尖った靴


D850 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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ある調査を読んだら、女性の一番嫌いなものとして、男性の「尖った靴」があげられていた。
試しに検索してみると、出るわ出るわ、尖った靴に対する批判の山。
激しい嫌悪感を持ち、見るのさえ嫌だという意見まである。

それにしても、あれほど嫌われるものを、なぜ男性は履くのだろう。
そもそもファッションっていうのは、異性の目を一番意識するものではないのか?
しかも最近は、どうもビジネスマンの間でこの尖った靴が流行っているように見える。
以前より目にする機会が増えているのだ。

先日も友人との飲み会に出かけた時、駅で数人の若いビジネスマンの集団とすれ違ったが、全員が見事に揃って尖った靴を履いていた。
中でとりわけ尖った長いの(捨て寸が10センチ以上ありそうだった)を履いた30代の男性が、どうもリーダー格のようで、大きな声で話しながら颯爽と歩いてる。
足を出すたびに靴の尖った先端部が前に飛び出す。
それを見て、うわ・・と引いてしまった。

ところがその飲み会の帰りに、夜遅いというのにまた別のそういう一団とすれ違った。
尖った靴のビジネスマンたちがゾロゾロと歩いてくる。
またか・・と思ったが、見たくもないのに、目はどうしてもその異様な足元にいってしまう。
階段を上る時に前の段に刺さらないだろうか・・・満員電車でギューギューと踏まれないだろうか・・・などと余計な心配をしてしまうほどの尖り具合である。

ここまで皆が履いていると、尖った方が「普通」なのかと思えてきた。
しかもあの表情を見ると、尖った靴こそ最高なのだと完全に信じ込んでいる。
先の丸まった靴のことは、恐らくあんなカッコ悪いもの・・と思っているのだろう。
仮に僕が、そんなに靴が尖っていると変ですよと指摘しても、端から理解などしてくれそうにない雰囲気である。
酔っていたこともあるが、それを見て少し気分が悪くなってしまった。

イタリア製の靴には尖り気味のデザインのものが多いし、一部高級靴店でもそういうブランドの靴を扱っているのは確かだ。
しかしそれが似合う人は、少々ケバい格好を意識して着こなすことの出来る人か、あるいは生まれつきそういうキャラクターの人だと思う。
靴の安売りストアで売っている典型的なデザインであることも、尖った靴に対する嫌悪の気持ちを増加させる要因になっている。
実際彼らが履いているのは、ほとんどがそういうお店で買った靴であろう。

複数のお店のオーナーから、あの尖ったのだけは勘弁して欲しい・・という本音を聞いたことがある。
またお店に来るベテランのお客さんと話しても、あんなものと忌み嫌っている人が多い。
靴の専門家たちも嫌がっているのだ。
靴好きの上司から、その尖った靴は滑稽だと指摘されて、初めて紳士靴の世界の常識を知り、目が覚めたという人の話も聞いたことがある。

とはいえ男性のビジネスマンには、彼らだけの世界が存在している。
その中で優位に立つためには、靴の尖り具合が大切なのかもしれない。
恐らく尖った靴は、自分の仕事の能力の高さを象徴するものなのだろう。
多くの女性と、男性の少なくとも僕を含む数人からは、非常に嫌われているのは確かなのだが、彼らにはそれより重要な何かがあるのだろう。
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