真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「義母浪漫 求めあふ肉愛」(2012/製作:マーメイド/監督:友松直之/脚本:百地優子/プロデューサー:佐藤昌平・久保和明/撮影・照明:田宮健彦/録音:高島良太/助監督:伊藤一平/スチール:高橋卓也/監督助手:堅田裕介/撮影助手:長谷川玲子/制作:躰中洋蔵/編集:池田勝/制作協力:レオーネ/出演:北条麻妃・磯田泰輝・なかみつせいじ)。ヘアメイクに力尽きる、己のメモが読めん。
 目出度くなく浪人一年生の伊藤ヒデキ(磯田)の父・正人(なかみつ)は、高校入試に関する保護者面談が馴れ初めで、息子の中学時代の担任・由紀子(北条)と昨年再婚―前妻とは十年前に死別―した。そんな腫物な時期にそんな刺激的なことを仕出かされては、ヒデキが落ちるのも幾分かは無理からぬ気がする。ある日、ヒデキは洗濯物を取り込んだ由紀子が落として行つた赤のパンティを手に入れ、美しい義理の母親に対し明確に点火される。由紀子は結婚後も教職を続け、日中ヒデキ一人きりの伊藤家。新たな収穫を求め、由紀子のクローゼットに手を出し宝の山ぶりに驚喜したヒデキは、独身時代から使ひ込んだ愛用の品と思しき、ポーチに入れられたバイブを発見する。
 リリース時元々のタイトルは「淫義母 もうガマンできない…」である筈なのだが、TMCのMIDNIGHTレーベルの手にかゝると「義母浪漫 求めあふ肉愛」なる公開題に。正直よく判らない領域ではあるし、納品すると手を離れてしまふ友松直之御当人も把握されてゐないらしい。それともう一つ、これは最早珍しくはない現況として、今作は僅か一日で撮影してゐるとのこと。外堀は兎も角、映画もといVシネ本体に話を絞ると、宅浪生なのかそんなに居心地がいいのか、劇中ヒデキが半歩たりとて自宅から微動だにしない中、大雑把に纏めると男も女も牡と牝の本義に立ち帰つて生殖しろ。甲斐性になんぞ拘らなくとも転がしておけば子供は勝手に育つとする、友松直之定番のエミール流の少子化対策論―あちこち大雑把過ぎる―が、妙に饒舌なヒデキの口を借りミニマムな展開を濃縮するかのやうに埋め尽くす。確かにそれは十八番の情報戦とはいへ、オムニバス作の一篇程度の物語が、大きく残した余白を友松直之一流のアジテーションで塗り潰すだけのことであるならば、北条麻妃の裸をさて措くとツイッターをフォローしておけば事足りるとも片付けられよう。タイム・アタックにも似た、寧ろそのものでしかない現場の修羅場を鑑みると仕方もあるまい―無論、そのやうなバック・ステージは最終消費者の知つたことではない―としても、どうもパンがぎこちない箇所や絡みに際しては殊更に寄り気味も通り越し殆ど寄り放しである等、画的な見所も節穴には感じられなかつた。ポップに長けた、北条麻妃の表情の作り方以外には。但し、そのまま義母と義息が何だかんだで一線を跨いで終り。そんな平板な負け戦を、トンパチなパブリック・イメージの陰に、本来技術職たるべき職業娯楽作家にとつて最も肝要とされる二つの要素・論理と技術とを、一言でいふと腕を隠した友松直之がおとなしく戦ふ訳がない。但し但し、意表といふよりは、寧ろ高を括つた油断を突かれた鮮烈な落とし処には完敗を認め、かけはしたものの。この手の戦略を採用する以上幕引き際の手品師・深町章―開巻の韋駄天が新田栄―の如く、観客をハッとさせたところで四の五の反芻する暇を与へずチャッチャと畳んでみせる―振り逃げるともいふ―のがより得策ではなかつたらうか。因みに、その為には当然クレジットもオープニングで処理する。さうすると案外、小生のやうなチョロい間抜けは終始ダレ気味の始終のことなどケロッと忘れ、見事に騙された満足感だけを残してみたりもするものである。更なる濡れ場込みともいへ以降は些かならず冗長であることに加へ、二つ目のオチは序盤に蒔いた種のことを忘れた訳ではない上で、矢張り蛇足に思へた次第。

 ひとつ瑣末をツッコんでおくと、近隣で頻発する下着ドロに注意を促す回覧板が、食卓の話題に上る件。正人が長風呂に入る間に由紀子がヒデキから尺八を吹かされる、中盤見せ場の攻防戦。ここでベランダに出るには通過しなくてはならないヒデキの部屋が、二階にあることが判る。即ち、お宅らには概ね関係ない話なのではといふ以前に、そもそも要は干す前後を問はず、由紀子の下着が紛失した場合内部犯が強く推定される格好となる。


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