酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

人が壊れる時~紳助、そして

2004-11-10 14:33:19 | 戯れ言

  俺ぐらいの齢になると、いかに賽の河原に着地するかが主たるテーマになる。死を射程に入れて生きていかないと、日々の充実はない。

 中高年はこうあるべしという生き方を挙げるなら、「醸す」「枯れる」「流れる」……。でも、現実は「惑う」「諦める」「媚びる」「閉じる」ってとこに落ち着いてしまう。中には壊れる者もいる。最近でいうと田代まさしやショーケン、そして、誰よりマスコミを騒がせているのが紳助だ。

 漫才時代、あるいは主演作「ガキ帝国」での悪たれぶりこそ、紳助の地に近いと思う。あの頃は感情の起伏が激しく、他人の風下に立つまいという気迫に満ちていた。当時は想像も出来なかったが、今やさんまよりレギュラー番組が多い。時間を掛けて好感キャラに変身したのだ。時には我慢し、おもねってきたに違いないが、自分を偽っていると軋みが生じて崩れてしまう。今回の事件の背景はその辺りかなと勝手に推察している。

 我が身に翻ると、寛容がウリだった俺はここ2年、「キレ」を繰り返してきた。その都度、反省はするが、スパッと刀で斬られ、血が噴き出たような快感も残っているから、かなり重症だ。「なぜ?」と胸に手を当て、ようやく答えに行き着く。「自分を偽る」耐用年度が、とっくに期限を越えていたのである。

 長く会社にいると、心にもない言辞を吐く立場になる。「まじめに」「協調的に」「頻繁に連絡、報告を」なんて自ら信じていない価値を、しかも一段高い場所から説くことは、精神衛生上よろしくない。理由は他にもあるが、会社を辞めることにした。

 「さあ、本格的に壊れるか」と独りごちする。今の俺は芸なし、資格なし、妻なし、金なし、死にたくもなし。職なしが近々加わるから平成の六無斉である。壊すものがないなら、腐るだけかもしれぬ。斃れて蝿に食われるのもよしと強がってみる。
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ピート、ごめん

2004-11-08 12:40:29 | 音楽
 今年最大の悔いは、フーを見なかったことだ。「ロックオデッセイ」のブッキングにその名があったが、迷った揚げ句、やめにした。ジョンまで召された今、見る価値なしと判断したからだ。

 予想に反し、今夏のベストアクトにフーを挙げる声が強い。「フジ」や「サマソニ」の現役バリバリを差し置いてである。ロックはスポーツに似て、スピードと切れが生命線だ。かつて最強のライブバンドであったにせよ、生き残ったピートは59歳、ロジャーは60歳。マスターズリーグの選手なのだ。江夏がダイエー打線を完封出来る? 田淵が松坂からホームランを打てる? 絶対にありえない。

 怖いもの見たさで土曜夜、スカパーで「ロックオデッセイ」拡大版を録画し、フーだけ見た。
 
 ピートはアコギしか弾けない時期があったが、難聴は治ったみたいだ。グラストンベリーではオアシスの一員だったザックがドラムを叩いている。ノエルはピートの弟分だから、繋がりもあるのだろう。ちなみにザックはあのリンゴの優秀な息子である。暑そうだ。ジイちゃん、バテちまうぞ。おおっ、ピートがラストでギターをぶっ壊し、ロジャーと肩を組んでる。あの場にいたら、泣いたかもしれない。

 フーの映像は海賊版を含め結構見てるから、最高というわけにはいかぬ。でも、若者たちがタルんでたら、押し出されての一等賞ってこともなくはないというのが感想だ。

 ここ数年、フーがお茶の間に流れる機会は増えていた。「CSI」シリーズのテーマは「フー・アー・ユー」だし、ヤンキースタジアムでは試合前、「無法の世界」で観客を盛り上げる。NYは民主党並みにフー支持が高い街ってこともあるけれど。来日に合わせ再発盤、DVDが続けて発売されたが、タワーレコードやHMVじゃ軒並みベストテンの上位にランクされていた。ようやく認知されたようで、長年のファンにすれば嬉しい限りである。

 ここで、トリビアのロック版。「ツェッペリンには今は亡きキースとジョンが加わるはずだった」……。真実である。

 ジミー・ペイジはスーパーグループ結成のため、キースとジョンを誘った。フーは当時、メンバーの喧嘩が絶えず、崩壊間近と噂されていたからだ。「レッド・ツェッペリン」の名付け親がジョンってことも、あまり知られていない。セッションが進み、さあ金の話というところで二人は翻意し、フーに戻った。ペイジは怒りを秘め「第2期」ツェッペリンを誕生させる。ハンサムなボーカル、堅実なベーシスト、狂気を秘めたドラマー……。フーのキャラをそのまま被せ、フーを上回る商業的成功を収めたのだから、ペイジは留飲を下げたに違いない。
 
