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酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

紅白、能登半島地震、鈴本、箱根、将棋~年末年始の雑感あれこれ

2024-01-03 22:49:00 | 独り言
 大晦日から元日にかけ、知人とともに過ごした。基本的に紅白は見ないが、客の希望に応じチャンネルを合わせた。フルタイムで見た紅白は、俺にとって驚きだった。現役ロックファンは引退したが、情報はロッキン・オン&ジャパンのHPから得ている。国内勢の比重が大きいのだが、そこでプッシュされているアーティストの多くが紅白に出演していた。

 洋楽ロック派だった俺は1980年前後からロッキン・オンを毎号購入していた。〝同誌がプッシュするアーティスト〟を信頼してきたが、最近は〝どうして〟、〝何がいい〟、〝歌謡曲〟ってな感じだ。同誌が迎合して商業主義に漬かっているのか、それとも俺が尖り歪んだままなのか……。<ロック>にこだわりがない知人は華やかなショーを楽しんでいた。

 元日夕方、自宅でも揺れを感じた。はるか彼方、能登半島を震央とする令和6年能登半島地震は2日経っても余震が続き、甚大な被害をもたらした。元日の団欒は瞬時に失われ、現在まで60人以上が亡くなり、半数は火災が起きた輪島市だ。冥福を祈ると同時に、行方不明者の救出と、崩壊したライフラインの復旧を願っている。福島の悲劇を繰り返さないためにも、まずは福井県内の原発5基の稼働を停止してほしい。

 「相棒元日スペシャル」は釈然としない内容だったが、翌日に足を運んだ鈴本演芸場「新春爆笑特別興行」第3部は、地震被災者に思いを馳せながらの初笑いの場となった。富山市出身の柳家さん生は5時間立ちっぱなしで辛うじて間に合ったという。顔見世興行で演者たちは短い時間で下がったが、その中でも日頃鍛えた芸を濃縮して披露していた。楽しく充実した時間だった。

 箱根駅伝を見ながら、養護施設で暮らす母に思いを馳せていた。母は駅伝、とりわけ箱根駅伝に夢中になっていた。下馬評は〝駒沢1強〟で、青学の原監督は「駒沢は史上最強。2位を狙う」と公言していた。ところが青学圧勝で、自身の大会記録を2分以上も更新する。策士の原監督が計算ずくで泣いていたのか、望外の結果なのかわからないが、他の駅伝と箱根とは距離が大きく異なる。青学チームが箱根仕様で走り込んできたことは間違いない。

 俺が応援している将棋棋士は7日から始まる王将戦で藤井聡太八冠に挑戦する菅井竜也八段だ。女流なら磯谷祐維1級で、王将挑戦者決定リーグで記録係の席に座っていた目力の強い金髪ギャルである。LPSA(日本女子プロ将棋協会)所属で、師匠は独創的な棋風で知られる山崎隆之八段だ。その磯谷がニコニコ動画で放送されたYAMADA杯女流チャレンジ杯決勝(3日)で野原未蘭初段を破り、公式戦を初制覇して初段に昇段した。

 本局は野原が序盤から優位を築き、ニコ動にはAI評価値は表示されないものの野原圧勝で進んでいた。ところが30秒将棋で磯谷の捨て身の攻めが決まり、大逆転した。同年生まれの二人が切磋琢磨し、女流2強時代に割って入ってほしい。
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陽春の候の雑感~杉並区議選、チャンピオンリーグ、活字離れ、将棋と囲碁の格差

2023-04-24 18:34:46 | 独り言
 杉並区議選でブランシャー明日香さんが当選を果たした。新人ながら19位(定数48)だから大健闘といえるだろう。俺が所属するグリーンズジャパン公認候補でもあり告示前と告示後に合わせて4回、街宣に足を運んだ。岸本聡子区長が何度も応援に訪れたこともあり、駅頭では多くの人が足を止めていた。

 「ゼロカーボンシティ杉並」共同代表として進行役を務めたイベントで岸本区長と対談した斎藤幸平東大大学院准教授からも応援のメッセージが送られてきた。岸本区長とともにミニシュパリズム(対話と参加の住民自治)を進め、ジェンダー平等と多様性尊重、ゼロカーボンを日本、いや世界に発信してほしい。

 最近は欧州チャンピオンズリーグ(CL)をチェックしている。今季はセリエA勢が躍進した。ベスト8にナポリ、ACミラン、インテルが進出したが、リーグで独走するナポリが耳目を集めた。準々決勝では躍動感あるボール回しを見せながらミランに屈する。準決勝はミラノダービーだ。

 30年以上も前、開局したばかりのWOWOWがセリエAを放送したことで欧州サッカーに興味を持った。〝オランダサポーター〟の俺は当然、フリット、ファンバステン、ライカールトのオランダトリオを擁するミランを応援した。ライバルのインテルの主力はマテウス、クリンスマン、ブレーメの憎っくきドイツ勢だったから、ミラノダービーには力が入った。

 当時はスポーツ紙、その後は夕刊紙で校閲を担当していたから、活字離れを心配している。2022年下半期のデータ(日本ABC協会)によると、全国紙の発行部数は軒並み大幅減だ。1000万部を誇った読売は663万部で、中部地区で夕刊を廃止した朝日は397万部。毎日は185万部、産経は遂に100万部を切った。電車の中で新聞を読んでいる人はまれで、大抵はスマホを触っている。

