酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「キングスマン」~パチパチ弾けるUKテイスト

2015-10-11 12:57:18 | 映画、ドラマ
 スポーツへの興味は年々薄れているが、贔屓の成績が芳しくないと気分は冴えない。今季限定でベイスターズに肩入れしたのは、ブログに記したように、自殺した後藤浩輝騎手と中畑清監督のキャラが重なったからである。痛々しいまでのサービス精神を発揮した中畑だが、最悪のジ・エンドになった。

 進化を見せたラグビー日本代表だが、決勝T進出を逃した。この間、〝多国籍軍〟を否定的に捉える報道が気になっている。外国人選手は日本国籍を持つリーチマイケル主将(札幌山の手高卒)を筆頭にトップリーグ所属で、世界と日本を紡ぐ文化大使の役割を担っている。日本のメディアはいまだに偏狭さを引きずっているようだ。

 サッカーの強豪国は多民族で構成され、異なる人種が互いを補い合っている。南米からの移住者が多い静岡や群馬は、代表イレブンの配給源になるだろう。綺羅星の如き陸上競技のアフリカ系ティーンエイジャーだけでなく、野球ではオコエ瑠偉がドラフトの目玉だ。

 人種間の軋轢を克服したはずだったサッカーのオランダ代表だが、欧州選手権出場は絶望的だ(予選A組4位)。ドイツW杯以降、40年来のファンで、死ぬまでに頂点に立ってほしいと願っているが、育成システムが制度疲労を来してしまったのだろうか。

 TOHOシネマズ新宿で先日、「キングスマン」(15年、マシュー・ヴォーン監督)を見た。「キングスマン」とは国の縛りがないスパイ組織である。エキサイティングで息つく間もなく、文句なしのお薦め作品だ。いずれご覧になる方も多いと思うので、ストーリーの紹介は最低限にとどめ、以下に感想を記したい。

 冒頭で一人の男が自らを犠牲にして仲間を救う。生き残ったハリー・ハート(コリン・フォース)は17年後、殉死した同志の遺児エグジー(タロン・エガートン)に手を差し伸べた。どん詰まりのチンピラといえるエグジーに、父譲りの高潔さとチームスプリットの片鱗を認めたからだ。ハリーの期待通り、エグジーは家柄と学歴を誇るエリートたちと伍して頭角を現していく。ロキシー(ソフィー・クックソン)に仄かな恋心を抱くが、「おやおや」と笑えるシーンも用意されていた。

 「007」のボンドや「ミッション:インポッシブル」のハントは登場した途端、凄腕で見る者を瞠目させるが、危なっかしいエグジーも、直観力と機転をフル回転させてスパイ道を邁進していく。ラストではトム・クルーズに負けないオーラを放っていた。本作は父、ハリーとの絆に根差したエグジーの成長物語で、続編への期待も大きい。

 この手の作品に不可欠なのは存在感ある悪役だが、世界征服を目指すヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)と助手のガゼル(ソフィア・ブテラ)のキャラはぶっ飛んでいる。だからこそ、エグジー、ハリー、そしてロキシーの奮闘が際立つのだ。

 本作は疾走するアクション映画だが、「モンティ・パイソン」に通じるUKテイストがちりばめられており、スタイリッリュと異端の混淆が楽しい。アイロニー、ブラックユーモア、猥雑さに溢れ、戯画的で荒唐無稽だ。案の定というか、原作はアメコミで、「キック・アス」で知られるマーク・ミラーによるものだ。主要なキャストではないが、高潔と淫乱併せ持つ王女(ハンナ・アルストロム)が印象的だった。コメディーの要素も濃いが、<スパイが志向すべきは忠義と正義? それとも実利?>という永遠の課題も提示されていた。

 あす早朝から東北旅行だ。「辺境の誇り――アメリカ先住民と日本人」(鎌田遵著)に紹介された「ホテル観洋」(南三陸)に宿泊し、被災地ツアーに参加するのも目的のひとつである。
コメント (3)
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