 ところが10年後、ツェッペリンは「産業ロックのゴミ」とパンク世代からけなされる羽目になる。一方のフーが「ゴッドファーザー・オブ・パンク」と敬意をもって遇されたのと好対照だった。
 
 猛暑の日本で、還暦のロジャーがマイクを振り回して「マイ・ジェネレーション」を歌う。還暦間近のピートは“Don‛t cry, Don‛t raise your eye, It‛s onry teenage wasteland”と叫ぶ。元祖パンクの面目躍如といえるだろう。

 それにしても、teenage wasteland……、何て痛い言葉なんだ。「ババ・オライリー」を初めて聴いて三十余年、俺はいまだに「10代の荒野」から抜け出せないでいるのだから。
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是枝裕和~柔らかなナイフ

2004-11-06 15:43:52 | 映画、ドラマ
 若い頃は名画座に入り浸り、腹を空かせた熊みたいに映画を貪っていたものだ。オールナイトを見て文芸坐から吐き出され、夜と朝が混濁する池袋の雑踏に佇むと、人生の淵に触れたような気がした。研ぎ澄まされた感覚も、ひと眠りすりゃ煙のように消えていたけれど。

 あの数年間、俺の体内で醸成されたものは現実逃避の妄想癖、過剰なロマンチシズムやニヒリズムといった、世間と折り合うには屁の役にも立たぬ類のツールだった。社会に組み込まれると、映画館から遠ざかった。レンタル店の会員でさえなく、衛星放送やスカパーで録画した映画を、少し間を置いて見るというパターンゆえ、タイムラグが生じるのは当然である。

 今じゃ映画ファンとはとてもいえない俺にとって、今年最大の「発見」は是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」(98年)と「ディタンス」(01年)だった。あとの2作は見ていないが、これほどの映像作家がこの国に存在することに気付かなかった不明を恥じたい。

 「ワンダフルライフ」は死後の世界を描くメルヘンだ。夢の中で夢を見るような浮遊感は宮沢賢治の世界に似ている。生きる意味を優しくかつ鋭く問いかける、柔らかなナイフのような作品だ。

 「ディスタンス」では、カルト教団による犯罪の加害者家族が、一年に一度集う日が描かれている。恋人、夫婦、家族であっても、互いへのディスタンス=距離をつかめず絆が壊れていく。心の闇と迷路、葛藤を描きながら、再生への希望を感じさせてくれる。是枝監督の映像は繊細で光の使い方が巧みだが、ラストはタルコフスキーを彷彿とさせるほど謎めいて美しい。

 今日の午前中、フジ739で是枝監督のドキュメンタリー3作を放送していた。社会を底から見る視点、歴史認識も実に確かだ。かつて大島渚監督が剛速球にくるめて客席に投げ込んできた問題意識を、是枝監督は水彩画のようにスクリーンに染み込ませている。

 俳優たちも自然体だ。ドキュメンタリーを通し、普通の人々が真情を吐露する場面に繰り返し接してきた監督の意図なのだろう。過剰な表現を抑え、演技を超越した演技が映像に溶け込んでいる。

 「人生で最も心に残る思い出は何ですか」と「ワンダフルライフ」の中で問いかけてきた。

 息絶える時、自分はどのページを指すのか考えてみる。年齢からすりゃ遡るべきか。でも、今より先のページに「思い出」が載っているような気がするのは、俺の業が深く、煩悩が強いせいなのだろう。

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憎悪に満ちた神

2004-11-04 14:14:05 | 社会、政治
 大統領選は得票数から見れば、キリスト教保守派に支えられたブッシュの圧勝だった。カトリック右派、福音派などさまざまな宗派があるらしいが、2000万人以上がブッシュに投票したという。企業と見紛う教会もある。数千台規模の駐車場、2万人を収容する礼拝堂、アスレチッククラブなど数々の設備を有し、集うのは裕福そうな白人の家族ばかりだ。

 保守派の説教者はまずイラク戦争の正当性を主張する。さらに、ユダヤ教はキリスト教の兄であり、イスラエルとの友好が第一と説く。結構な話ではあるが宗教学上、ユダヤ教―キリスト教―イスラム教は3兄弟である。兄を敬うなら、弟、即ちイスラム教徒とも仲良くするのが筋である。教会というより、資本主義、保守主義、ご都合主義の集合体に見えるのは俺だけだろうか。

 かつてカシアス・クレイは、「俺の手が異教徒の血に染まることを、神は望んでいない」と話し、徴兵を拒否してムハマド・アリと改名した。憎悪と対立を煽る保守派教会とアリは対極に位置しているが、いずれが良心的で神の意思に忠実か、俺のような罪深い不信心者でもわかる。