 大学生の新聞購読者は5%という統計もあるが、あの長谷川幸洋氏(元東京新聞副主幹)まで「行きがかり上、数紙は取っているが殆ど読まない」とネットの番組で話していた。アメリカでは世紀が変わった頃から地方紙の廃刊が続き、投票率低下に繋がる。要約されたニュースをネットでチェックすることは思考の単純化をもたらし、フェイクニュースにつけ込まれやすくなる。

 新聞の発行部数減が囲碁界を直撃した。主催の毎日新聞社が経営難に陥り、本因坊戦の規模を来期から大幅に縮小する。7番勝負から5番勝負になり、2日制から1日制に。優勝賞金も2800万円から850万円になり、挑戦者決定リーグは廃止されトーナメントに移行する。他のタイトル戦に波及する可能性も大きい。

 タイトル数8の将棋界は特別協賛7社、協賛15社。タイトル数7の囲碁界は特別協賛と協賛が1社ずつだ。<囲碁は旦那衆のたしなみで、将棋は庶民の娯楽>といわれたが、藤井聡太5冠の登場で決定的な格差が生まれた。将棋人口は現在500万、囲碁は150万といわれるが、将棋の場合、多くの小学生が教室に通うようになり、女性を中心に〝見る将〟が増えている。

 〝見る将〟を楽しませているのが2017年度からタイトル戦に昇格した叡王戦だ。昨日の第2局は藤井叡王が菅井竜也八段に完敗し、1勝1敗のタイになった。叡王戦主催は不二家で、一日2回のおやつが注目の的だ。公式戦ではないが、ヤマダ電機、サントリー、アベマが棋戦をバックアップしている。女流タイトル戦では、ヒューリック、大成建設、マイナビ、リコー、霧島酒造が主催者に名を連ねている。すべて藤井による経済効果だ。

 藤井も人間ゆえ壊れるかもしれないし、独り勝ちが続けば飽きられる可能性もある。そんな折、羽生善治九段が次期将棋連盟会長に内定した。研究者や文化人との共著も多い羽生は「人工知能の核心」の著書がある。AI関連のNHKスペシャルで対話したことがきっかけで、孫正義氏主宰の財団で評議員を務めている。会長に就任したらソフトバンク、かつてCMに出演した明治乳業、キリンビール、ネスレ日本、サントリーが棋戦のスポンサーとして名乗りを上げるかもしれない。

 将棋界はAIと巧みに付き合っている。対局番組ではAIの評価や候補手が提示され、「藤井のAI超え」が話題になり、「これは人間には無理」、「人間的にはこれがベスト」とAIと人間の個性を見据えてトップ棋士が分析している。藤井を脅かしそうな奨励会員も多く、ルッキズムと批判されることは覚悟の上だが、人気の出そうな女流棋士もいる。

 木村一基九段を筆頭に、ユーモアある解説者が〝見る将〟を喜ばせている。佐藤天彦九段は名人戦の大盤解説会での手厚く丁寧な対応でファンを感激させていた。〝鉄のメンタル〟というイメージを抱いていた渡辺明名人だが、妻・伊奈めぐみ著の漫画「将棋の渡辺くん」でツッコミどころ満載の素顔が明かされた。渡辺は気さくでファンサービスにも熱心という。

 指すことはないが将棋対局番組を楽しんでいる俺も、〝見る将〟のひとりだ。とはいえ囲碁界の衰退は気になっている。<囲碁・将棋>は日本文化を長年支えてきた〝家族〟だ。将棋は藤井で持ち直したが、囲碁に秘策は? それはきっとグローバルな展開だ。現在は後塵を拝しているが、中韓トップを破る棋士が現れたら、囲碁人気も急上昇するのではないか。
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余寒の候の雑感~白内障、史上最高のスーパーボウル、グリーンズジャパン総会

2023-02-17 05:19:27 | 独り言
 この2、3年、視力に異変を感じていた。正面に夕日が落ちると眩しくて何も見えなくなるし、夜道では足元が覚束ない。メガネドラッグでチェックしたが、視力は落ちていなかった。仕事をやめて運動不足になり、数値が悪くなった糖尿病由来と心配になったが、眼科の検査を受け、白内障であることが判明した。 

 膝、腰、肩に歯、そして糖尿病と満身創痍だが、さらに白内障で手術(左右で2回予定)と肉体の衰えはとどまるところを知らない。死ぬまで読書を趣味にしたいというささやかな願望を現実にするためにも、手術は不可欠だ。術後、新しい世界は開けるだろうか。

 チーフスVSイーグルスのナンバーワン・シードの組み合わせになった第57回スーパーボウルは、史上最高の熱戦になった。放映権料の高騰で、プレミアリーグなどテレビで視聴することは難しくなっている。放映権料が米国で年間100億㌦(1兆3000万円超)のNFLのポストシーズンを、日テレジータスは全て生中継で放送した。何か〝からくり〟があるのだろうか。

 主音声の解説は現地(ステートファーム・スタジアム)から森清之氏(東大HC)が担当し、インターバルには村田斉潔氏(龍谷大HC)と有馬隼人氏(アサヒビールHC)による詳細な分析が提供される。イーグルスは攻撃も守備も岩盤のような堅実さ、チーフスは熟練した柔軟性を特徴にしている。史上初の黒人QB対決で、イーグルスのハーツは24歳で突進力に秀で、チーフスのマホームズは27歳にして〝レジェンド〟の域に達している、

