真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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SEXカウンセラー 変態ゑぐり療法
か行
/
2013年04月20日
「
SEXカウンセラー 変態ゑぐり療法
」(2012/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢☆実/脚本:内藤忠司/撮影:佐久間栄一/編集:有馬潜/音楽:與語一平/助監督:江尻大/監督助手:菊嶌稔章/撮影助手:下垣外純・佐藤光/監督助手:菊島稔章/録音シネキャビン/スチール:本田あきら/効果:梅沢身知子/現像:東映ラボ・テック/協力:佐々木麻由子・小鷹裕/出演:杉山えりな・伊沢涼子・水井真希・岡田智宏・八納隆弘・村田頼俊・夏山あつし)。
街を見下ろす女医の背中と、然程どころでもなく鋭さも煌きも感じさせない目元を抜いてタイトル・イン。推定専業主婦の田川香織(伊沢)が胡瓜を千切りする手を止め、SEX専門のカウンセラー・秋津凌(杉山)が村田頼俊アナウンサーのインタビューを受けるテレビ番組に目を留める。しばしばミイラ取りがミイラになりかねない、カウンセラーのためのカウンセラーの存在に関して凌は一般論的には認めながら、自身の問題としては大学時代の恩師・藤原俊之の名前を挙げかけて言ひ淀む。夫婦生活の御無沙汰の相談に訪れた香織に、凌が与へたアドバイスはセクシー衣装による刺激。大概適当だなオイといふ疑問は、話が先に進まないゆゑ一旦呑み込む。最終的には、呑む呑まぬに関らず、何れにせよ満足に進みはしなかつたのだが。閑話休題、とはいへ、「三丁目の夕日」に於ける吉岡秀隆みたいなビジュアルが面白い、家に仕事を持ち帰る建築会社現場主任の夫・耕平(岡田)は、扇情的かつポップに迫る香織を気味悪がりこそすれ凡そ満足に取り合はない。再びそのことを面白可笑しく訴へる―悩みを抱へてゐるやうには全く見えない―香織二回目のカウンセリングを終へ、アテられたのか催した凌は、常連らしき出張ホスト店からヒロキ(八納)を呼ぶ。八納隆弘は八納隆弘で、まづ目元から抜くファースト・カットに、だから一体何の意味があるのだ。階段踊り場での二人の情事は、カメラに捉へられてゐた。ことを、仕掛けられたカメラを押さへる前に、キネコによる事後ショットで悟らせる手法は、ビデオ撮影の場合であつてもエフェクトのかけ具合によつては果たして可能なのか、Vシネは専門外につき知らん。カウンセリングの合間合間に、凌は藤原(夏山)の下を訪ねる。ここで水井真希は、心理学を志望する女子高生でPCが苦手な藤原を手助けする文字通りの助手・沖本亜美。凌は恩師宅を辞退する際に、USBメモリーを置いて行く。大学時代、凌は藤原と不倫関係に陥り、その結果藤原の妻が自殺する。以来、凌は人を愛することを捨て、藤原は男性機能を失つた。
国沢実の2012年第二作は、
変則ロードムービーの前作
で久方振りに持ち直したのも儚い束の間、多分にネガティブな問題作。序盤から順調に、これは演者ではなく演出家の問題かとも思はれる―寧ろ伊沢涼子には何の罪もない―が、扇子一本でで巧みに蕎麦を喰ふ、噺家の仕種の如き至芸を披露しコメディエンヌとして軽やかに羽ばたく伊沢涼子と、徒に思はせぶりな―だけの―主演女優とが清々しく噛み合はない。トーンの安定しない一作は、ほぼ厳密な三幕芝居。適宜田川家の模様を差し挿みつつ、雑居ビル三階の「アキツ・カウンセリングルーム」と藤原邸とを行つたり来たり。行つたり来たりを繰り返すばかりで特にも何も物語らしい物語が進行しないまゝ、凌は田川夫妻相手に巴戦に突入し、男としては役に立たない以上、女として亜美から責められる藤原が黒い涙を流して終り。終りといふか、終つたのか始まつてもゐないのかは兎も角、兎にも角にもデフォルトの六十分は満了する、否してしまつた。相も変らずの節穴を臆面もなくひけらかしてのけるが、正直にいふと今回国沢実が何をしたかつたのかサッパリ判らなかつた。凌が人を愛することを捨てただのと言ひ出した際には肝を冷やしたものの、幸にも国沢実特異もといお得意の、映画が暗黒面に堕ちることは最低限回避する。但しそれはあくまで、ゼロからマイナスにはならなかつたといふ幸は幸でも、不幸中の幸に過ぎない。
近作池島組では危惧させた
オーバー・ウェイトを絶妙に適正な領域に絞り込んで来た、伊沢涼子が先頭に立ち牽引する濡れ場は質・量とも概ね申し分ない反面、裸映画と割り切るには、ラックか物の弾みで時に渡邊元嗣をも凌駕せん勢ひのアイドル映画に滑り込まない場合、要は基本的に国沢実の映画は抜けが悪い。かてて加へてまるで進まないお話の中身がてんで見えて来ないとあつては、正しく万事休す。理解出来ない以上、是も非もあつたものではない、おとなしく匙を投げる。
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