酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

愚連隊シリーズ~岡本喜八が描いた戦争

2008-08-12 00:38:13 | 映画、ドラマ
 新彊地区の抵抗が治まらない。北京五輪を国威発揚の好機と見ていた中国だが、ナショナリズムの基軸が<国>から<民族と宗教>に移ったことを深刻に受け止めているはずだ。

 内柴に続き、北島が連覇を果たした。毎度のことながら、北島の表現力と集中力に驚かされる。明暗を分けそうなのが肉離れを発症した野口で、棄権の可能性が高いという。

 さて、本題。<戦争を考えるシリーズ>第2弾は、岡本喜八の初期の作品、「独立愚連隊」(59年)と「独立愚連隊西へ」(60年)について記したい。日中戦線を扱った連作で、エネルギーとユーモアに溢れている。

 舞台は戦争末期の中国だ。圧倒的優位の八路軍(人民解放軍の前身)に対抗するため、問題児を集めた部隊が結成される。「独立愚連隊」では第90小哨、「独立愚連隊西へ」では左文字小隊が、ゴキブリのように戦地を這い回る。

 「独立愚連隊」で主演を務めたのは佐藤允だ。従軍記者は仮の姿で、慰安婦トミ(雪村いずみ)、石井哨長(中谷一郎)とのやりとりで、その正体が明らかになっていく。三船敏郎が気の触れた大隊長、鶴田浩二が馬賊の頭目と、トップスター2人が脇でスパイスを効かせていた。

 「独立愚連隊西へ」で初主演を果たした加山雄三(左文字少尉)を、前作に続き出演した佐藤と中谷がもり立てている。軍旗捜索で戦地を転々とする左文字小隊は、八路軍の梁隊長(フランキー堺)と不思議な友情で結ばれる。 

 両作には朝鮮人慰安婦が登場し、日本軍上層部の腐敗も描かれているが、シリアスなトーンではない。コメディー、ミステリーの味付けもあるウエスタン風戦争活劇だ。加山ら出演者の陽気な歌声が、作品のテンポとリズムを作っている。根底にあるのは厭戦と反骨で、戦争と相容れない自由を謳っている。
 
 岡本監督は実に芸域が広く、戦争を扱った作品でも主音は異なる。「血と砂」(65年)は愚連隊シリーズの続編で、「肉弾」(68年)はATGらしい風刺を込めた前衛作品だ。「日本のいちばん長い日」(68年)と「激動の昭和史 沖縄決戦」(71年)はドキュメンタリータッチで、大日本帝国の本質を抉っている。

 「大誘拐~RAINBOWKIDS」(91年)と並ぶ岡本監督のエンターテインメントの頂点は、唯一の東映配給作「ダイナマイトどんどん」(78年)だ。東宝への義理を重んじたのか、東映実録物とは縁がなかったが、同作は抱腹絶倒のヤクザ映画のパロディーに仕上がっている。

 俺にとっての最高傑作は「近頃なぜかチャールストン」(81年)だ。国家とは、天皇制とは、戦争とは? 見る者に鋭く問いかけ、岡本監督の根っ子にあるものが浮き彫りになっている。

 次回は<戦争を考えるシリーズ>の完結編だ。今や朝日新聞御用達になった昭和天皇について論じたい。


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