 モビリティーを誇る両QBだが、マホームズの右足首の故障が不安視され、イーグルスやや有利の下馬評だった。アメリカのドラマを見ていると、ハイスクールでもQBは白人で、全校女子の憧れの的という設定が多い。時代は変わり、QBのみならず黒人選手が主力を占めているが、NFLではコーチの人事で黒人は冷遇されていると指摘する声が強い。

 両QBの躍動に、サッカーW杯の決勝を思い出した。ハーツいはエムバペ、マホームズにはメッシを重ねていた。チーフスのアンディ・リードHCがイーグルスを率いていた頃、上記の村田氏は〝戦術がコンサバティブ(保守的)〟と評していた。だが、ファンタジスタのマホームズをQBに据えて以降、遊び心満載のトリックプレーを用いることが増えた。チーフス勝利も満足だし、エキサイティングなシーソーゲームに見入ってしまった。

 先日、ズームで開催された第12回緑の党(グリーンズジャパン)総会に参加した。統一地方選、グローバルグリーンズ世界大会(6月、韓国)を控え、昨年7月に結成10周年を迎えたグリーンズジャパンの飛躍の年へ……こう力を込めたいところだが、簡単ではない。日本に限れば、若い世代が政治に対して忌避感を抱いている。左右を問わず、政治団体やグループの高齢化が進んでいるのだ。

 日本はいつからか<世界標準>に頓着しなくなった。自公政権はジェンダー、LGBT、夫婦別姓など戦前回帰が甚だしい。統一教会、日本会議、神政連との結び目だった安倍晋三元首相の影響力は今も絶大で、日本は鎖国状態になりつつある。さらに軍事費増強、原発シフト、空前の値上げと絶望的な状況だが、グリーンズジャパンは接着剤の役割しか果たせていない。

 俺は<脱成長>、<ミニシュパリズム>、<コモン>を軸に据え、環境危機、格差拡大をストップするべきだと考えているが、限られた時間で議論は深まらなかった。総会と離れてグリーンズジャパンの未来を見据えると、希望がないわけではない。杉並で起きていることがモデルケースになる。

 2年前の7月、グリーンズジャパン主催の連続オンラインセミナーで講師を務めた岸本聡子氏は、アムステルダムのNGOに所属して市民運動に関わってきた。とりわけ市民と市政を結ぶプラットホームを構築した<ミュニシパリズム>発祥の地バルセロナの具体的な施策をセミナーで紹介していた。その岸本氏が昨年、杉並区長選で当選する。彼女の選挙に協力したボランティアの中で、グリーンズジャパン公認で区議選に挑戦を決めた女性もいる。

 コロナ禍以降、引きこもり気味だった俺だが、暖かくなったら長い冬眠から覚めるつもりでいる。仕事でも探してみようかな。
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謹賀新年~今年の抱負は生き延びること

2023-01-03 19:36:15 | 独り言
 無職ゆえ、年末年始も普段と変わらないが、いつもにましてゴロゴロ惰眠を貪っている。ドキュメンタリーを何本か見たが、「映像の世紀 バタフライエフェクト~ロックが壊した冷戦の壁」(NHKBS1)が出色だった。ニナ・ハーゲン、ルー・リード、デビッド・ボウイの3人に照準を定め、彼らの音楽がベルリンの壁崩壊、チェコスロバキアの無血革命にいかに影響を与えたかを伝えている。ロックファン必見のドキュメンタリーだ。

 東欧を巻き込んだビートルズ革命、そしてジョン・レノン暗殺の衝撃も背景に描かれていた。東ドイツ時代にニナが歌った「カラーフィルムを忘れたのね」は人々の心に深く刻まれ、メルケル前首相は自らの退任式での演奏曲に選んだ。ルー・リードが率いたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの1stアルバムを持ち帰ったハヴェルによってバンドは自由化のシンボルになる。ハヴェルはチェコ共和国の初代大統領だ。

 同アルバム収録の「アイム・ウエーティング・フォー・ザ・マン」にインスパイアされたボウイはベルリン在住時、「ヒーローズ」を発表する。同番組では紹介されていなかったが、ボウイは窮地にあったリードを支え続けていた。廃人の如きリードがボウイのツアーの楽屋で横たわる姿が目撃されている。ちなみにボウイが「ヒーローズ」を発表する4年前(1973年)、ソロになっていたリードは、傑作「ベルリン」を発表している。

 ボウイは87年、西ベルリンで野外コンサートを開催した。壁の向こうに4本のスピーカーが設置され、数千人の東ドイツ市民が集まり、「壁を壊せ」と声を上げた。壁崩壊の魁と評され2年後、メルケル、そしてKGBのエージェントだったプーチンも現場にいた。ハヴェルの残した<音楽だけで世界は変わらない。しかし、人々の魂を呼び覚ますものとして、音楽は世界を変えることに大きく貢献できる>の言葉に感銘を覚えた。

 年始は布団に寝転びながら〝酔生夢死〟状態で箱根駅伝を眺めていた。今更ながら箱根の肝が山の上り下りであることに思い至る。高校スポーツは郷里のチームを応援するのが常だが、ラグビーの京都成章は準決勝、サッカーの東山は準々決勝に進出と楽しみが増えた。

 最高の時間潰しになっているのは「名探偵モンク」だ。AXNの再放送に気付いたのは先月で、シーズン5以降を少しずつ見ているが、実に面白い。元刑事で妻トゥルーディーを亡くしたことで引きこもりになったモンク、ストットルマイヤー警部、ディッシャー警部補、アシスタントのナタリー(シーズン1~4はシャローナ)の4人が主な登場人物だ。初めて見るように楽しんでいる。健忘症も悪くない。

