色変え


D800E + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

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先日紹介したマロン・アンティークのバートンだが、早速履いて外出してみたが、どうも考えていたのと違う結果になった。
鮮やかなブラウンがいいな・・と思って選んだが、その色が浮いてしまって、どうにも違和感がある。
靴だけが切り離されたように目立ってしまうのだ。

表面の質感も、どこかベタッとしていて立体感が無い。
真新しくて傷ひとつ無いこともあり、ペンキで塗ったような、単調な色になってしまっている。
トリッカーズは新品状態が一番カッコ悪いというが、まさにその通りで、ほどほどにシワや傷がつかないと、服装にうまく溶け込んでくれないようだ。

自分でも足元を見て「ちょっとなあ・・」と感じていたが、僕の足元を見た母親なども、無言ながらそういう表情をしている。
ただでさえカントリー調のボテッとしたデザインで、強い存在感を放つ靴である。
多くの人の目が、最初にそこに惹き付けられる。
磨き上げて光らせてあるから、それが余計に目立ってしまい、まるで新品のランドセルを背負った一年生のようである。

家に帰って、どうしたものかと考えたが、少し思い切った処置に踏み切ることにした。
靴の色を変えてしまおう・・と決意したのだ。
もう少し暗いブラウンにして、服装に溶け込むようにしたい。

思い切って、表面の革の色より濃い色のクリームを塗ってみた。
マロン・アンティークのブラウンよりかなり暗い、マホガニーのクリームを選び、靴の表面に塗り込んでみる。
クリームを塗っても、革がすぐにその色に染まってしまうわけではない。
布でよく擦り込むと、表面の色に僅かに変化があるのがわかる。

しばらく放置して、きれいな布で磨いて表面に残ったクリームを除去してみると、ちょっとだけ変わったかな・・という程度、色が濃くなっている。
数値にすると3%くらいだろうか。
彩度を抑えるのは難しいが、暗くなっただけで大分落ち着いた色になった。

そこで今度は、ダークブラウンのクリームを塗ってみた。
また少し変化したが、先ほどのマホガニーほどではなかった。
これはなかなか面白い。
ベースになる革の色とクリームの色との組合せで、様々な色が作り出せる。

いろいろなクリームを塗っているうちに、最後は黒いクリームまで使うようになった。
真っ黒なクリームを塗って、少しおいて布でふき取る。
しかし革が一気に黒くなってしまうわけではなく、全体が少しくすんで濃い色になる程度である。

段々と分かってきたのは、クリームの種類によって染まる度合いが異なるということだ。
何種類かのクリームを使ってみたが、中には予想以上に色が変わってしまい、慌てたものもあった。
また、表面に作られた薄い皮膜によって色が変化し、クリーナーでふき取ると、元に戻ってしまうこともあった。

こういった作業を10回程度繰り返したところ、なかなかいい色になってきた。
もともとが、飾りの穴の多いウイングチップである。
その穴に濃い色のクリームが入り込み、革の重なった部分の段差にも拭き切れなかったクリームが残る為、全体に立体感が出てきた。
プラモデルの「汚し」のテクニックに近い(笑)

本当なら長い年月使い続けることで、年季の入った靴を作り上げていくべきなのだろう。
しかしこの年齢だと、そんな面倒な事をする気にはなれないし、時間的な余裕も無い。
強制的に色を変えてしまうことで、まだ一回しか履いた事の無い靴に、強引に貫禄を与えた(笑)

その状態のバートンを履いて、街に出てみた。
早速母親にも見せて、感想を聞いてみた。
さすがに新品の靴に黒いクリームを塗ってしまった話には驚いていたが、その結果には興味津々のようだった。
この前と違ってジーンズに良く合っていると、感心して見ていた。


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