酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ミステリアスな昭和天皇~仮面の奥の素顔とは?

2008-08-15 01:32:39 | 社会、政治
 北島の2冠を含め、日本の金メダルはすべて連覇の5個になった。星野ジャパンの心配の種は身内で固めたコーチングスタッフだったが、台湾戦の快勝で不安一掃となるだろうか。

 さて、本題。今日15日は終戦記念日だ。アジア侵略から太平洋戦争終結に至る過程で、加害と被害を問わず犠牲になった方々を追悼したい。今回は15年戦争の主役を俎上に載せる。

 佐野眞一氏は甘粕正彦を<日本近現代史上最も謎めいた男>と評していたが(前々稿)、甘粕よりミステリアスといえば、昭和天皇以外に思い浮かばない。

 <昭和天皇は軍部を抑え切れず、アジア侵略と日米開戦を許したが、自らの意思で終戦を決断した>……。「天皇と東大」(立花隆著)と「太陽」(05年、ソクーロフ監督)は、この<日本の常識>に則っていた。昭和天皇は今や、朝日新聞御用達の“平和主義者”に格付けされている。

 俺も“甘いムード”に流されていたが、「昭和天皇」(ハーバート・ビックス/講談社、上下)を読んで目からウロコが落ちた。ビックス氏(現NY州立大教授)は一橋大でも教授を務めた日本近現代史の第一人者である。

 膨大な史料を検証して書き上げられた労作は、<戦争遂行者としての昭和天皇>を抉り出している。大元帥として無謀な戦略を主張し、万余の将兵を死に至らしめた経緯も詳述されていた。01年ピューリッツァー賞に輝く同書は、<日本の常識>と真逆の<世界の常識>を提示した。

 「太陽」で昭和天皇はマッカーサーの問いを仙人のようにかわしていたが、GHQ資料(「世界」79年4月号=広瀬隆氏が講演会で紹介)では別の貌を見せている。「米国の沖縄軍事占領は、日本に主権を残存させた形で長期(50年以上)にわたり継続すべし」と売国的な提案をマッカーサーにしていた。

 昭和天皇の曖昧な言動は右派にも混乱をもたらし、皇室と愛国心の乖離が決定的になっている。排外的ナショナリズムの軸になった小泉純一郎元首相と石原慎太郎都知事の共通点は、皇室と距離を置いていることだ。小泉氏は文化勲章廃止論者だし、石原氏は野坂昭如氏との対談で「自分は皇室支持者ではない」と明言していた。

 皇室崇拝者だった三島由紀夫は、昭和天皇に厳しい目を向けていた。象徴的な作品は「剣」で、大学剣道部主将の国分は、部員が自分の指示を無視して合宿中に泳いだことを知り、自死を選ぶ。<水泳後の剣道部=象徴天皇制>で、「剣」は<遺書の序文>でもあった。1970年11月25日、三島は昭和天皇の代わりに腹を切り、美学への殉じ方と責任の取り方を示した。

 辺見庸氏ら天皇制否定派は、<昭和天皇が戦争責任を取らなかったことが、戦後の無責任の連鎖を生んだ>と説く。確かに的を射ているが、仮に昭和天皇が“責任ある行動”を取っていたら、日本はどうなっただろう。21世紀の今も、ファナティックな<神の国>のままかもしれない。



コメント (2)
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