 今年も地味に、備忘録、存在証明、遺書代わりとしてブログを綴っていくつもりです。たまには訪れてください。目標も何もないが無事に生き延び、少しは世界と関われたらと考えています。
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秋の雑感~パンサラッサ、先輩との再会、アストリッドとラファエル、火野&中野、日本沈没、マスク事件

2022-11-03 19:00:21 | 独り言
 天皇賞秋は前稿枕で推した③パンサラッサが鮮やかな逃げを披露し、2着に粘り込んだ。同馬、矢作芳人調教師、縁で結ばれた吉田豊騎手には「あっぱれ」と言いたい。矢作師は地方競馬からの転入組で、30歳の頃に起こした事件で調教師は無理と思われていた。14回目に合格(2004年)という雌伏の時代を経て、トップステープルに上り詰める。パンサラッサの次走は香港だ。ドバイの再現を期待している。

 ネタが尽きたので、雑感をダラダラ記すことにする。先週末、大学時代の先輩Kさんと数年ぶりに会った。ちなみにKさんは天皇賞でジャックドールを本命視していたが、4着に終わる。考え方の基本、文化全般など、現在の俺があるのはKさんのおかげで、ブログに綴った小説や映画の多くはKさんもチェック済みだった。

 60歳以上はテレビ世代。俺と同様、ドラマ好きのKさんに「アストリッドとラファエル」(フランス制作、NHK総合)を薦めておいた。第1シーズンは終了したが、第2シーズンは来年春に放送予定という。犯罪資料局に務める自閉症のアストリッドとラファエル警視のコンビが友情を紡ぎながら難事件を解決していく。知的でユーモアに溢れた刺激的な内容だ。

 定年まで勤めていた出版社の系列会社でフルに働いているKさんだが、心配になったのは健康面だ。俺のように定期的に検診を受けているわけではないが、血圧が160前後というのは驚きた。不健康な俺でも最近は120前後だから、かなりヤバい。受診を勧めておいた。

 部屋でゴロゴロ、チャンネルサーフィンしている俺は、「にっぽん縦断 こころ旅」(NHK・BSプレミアム)にハマっている。火野正平が視聴者の思い出の場所を自転車で回り、手紙を読むというのがお約束だが、緩さ、どこか懐かしい風景、人々やスタッフと火野とのざっくばらんなやりとりに心がまったり和んでしまう。

 「科捜研の女」の最新シリーズも悪くない。57歳の沢口靖子の輝きはいまだ褪せず……と勝手に思っている。麻雀で応援しているのは渡辺洋香プロ(最高位戦)で、50歳前後だがキュートさは変わらず、団体のリーグ戦ではトップクラスを維持している。更に、俺の年齢に相応しい〝アイドル〟を見つけた。50代半ばの〝通販の女王〟中野珠子で、地上波、BS、CSを問わずテレビショッピングでスタジオを仕切っている。1年前なら「視聴者を騙しやがって」とチャンネルを替えたはずだが、キャピキャピ発散する中野の眩さに見入ってしまうから困ったもんだ。

 <俺が消える前に、日本は壊れないでくれ>と記したことがあるが、願いは叶わないだろう。政治の劣化は<岸信介-安倍晋太郎-安倍晋三>の3代が主導してきた統一教会(勝共連合)と自民党の癒着からも明らかだ。憲法改正、夫婦別姓、LGBT問題……。戦前回帰を支えてきたのはカルト集団だった。

 そして円安だ。かつて経済通の友人に<円が高いということは、日本の国力の反映>と教わったことがある。だが、この20年、円の価値は45%ほど下落した。国力は衰え、時給もアジア各国に追いつかれ、年金の納付期限を65歳まで延長する案が検討されている。先日見た「TBS1930」では、円安で収入が目減りした外国人実習生が日本を見捨てる可能性に言及していた。

 同番組では、日銀の失策を嘲笑する海外のファンドマネジャーの声を紹介していた。出演した識者はイギリスやスウェーデンを例に挙げ、「なぜ日本人は怒らないのか」と話していた。怒りの刃は権力ではなく、生活保護受給者ら弱者に向けられている。前々稿で紹介した「死刑について」で著者の平野啓一郎は、<社会に渦巻く憎しみから優しさを軸に据えた共同体に日本を変えていくべき>と結論付けていた。だが現実は、弱者が自らより弱い者を打つ酷薄な社会になっている。日本沈没の危機が迫っている。

 羽生善治九段が王将戦挑戦者決定リーグで永瀬拓矢王座を破って5連勝とし、藤井聡太王将(5冠)に挑戦する可能性が高まった。「AIも悩むような激戦」と動画解説者が評していた。その羽生は<藤井5冠は一手の隙も見逃さない>と語っていたが、その通りのことが竜王戦第3局で起きた。広瀬章人九段が優勢を築いていたが、緩手を突かれた。微差を着実に広げ勝利に近づく〝藤井曲線〟に衝撃の進化のスピードが表れている。

 将棋界を揺るがす事件が起きた。A級順位戦で上記した対局者の永瀬の指摘により、佐藤天彦九段が反則負けになった。マスクを長時間外していたというのが理由だが、佐藤は不服申立書を提出して受理された。拙速な連盟の対応と対照的に、佐藤の申立書は理に適っている。

