ショセ


D850 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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chausser(ショセ)のクラシック・ライン C-7930。
アッパーは日本製コードバンのバーガンディ。
サイズは25-1/2。



ユーザー側から見ると、ショセは靴業界の中で特殊なポジションにあるように見える。
トゥ部分を大きく盛り上がらせ、先端部は少し上を向かせた独特の形状。
日本製ならではの繊細な作りと、アクの強いオリジナリティのあるデザインの両立。
あえて製品情報を少なくした雰囲気重視のウェブサイト。
百貨店などでは見ることが出来ず、実物を試着するには恵比寿の直営店に行くしかない。

サイトのふんわりとした雰囲気は、恐らく今の30代、40代の人たちのセンスで、僕の世代のものではない。
何となく近寄りがたいが(笑)、好きになったらもうこれだけ・・というコアなファンがいそうである。
何かとコピー品の多いこの業界で、他とまったく違うというのは貴重なことである。

実は数年前に購入しようと思い、一度お店に出かけたことがある。
しかし当時はあの独特のデザインに気後れしてしまい、結局購入には至らなかった。
ずっと気にはなっていて、時折ウエブサイトも見ていたのだが、何しろ製品の情報があまり載っていない。
むしろ同社製品を扱うショップのサイトの方が詳しく書かれている。

今回たまたま雑誌で写真を見かけて、やはりひとつ欲しいと思い、久々に恵比寿のお店に出かけてみた。
しかしお店の在庫にも限りがあり、必ずしも欲しいモデルの欲しいサイズが手に入るという訳ではない。
売切れてしまえばそれまでで、次回出来上がるのは数ヶ月先になる。
製品によっては、もう出来ませんというものもある。
大量生産ではなく、いいものを少数コツコツと作っていくという方針なのだ。



最初は上級ラインのサブライム・バイ・ショセというシリーズの製品を買おうと思っていた。
イタリア製のカーフやホーウィン社製のコードバンをアッパーに使ったダブルソールのシリーズである。
しかし何足か試着させて貰ったら、ひとつ下のクラシック・ラインのラストが驚くほどしっくりきたため、急遽こちらに変更することにした。
革はステアを使ったものもあったが、国産コードバンのモデルは、恐らくもう原皮が入手できないという話だったので、今回は貴重なコードバンの方を選んだ。

ラストの形状が本当に特殊で、ご覧の通り幅が狭めで細長い。
踵をしっかりと掴み、そこから土踏まずにかけてはギュッと絞り込んだように固定される。
指先は左右は押さえられるが、上側の空間は広大なので開放感がある。
アーチの突き上げ感こそ少ないが、どこかモディファイドラストに共通したものを感じさせる。

他のモデルも試したが、このシリーズのラストが飛びぬけて僕の足に合っていた。
足全体を強く掴まれるような感触なのに、不快感や違和感は伴わないという、あまり経験したことのない履き心地であった。
しかも柔らかいフレキシブルソールを採用しており、軽くて曲りやすいであろうことを考えると、このブランドのよさがより濃厚に味わえるのではないかと思った。
まずはこのモデルを買うべきだ・・とすぐに決まった。

写真で見るとかなりトゥが膨らんで見えるが、実物はそこまで極端には見えない。
ちょっと個性的な形のプレーントゥ・・という感じだ。
横方向からだと先端部の反り上がった部分が強調されて見えるようだ。

捨て寸は確かに大きめで、指の先に数センチの隙間が出来る。
使い始めると、その手前のヴァンプ部分に盛大に曲げ皺が入る。
ショセでは数年履き込んだ後のフォルムを意識してデザインしているという話を読んだ。
皴の入り方など計算した上での形なのだろう。



国産コードバンに関しては、よく米国ホーウィン社のものと比較される。
国産はきれいで整っているのが特長で、その端正なところが好きだという人もいる。
それに比べるとホーウィン社製はムラ感があり荒々しいイメージである。
まあアメリカ靴好きの僕などは、正直言うとホーウィン製コードバンの方が好みである。

ホーウィンのコードバンはオイルがたっぷり入っており、使い始めは国産のものより柔らかいようだが、国産コードバンも使っている内に柔らかさが出てくるという。
手で触れた感触ではホーウィン製の方が厚みを感じさせる。
雨に弱く曲ったところが白くなるのはどちらも同じである。
この赤みの強いバーガンディは、サフィールのクレム1925のエルメスレッドの色が近いと思う。

足に吸い付くような履き味で、踵から土踏まずにかけては遊びがなく、かといって靴擦れも発生しなかった。
先端部に十分な空間があるためか、窮屈さはなく意外なほど快適である。
硬質な感触であるが、シングルソールならではのしなやかさがあり、ヴァンプ部分が抵抗なくスッと曲がってくれる。

デザインもさることながら、履き心地もかなり個性的である。
歩いていて靴との一体感を味わうことが出来る。
相当気に入ってしまい、購入以来出番も多い。

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