真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「隣の奥さん バイブでトロトロ」(1996/製作:関根プロダクション?/配給:大蔵映画/監督:関根和美/脚本:関根和美・加藤義一・小松公典/撮影:三原好男/照明:秋山和夫/編集:《有》フィルム・クラフト/助監督:加藤義一/監督助手:小松公典/撮影助手:伊藤伸久/照明助手:草篤/スチール:津田一郎/音楽:リハビリテーションズ/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学《株》/出演:沢口レナ・青井みずき・扇まや・樹かず・下川おさむ・薄葉正・近藤力・藤繁琢也・山口寛人・牧村耕次)。
 朝の大和田家、先に起きた徹(樹)は、眠る元同僚で新婚二ヶ月の栞(沢口)に手を出し昨日の続きの朝から夫婦生活。ここで驚くといふのもおかしな話で、顔が長いといふ声も聞こえて来るのかも知れないが、沢口レナの時代を越え得る綺麗な大美人ぶりに琴線を鷲掴みにされる。徹は尺八を要求するも、未だ抵抗感の拭へない栞に拒否された為、仕方なく挿入。何だかんだで微妙な空気も漂はせつつ、往来でチューするお熱い様子で栞に送り出され、遠ざかる徹の背中に乗せてタイトル・イン。“トロトロ”の字がおどろおどろしく、別の表現でいふとお化け屋敷のテイストで溶けてゐるのが微笑ましい。自己嫌悪に苛まされる栞が、台所の茄子で口唇性交の練習を試みて断念したところに、親友で元同僚の榊美穂(青井)から電話がかゝつて来る。そんなこんなで栞が美穂に呼び出された、物件的には仮称摩天楼な馴染みの店「トラップ」。美穂は青井みずき(a.k.a.相沢知美)一流の呑気さで、女子社員憧れの的である徹を射止め寿退社した幸せ者をやつかむものの、早くも主婦の日常に厭いた栞としては、それほど単純な話ではなかつた。おまけに男を取つ換へ引つ換へする美穂が、暫定今カレ・公一(下川)とのセックス自慢を憚りなく仕出かすに至つては気分を害し、栞は自分の飲み代も置かずに帰つて来てしまふ。帰宅した栞が美穂に押しつけられたプレゼントとやらを開けてみると、挙句に中から出て来たのはピンクローター。ブチ切れた栞の抗議電話は未だ帰らぬ美穂には通じず、一方徹からは帰りが遅くなる旨の電話が入り、憤懣やるかたない一人の夜。リストラされ目下無職の夫・雄一(牧村)に逆さに拘束された隣の奥さん・文枝(扇)が、股間に突つ込まれたバイブでトロトロになる嬌声が、何故か細部に至るまで鮮明に洩れ聞こえて来る。
 関根和美1996年最終作、ピンク限定だと第六作で薔薇族含むと第七作。因みに、jmdbによるとピンク出演は残念ながら僅か全四作の沢口レナ第二作―デビュー作は北沢幸雄―に当たり、関根和美は今作から三本沢口レナ出演作を続けてゐる。オクテの若奥様が、何だかんだで美しくそしていやらしく開花するコメディ基調のエロ映画。を予想あるいは期待したのはトロけたタイトルと樹かずの爽やかな笑顔とに騙された、といふよりは寧ろ、正直に告白すれば沢口レナに心を移したが故の惰弱な早とちり。昼間自由に動けるサディストが悪鬼の如く飛び込んで来るや、あれよあれよと思ひのほかダークな新妻調教譚にフルモデルチェンジ、大雑把な衝撃の真相だとかにまで一直線。但しさうなると、関根和美的なキレのなさが、エクストリーム系のエロ映画としては幾分以上に不足も残す。あれよあれよといふよりはあれまあれまといふ内に辿り着く徒なバッド・エンドよりは、ここは素直に沢口レナの明るい笑顔で畳まれる映画を観たかつた。無茶苦茶無防備なことをいふが沢口レナ扮するヒロインの幸福を望んだ、へべれけな希望はどうしても捨て難い、俺は一体何をいつてゐるのだ。
 話を戻して、男優部絡み要員に止(とど)まるにせよ、久し振りに見た下川おさむは矢張り実に男前。今でいへば三上博史と市川海老蔵を足して二で割ると下川オサムになるのではといふのは、それは些か買被りに過ぎると御理解頂けないであらうか。

 配役残り薄葉正から山口寛人までは、バーテン一人とカウンター背後のテーブル席に客が二人のトラップ要員に、劇中二日目の朝、栞宛に差出人不明の荷物を届ける宅配便の配達員か。薄葉正・藤繁琢也・山口寛人のどの名義なのかは特定不能だが、テーブル席に見切れる加藤義一は今際もといラスト間際に確認出来た。近藤力は、小松公典と見てまづ間違ひあるまい。となるとビリング的に、薄葉正が加藤義一?

 付記< 加藤義一は藤繁琢也だな


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