 俺みたいな出来損ないの社会人でも、<まずは両対局者に問題を指摘し、最初は注意にとどめて今後に備えるべき>と考えた。将棋ファンの大半は同意見だろう。さらに、決定に至った経緯が不透明だ。永瀬の〝師匠筋〟である鈴木大介常務理事、A級在籍で利害関係にある連盟会長の佐藤康光九段が協議した上とされるが、一般社会では通用しない。

 16年の将棋ソフト不正使用疑惑騒動で分裂の危機にあった将棋連盟を救ったのは、デビューから29連勝した藤井5冠だった。救世主はそう簡単に現れない。抜本的な改革に着手しないと、将棋界の上昇曲線は保てないだろう。
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炎暑下の雑感あれこれ~この30年、「相棒」、高校野球、統一教会etc

2022-08-06 20:43:54 | 独り言
 睡眠障害(不眠症)で生活のリズムが狂ってしまった。映画について記すはずが、二度寝して覚めたら、予約時間が過ぎていた。予定変更で、炎暑の日々の雑感を綴りたい。

 <コロナは熱に弱い>なんて昔の話。新規感染者数が世界最多になった日本だが、行動制限の声は上がらない。オミクロン株は重症化しづらいことが理由らしいが、深刻な医療崩壊が起きている。最近、俺は考える。自分だけでなくこの30年、この国は著しく劣化したのではないかと……。社会は膠着し、閉塞感に覆われている。自由は窒息し、格差は拡大している。

 年金生活者の俺も、息をひそめ怯えている。気力も体力も底を打った今、現実逃避はテレビ観賞で、刑事ドラマ(主に再放送)にチャンネルを合わせている。思い至ったのは原作の重要性だ。ともに内藤剛志主演の「捜査一課長」(テレ朝系)はコメディーと化しているが、「強行犯 樋口顕」(テレ東系)は見応えがある。差の理由は原作の有無で、「――樋口顕」の原作は今野敏だ。

 小説家は犯罪者の心理を考え抜いてストーリーを練るから、ラストに納得出来る。「棟居刑事シリーズ」(佐藤浩市主演)など森村誠一原作、長坂秀佳脚本の豪華コンビだ。原作のない「相棒」だが、ある時期まで輿水泰弘、櫻井武晴、戸田山雅司ら実力者が脚本を担当して一定のレベルを保っていた。

 その「相棒」に亀山薫が復帰する。水谷豊70歳、寺脇康文60歳の高齢コンビを、65歳の俺も応援したい。〝最後の相棒〟と公言されているから、次回「シーズン21」がラストになりそうだ。亀山復帰の設定は輿水が考案中という。櫻井、戸田山も脚本陣に加わって大団円になることを願っている。

 高校野球が始まった。今夏はたっぷり時間があるので、例年以上に観戦するかもしれない。下馬評通り、大阪桐蔭の実力は圧倒的だが、コロナとの戦いも大変で、既に6校の出場が危ぶまれている。ベスト以上は狙えると思っていた京都国際は初戦で敗れ、ハングルの校歌は流れなかった。高校野球はお盆の風物詩だが、コロナによって生者と死者、家族の距離が遠くなった今、お盆自体の位置付けも変わっている。大がかりな大会の在り方を再考すべき時機かもしれない。

 安倍元首相襲撃後、統一教会との関係を理由に挙げたY容疑者の言動に違和感を覚えた。統一教会の力を軽視していたからだが、それは俺の勘違いだった。日本会議、神道政治連盟のみならず、統一教会もまさに〝身内〟として安倍氏ならびに自民党を現在も支えていることが報道で明らかになった。

 俺が統一教会の存在を知ったのは高校2年の時だった。1年先輩から集会参加を熱く勧められたが、それが統一教会(原理研)主催だったのだ。興味がなかったからパスしたが、多くの若者が参加して新聞にも載った。オウムの時もそう言われたが、論理的に物事を考える秀才に支持されたという。

 アバウトな俺には無縁だったが、入学した東京の大学でも原理研が堂々と活動していた。大学当局に取り入り、セミナーハウスを私物化していたことが明らかになる。当時、社会と真摯に向き合っていた俺は、抗議活動に加わった。統一教会の文鮮明教祖が創設したのが勝共連合で、安倍元首相の祖父、岸信介元総理もバックアップしている。

 平野啓一郎は9年前、<自民党の憲法改正案にクラクラする>と発言したことがある。その後も自民党の方向性は変わらず、ジェンダーには無配慮、夫婦別姓反対など、時計の針を戦前に逆戻りさせる動きを進めている。その中心には常に安倍氏が鎮座し、統一教会の支援を巡っても教団に直接働きかけていた。安倍側近の中でも下村博文元文科相は関係が深いようだ。

 統一教会の集票力は最大に見積もっても15万前後といわれる。どうしてここまで自民党に影響力を維持出来るのか不思議だが、ボランティアとして選挙運動に協力することで〝貸し〟をつくっているとジャーナリストは分析している。この20年、あらゆる点で日本は<世界標準>から遠ざかっているが、その流れにカルトが関わっていたことは明白だ。

 安倍氏とその周辺は〝嫌韓派〟にカテゴライズされてきたが、韓国発祥の団体に首根っ子を押さえられているとしたら、見える光景も変わってくる。統一教会はKCIAや北朝鮮と一心同体だ。政権支持派が多い20代も、ジェンダーや環境問題には敏感だ。彼らを自民党から引き離す勢力が現れるだろうか。
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猛暑下のダブルパンチにノックアウト