 などとアメリカの悪口を書いていたら、田臥が試合に出てきた。大声援で迎えられ、デビュー戦で十分な活躍を見せてくれた。アメリカは不思議な国だ。ファナチックな排外主義と寛容さが同居している。

 アメリカ人にとっても、アメリカとは謎めいた宇宙なのだろうと思う。 
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堀江氏にMVPを

2004-11-02 19:36:49 | スポーツ
 予想通り、ライブドアは負けた。どこか釈然としない。堀江氏が信長なら、三木谷氏は秀吉と光秀の中間って感じがする。家康が誰なのかは、まだわからないが……。
 
 近鉄買収に手を挙げた時、堀江氏はドン・キホーテだった。人々の目には、風車を敵と勘違いして突撃した本家さながら、滑稽なロマンチストと映っていた。しかし、氏がかざした槍は見事に空気を裂き、大きな風穴を開けたのである。

 世論は渡辺―堤―宮内の3オーナーを悪の枢軸と位置づけ、最後まで選手会を支持した。旗色悪しと見て1000万読者を抱える読売が1リーグ制を諦め、2リーグ制は維持された。「野球を我等に」という意識が全国で覚醒し、地域密着型の球団を立ち上げる動きが広がっている。流れを導いた堀江氏こそ、球界のMVPにふさわしい。

 歴史を紐解いても、先駆者が金貨を握るケースは稀である。龍馬や松陰の屍の上に明治維新は成立し、ゲバラ死してカストロのキューバが残った。だが、堀江氏は若い。球界に拘泥する必要はないが、その発想と行動力をIT業界以外でも発揮してもらいたいと思う。

 アダルトサイトの件で堀江氏を攻撃した読売サイドこそ笑止千万だ。俺は十代の頃、熱烈な巨人ファンで、通学電車の中、報知を読むのが楽しみだった。当時は50円ほどだったと思うが、駅売りだからエッチ面はあったし、目を通さぬわけにはいかなかった。「青少年に悪影響を与えるコンテンツ」に「簡単にアクセスできる」ことが悪いと責める前に、読売は自らの数十年分の非を認めるべきだった。

 ちなみに、悪影響が実際あるのか、わが身で検証してみると……。

 俺は会社で「女はサル」など暴言風の真実を説き、下着をチラつかせる女子社員にイエローカードを出す大和撫子愛好家である。誤解されて「セクハラ」の汚名を着せられたりもするが、これが思春期に報知のエッチ面を読み過ぎたことによる弊害だとしたら、悪影響はあるといえるだろう。

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雑食獣から見たアメリカ

2004-11-01 07:00:34 | 社会、政治
アメリカ大統領選挙の投票日が迫ってきた。勝つのはどちらか一方だから、競馬よりたやすい賭けだろうが……。

 殆どの日本人がそうであるように、俺は文化的雑食獣だ。その習性はミーハーかつ深みがない。目の前に美味そうなものがあればガブリと食いつく。胃がもたれて吐き出すと、ラベルや包装紙に“made in America”と書いてある。俺はそのたび、アメリカにヤラれちまってることを実感するわけだ。

 人生で最も感銘を受けた小説はマッカラーズの「心は孤独な狩人」で、映画も50年代のハリウッド作品から「ドニー・ダーコ」のような新世紀のインディーズまで追いかけている。ライブで最も衝撃を受けたバンドは、フジロック97でのレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンだ。すべてアメリカ製である。
 などと書くと、嫌みなスノッブ野郎と誤解する向きもあろうが、さにあらず。繰り返しになるが雑食獣に深みはない。俺が至福を覚えるのは、まさに平均的なアメリカ人同様、NFLを見ながらマックをコークで流し込む瞬間なのだから。

 雑食獣の更なる欠点は優柔不断さだが、アメリカ中西部から南部にかけ、迷いが一切ない肉食獣が繁殖している。洗脳とも思える手法で、共和党と結びついたキリスト教原理主義者が急増し、ブッシュ再選の道を切り開いているのだ。「神は正義のための戦いを認めている」という主張は、そのままイスラム教原理主義者の聖戦思想と重なるから恐ろしい。

 俺の予想。
 残念ながらブッシュが勝つ。その結果、民主党はリベラルとラディカルに分裂して凋落し、4年後はブッシュ弟が悠々と大統領になるだろう。仮にケリーが勝てば、保守主義者が暴走し、新大統領やマイケル・ムーアの身を案じなければならなくなる。いずれにせよ、悪夢の始まりになりそうな選挙ではなかろうか。  
 
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