団から痴漢される林田ちなみが、こちらは男の手を積極的に受け容れ奔放に喘いでゐた。劇中美奈が認識する以前より、後方に林田ちなみがチョイチョイ見切れる画作りは、
前作
に於いて既に見られた手法。美奈が朝を急いでゐたのは、校内の植物に水を遣る親友の川島麻衣子(南条)を手伝ふ為。ここで、我ながら直截にもほどがあるが、綺麗に不細工とでもしかほかに言葉の見付からない、南条美樹のファースト・カットが事実上のチェック・メイト、まだ序盤なのだが。森下英子(林田)先生の現国の時間、後ろの席の麻衣子と―授業とは全く関係ない―ノートを交換する美奈は痴漢電車の一件を報告し、二人は状況を自らが望む形に支配した英子に憧れる。放課後、彼氏・和也(樹)と落ち合ふ美奈に対し、一人ホッつき歩くブス、もとい麻衣子の前に、露出魔の癖にトランクスは履いた、画竜点睛を欠きつつその点を除けば残りはポップな造形の変態(木澤)が現れる。後(のち)に麻衣子は変態男と再会、その頃美奈はといふとホテルで和也とギシアン。陽性の青春ピンクに見せて、案外残酷な映画なのかも。美奈の情報を下に、七時三十三分の電車に乗り込んだ麻衣子が電車痴漢に開眼する一方、英子には、体育教師の佐々木(河合)が煌かない低い洗練度で言ひ寄る。
その他配役は一部再結集した獄門党と、乗客及び生徒要員。獄門党残党の中で一際目立つ三島由紀夫似は、出口入口・そのまま西・内藤陳毛の重複する名義の中に含まれてゐるのか。
新東宝からエクセスに鞍替へしての、植木俊幸最終第二作。jmdbの記載を真に受けるならば、今でいふと福俵満と同じく新東宝の社員プロデューサーである―で、あつた?―筈の、中田新太郎のキャリアの最後が何故(なにゆゑ)にエクセスなのか。生臭さも漂ひかねない勘繰りは兎も角、名作痴漢電車たり得た―かも知れない―第一作に匹敵するのはタイトル・インのカッコよさくらゐで、始終は大きく二つの疑問手に足を引かれる。アクティブな痴女ぶりが少女達のリスペクトを呼ぶ、といふ展開の如何にもな底の抜け具合はジャンル映画の要請に従ひ等閑視するにしても、佐々木のやうな野暮天に撃墜される英子が明らかに機能不全。深夜の校内を舞台とした、第二戦はさういふプレイに違ひないと思ひながら見てゐたし、実際さうなるのが定石といつて差し支へないのではなからうか。加へて本筋に清々しく絡まない和也の相手に言葉は悪いが煩はされてゐる間、順調に推移する麻衣子は勿論迷走する英子と比しても、主人公であるにも関らず美奈のドラマが完全に停止してしまつてゐるのは苦しい。無理矢理にでも青春映画風に物語を痴漢電車に収束してみせた―捻じ込んだともいふ―ラストは、痴漢電車が痴漢電車であることを誠実に志向した、映画自体の中身ではなく寧ろ植木俊幸自身のエモーションに曲解気味の琴線を激弾きされる。ものの、相変らず“最も美人な三番手”街道を驀進する林田ちなみをも擁してゐながら、なほ総合的なポテンシャルは落とした三本柱が美奈のドラマの停止に劣るとも勝らず如何せん厳しい。二作限りとはいへその二本で斯くも見事に続けられては、植木俊幸には悲運のピンク監督の称号を冠するべきなのか、あるいはそんなに負け戦を戦ふのが好きなのか。
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