2022-07-03 20:38:35 | 独り言
 映画もしくは小説について記すつもりだったが、猛暑下のアクシデントで予定が狂ってしまう。まずはエアコンの不調から。

 先月20日すぎ、冷房と除湿をセットしても30分ほどで止まり、タイマーボタンが点滅してぬるい風が出てくる。様子を見ようと思ったが、横浜スタジアムに足を運んだ25日から35度以上の猛暑日が続く。後手を踏んだことでセッティング日が遅れた。

 外に出る気もしないから、部屋の中で腐っていた。最近、便秘→下痢のサイクルが続いていたが、冷たいものの過剰摂取で胃腸の働きが悪くなり、食欲が減退する。万年床を汗まみれでのたうち回っているうち、ぎっくり腰になり、接骨院に通う羽目になる。睡眠障害気味で酔生夢死状態。時間の感覚がなくなってしまった。

 ようやく3日前、設置が終了し、人心地がついた。担当者も書き入れ時で、帰宅するのが深夜0時を回ることもあるという。技術、体力に加え、〝高所恐怖症〟でないことが求められる。2月まで仕事をしていた俺だが、〝果たして自分はプロだったのか〟と自問自答してしまう。

 エアコンは解決した。ようやく日常が戻ったはずが、今度はノートパソコンが立ち上がらない。もともと機械が苦手でパソコンに関しても人に頼ってきた俺は、最寄り駅に最近出来た修理店に向かう。預けて診断してもらったところ、ハードディスクが破損寸前。だが、残っていたデータは修復可能で胸をなで下ろした。ということで、今回はアクシデント報告がテーマになる。

 俺に限らないが、パソコンやスマホが壊れると、自分にとって重要な何かが損なわれたような気分になる人は多いと思う。あらゆる情報源と蓄積したデータがパソコンに収蔵されているから、しっかり管理しないといけない。「USBメモリーを使ったことがない」というと、担当者は失笑気味だった。

 ダブルパンチでマットに這ったが、さらなる追い打ちに見舞われる。週末のKDDIの通信障害だ。約束していた通りに待ち合わせ場所に迎えたので、被害は最小限だったが、混乱した人は多かったはずだ。パソコンよりスマホの方が現代人にとって重要なツールなのだろう。戦争でさえ、スマホで実況される時代なのだ。

 惚けた頭で、あれこれに思いを寄せた。猛暑でも衰えない新規コロナ感染者数、どこで暮らすかを含めた終活、そして参院選について……。最近の俺は少し考えると眠くなる。永眠へのリハーサル状態になっている。

 今回は手短に。次稿以降は旧に復し、くどくうだうだ記したい。
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GW雑感~オシム追悼、CL、そして憲法

2022-05-06 22:11:36 | 独り言
 イビチャ・オシム氏が亡くなった。享年80、最後のユーゴ代表監督である。内戦を生き抜いた偉大なサッカー指導者の冥福を祈りたい。オシム氏が残した名言の数々が今、関係者によってネット上にアップされている。俺も含蓄ある言葉に感銘を覚えていた。

 ユーゴ内戦では戦犯法廷(ハーグ)でセルビアのミロシェビッチ元大統領、指導者カラジッチ、軍司令官ムラジッチが断罪される。「スプレニツァの虐殺」にジェノサイド罪が適用され、集団レイプは人道に対する罪と認定された。セルビア人に偏った点に批判はあったが、戦争犯罪を裁く基準が設定されたことは事実だ。だが、プーチン大統領を裁くには国内で失脚し、逮捕に追い込むしかない。

 オシム氏はユーゴ監督時代、民族間の対立を緩和するため様々な手段を講じたが、時代の波に翻弄された。今風に言えば、サッカーで多様性を追求したように思える。日本代表監督時代、<日本サッカーの日本化>を掲げたが2007年、66歳の時に脳梗塞を発症し、退任することになった。昨夏、64歳で発症した俺とは〝脳梗塞つながり〟だったのだ。

 仕事から離れ、欧州チャンピオンズリーグを暇にあかして観戦している。準決勝ではリバプールが5対2(2戦合計)でビジャレアルを破ったが、レアル・マドリードの大逆転は衝撃だった。レアルは決勝T入りしてからパリ・サンジェルマン、チェルシーに押されていたし、クラシコ第2戦ではバルセロナに0対4と完膚なきまで叩きのめされている。

 内容的にもマンチェスター・シティが押していたが、終了間際に2点を決め、延長で勝利を収めた。シティは決めどころで外していたし、守備に集中を欠いた点もある。でも、そんな理屈を超えた伝統の力を世界に見せつけた。決勝がどんな戦いになるか楽しみだ。

 大谷がレッドソックスを7回無失点で3勝目を挙げた。11奪三振は普通も、無四球という点に、大谷の進化が窺える。フェンウエイ・パークで驚いたのはレッドソックスのクローザーの入場曲。何と引退したアンダーテイカー(WWE)のテーマを使っていた。プロレス史上に輝くレジェンドの知名度を再認識させられた。

 5月3日、有明防災公園で行われた憲法集会に1万5000人が参加した。俺も芝生の端っこに座り、アピールに耳を傾けていた。ロシアのウクライナ侵攻は副産物を生み出した。軍拡の嵐である。日本でも憲法9条改正が声高に叫ばれ、護憲派の危機感は臨界点に達している。

 当ブログで、<ドローンなどの最新兵器の導入で戦争の形は変わりつつあるのではないか>と記してきた。この間のロシアのウクライナ侵攻を見ても兵器の進化は著しいが、ユーゴ内戦時と変わらぬ白兵戦で、ジェノサイドと集団レイプが行われている。戦争が人間を獣にするという原則はそのままなのだ。

 かつて是枝裕和監督はドキュメンタリー「シリーズ憲法~第9条・戦争放棄〝忘却〟」(06年)で、9条の根底にあるのは<加害の意識>と論じていた。かつて日本軍がアジアで行ってきた戦争犯罪を忘却することが、結果として9条の精神を脅かすと是枝は説く。この点を踏まえ再度、憲法を捉え直す必要がある。

 そして、<平和憲法があったから、日本人は手を血で汚すことがなかった>という俗論を検討しなければならない。日本は戦後、朝鮮戦争、ベトナム戦争で米軍の兵站基地だったし、イラク侵攻時には沖縄から数千人の海兵隊員が戦地に赴いている。沖縄の基地問題に目を背けて〝平和憲法〟を語る意味がない。

 ロシアのウクライナ侵攻について、<プーチン=絶対悪>が常識になった。むろん、的を射ている部分もある、NATO(=アメリカ)、EUが悪と戦う善とすることに無理がある。問題を歴史的、包括的に捉える論考に出合えればと願っているが、日本人がウクライナの人々に寄り添うためには、戦争放棄を説く9条を守ることが第一だ。

 ジェンダー、沖縄、貧困問題を説く識者のアピールが続いた。日本国憲法を織り成す糸が紡がれているのを感じた。デモには加わらず中座したが、憲法の現在を自問する集会だった。

 王座戦挑戦者決定トーナメントで大橋貴洸六段が藤井聡太5冠を破り、対戦成績を4勝2敗にする。AIの評価値で藤井が逆転したかと思ったが、珍しく失着があったのか、数字が乱高下して押し切られた。プロ入り同期の大橋は、この日もピンクの上下と派手ないでたちで知られるが、回り道して奨励会を抜けた後はB級2組まで昇級している。藤井キラーとして存在感は増すばかりだ。
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春の雑感~モラトリアム、猫、中央公園、桜にスカイツリー、そしてウクライナ

2022-04-03 23:17:01 | 独り言
 仕事を離れて1カ月……。すぐに職を探すつもりはなく、当分は怠惰な日々を過ごすだろう。部屋の契約は1年後に切れるから、次の住処を探さなければならない。キリギリスのモラトリアムは続く。

 帰郷も候補のひとつで、合わせて猫を飼いたい気もするが、簡単ではない。「岩合光昭の世界ネコ歩き」に登場する猫たちは押しなべて活動的で、飼い主宅から散歩に出て、2時間歩き回るなんてザラだ。海外だけでなく日本でも、自然と街にマッチしている。愛嬌と野生を併せ持つ猫の本質を理解していないと共生は難しい。

 部屋の近くで2匹の野良猫を見つけた。ふてぶてしかった茶トラは最近、可愛い声で鳴いて俺を見る。空腹なのだろう。もう一匹の黒猫は俺が近づくと後ずさりする。テレビの特番では、3年間餌を与え続けてようやくタッチできたというケースが紹介されていた。猫も人間同様、個性は様々だ。

 桜の時季、近場の新宿中央公園で桜を愛でるが、公園自体の変容に驚かされる。園内にレストランとカフェが出来て、サラリーマンやOLの憩いスペース、子供たちの遊び場になっている。同公園といえばかつて犯罪の匂いがする〝アンダーワールド〟で、ホームレスもたむろしていたが、今やすっかり〝浄化〟されている。以前を懐かしく思うのは俺の暗い感性ゆえか。

 冬が戻ったかのような31日と1日、隅田川公園と上野公園で桜を観賞した。桜に儚さを重ねるのが日本人独特の感性だが、脳梗塞で昨夏入院した俺自身、肉体的にも経済的にも先行きが覚束ない。2011年の東日本大震災と原発事故、翌年の妹の死で、俺は無常観に囚われている。あと何回、桜を見ることができるのだろうか……。そんな感傷に浸っている。

 桜観賞の合間に浅草に泊まり、スカイツリーに初めて足を運ぶ。膠原病と闘っていた妹はスカイツリーに関心を持っていた。退院後、小康状態を保っていたが、開業5日後に召される。母に妹の額入りの写真を渡され、「スカイツリーからの眺めを見せてやってほしい」と頼まれていた。遂に母の願いを叶えた。しかも4月1日は妹の誕生日である。

 「ETV特集 ウクライナ侵攻が変える世界」(NHK・Eテレ)を見た。道傳愛子キャスターがスベトラーナ・アレクシエービッチ(作家),ジャック・アタリ(思想家)、イアン・ブレマー(政治学者)の世界を代表する知性にインタビューし、自由と民主主義をキーワードにソ連崩壊後を読み解く秀逸な内容だった。

 アタリとブレマーの俯瞰の巨視には感嘆させられたが、心に迫ったのはベラルーシ人の父、ウクライナ人の母を持ち、ソ連崩壊時にはモスクワに滞在していたアレクシエービッチの思いである。今回はアレクシエービッチの言葉に絞って紹介したい。ルカシェンコ大統領独裁に抗議する民主化運動の先頭に立ったが、弾圧と健康悪化もあり、現在はドイツで暮らしている。

 アレクシエービッチは<民衆的視座>の方法掄で、独ソ戦、アフガン侵攻、チェルノブイリ原発事故の実相を、兵士、市民、被曝者への聞き取りによって明らかにしていく。何より女性に寄り添うアレクシエービッチは祖母に大きな影響を受けた。

 終戦後、<ソ連軍=英雄、ドイツ軍=憎むべき敵>との〝公式見解〟が教科書に掲載されたが、祖母は<子供たちにパンを配ったドイツ兵もいた>と孫に伝える。アレクシエービッチは情報統制と洗脳を<ロシアは深い昏睡状態に陥っている>と評していた。

 ソ連崩壊時、周囲のみんなが「自由だ!」と叫んでいたが、アレクシエービッチは<自由を知らない人間が収容所を出て自由になることはない。プーチンと周辺の哲学者と宗教家はかつてより悪い収容所を構築した>(要旨)と感じている。併せて国民に警鐘を鳴らさなかった民主派(自身を含め)の力不足を省みていた。本作の最後、道傳キャスターは<この30年の無関心と不作為によって現状に至った>と結んだ。思い出したのは2017年3月の来日時に制作された「アレクシエービッチの旅路~チェルノブイリからフクシマへ」(NHK・BS)である。

 福島訪問を終えたアレクシエービッチは東京外大で講演し、<あなたたちの社会には「抵抗の文化」がありません>と語った。そして若者たちに<孤独でも「人間」であることを丹念に続けるしかない>と提言する。プーチンを批判するのは当然だが、私たち一人一人が自分の周りを変えていくことが、世界を変える第一歩なのだ。
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年金生活3日目~募る寂寥感に苛まれる

2022-03-03 19:12:13 | 独り言
 仕事から離れて3日目、気分はいまひとつだ。勤めていた会社を2004年末に自主退職した時、管理職というそぐわぬ仕事で心を壊される……、そんな危機感を覚えていたから、解放感に浸れた。だが、今回は異なる。寂しさが募っているのだ。コロナ禍で他者と接する機会が減る中、俺にとって職場は、といっても非正規(業務委託)だが、思っていた以上に比重が増していたのかもしれない。

 ジョージ・オーウェルがデストピアに冠した1984年、俺は会社員になった。大卒後3年間、当時流布していなかったひきこもり、ニートとして潜伏中だった。偽悪的に記している<俺は無資格、無能の無芸大食>は完璧な真実だ。消費者金融(サラ金)に手を出したことが両親にばれ、実家に強制送還される寸前、就職先を見つける。偶然入った蕎麦屋で手にしたスポーツ紙に、求人広告が掲載されていた。その日のうちに応募する。

 俺が唯一、偏差値50(つまり標準)をクリア出来る仕事は新聞の校閲だ。物事をきちんと整理出来ないし、不器用極まりなく礼儀や清潔と無縁な俺を我慢して使ってくれた前の会社には感謝しているが、それでも鬱積してしまい、退社して3年ひきこもった。偶然が重なって夕刊紙で仕事をすることになる。

 とっくに東京砂漠で干からびているか、実家に蟄居しているはずが、何とか65歳すぎまで働けたのは悪運と周囲の忍耐のおかげだ。しかも俺は昨夏、脳梗塞で入院しており、健康に不安がある。軽い仕事を探すつもりだが、自分が雇用主なら、俺を採用することは絶対ない。

 俺が従事してきた校閲という仕事はこの40年、大きく様変わりしている。1980年代当初、植字、文選のコンビで職人が原稿を形にしていた。俺が仕事を始めた時は写植(写真植字)にシステムが進化しており、文字の位置を把握したパンチャーが原稿をゲラに仕上げる。陛下の<陛>の横に<陸>があり、パンチャーが間違えると<天皇陸下>になるから大騒動になる。まず原稿通りパンチアウトされているかが肝心で、校閲より校正が第一だった。

 そのうち記者がパソコンで入力した記事がそのままパソコン画面に反映するようになる。原稿が不要になったので校正作業はなくなり、用字用語と事実関係にポイントが移る。<正しい日本語>に拘泥する校閲者は減り、ネット検索で事実をチェックすることが重要になる。システムの変化により、求められる内容は変わったが、そもそも校閲という仕事が絶滅危惧種になっている。校閲部がなくなった地方紙もある。

 校閲といっても、時代や職場によって<文化>は異なる。俺が仕事を始めた時、空気はまさに鉄火場だった。部を仕切っていたAさんは、自分の面かわいさに担当面のみチェックしていると、「てめえの面ばっかり見てるんじゃない」と怒声が飛ぶ。他の職種と同じく、<校閲=共同作業>が俺の心にインプットされた。システムは変わっても、校閲作業に一番重要なのはチームスピリットだと今も確信している。

 おっかないAさんだが、失敗には寛容だった。どれだけ真剣に取り組んでいてもミスは出る。複数の目が通っていても同様だ。Aさんは<人は失敗するもの>という諦念というか人生観に、仕事を通じて到達していたと思う。俺などAさんほど仕事に情熱もなく、知識も欠けているが、校閲という仕事、それに失敗だらけの人生で<謙虚さ>を身につけることが出来た。

 さあ、これからどうしよう。何か別の仕事といっても、俺にはハードルが高そうだ。年金だけでは厳しいので負担にならない仕事を見つけたい。これからも悪運と周りの情けによって生きていくのかな……。
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