弁理士の日々

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退職者医療制度の不思議

2009-04-21 21:34:31 | 歴史・社会
ある日突然、住んでいる杉並区の国民年金課から、配達記録郵便が届きました。

「国民健康保険『退職被保険者証』をお送りします」
ということで、1枚の健康保険被保険者証が同封されていました。

「国民健康保険の保険証には、『国民健康保険被保険者証(サーモン色)』と『国民健康保険退職被保険者証(若草色)』の2種類があります。」ということで、送られてきたのは若草色の保険証です。
いったい何事でしょう。

ペーパーの裏面に「退職者医療制度について」と説明書きがあります。
「1.制度の成り立ち
 退職者医療制度は、会社などを退職し国民健康保険に加入された方の医療費を、加入していた社会保険等が一部負担する制度です。
 退職者は現役時代に加入していた社会保険等の医療給付を受けることが少なかった一方、医療の必要性が高まる退職後は国民健康保険に加入し医療給付を受けます。この制度*は、医療費の増大に伴い財政が圧迫されるようになった国民健康保険と社会保険等との退職者をめぐる費用負担の公平性を図るため昭和59年10月に施行されました。」

上記第2段落の第2文の冒頭「この制度」は、退職者医療制度を指すようです。普通、このような文章だったら、第2文に「この制度」とあれば、当該段落の第1文の中に「この」の相手を探すでしょう。しかし、退職者医療制度について言及するのは前の段落であって、当該段落の第1文には出てきません。そのためにわかりづらい文章になっています。

と文句を言ったところで・・・

私は企業勤務時には組合健康保険に加入しており、企業を退職して特許事務所経営を始めたときに国民健康保険に加入しました。
その私が、退職者医療制度の対象となったので、杉並区がそのことを確認し、新しい保険証を送ってきたというのです。

退職者医療制度の対象となるのは
(1) 退職被保険者(本人)については、①国民健康保険に加入、②65歳未満、③厚生年金等の老齢年金等を受けている等、の3つの項目のすべてに該当する人です。
私は、去年60歳に相成り、年金の給付を受け始めたので、③に該当することとなり、①~③のすべてに該当したというわけです。

そしてここで問題にするのは、
(2) 退職被扶養者(家族)です。この該当人物については、
①国民健康保険に加入、②65歳未満、③退職被保険者本人に扶養されている同一世帯の配偶者もしくは三親等以内の親族のうち、年収が130万円()未満等、の3つの項目のすべてに該当する人です。

私の配偶者は、年収が130万円以上ですが、今までは国民健康保険に加入する私の家族としての保険証を所有していました。国民健康保険の家族については、「年収130万円未満」という制限がないのです。
それが、私が退職被保険者(本人)になったとたん、家族が本人の被扶養者に入るには「年収130万円未満」という制限が付加されました。従って、私の配偶者は退職被扶養者(家族)になり得ません。さて私の配偶者は、どの健康保険に加入できるのでしょうか。

もらった資料を何遍読んでもわかりません。インターネットでもわかりません。そもそも退職者医療制度は各市町村が担当しているらしく、各市町村のホームページの解説文がヒットするばかりです。国全体としての情報に到達できません。

しかたがないので、杉並区の担当部署に電話で聞いてみました。
その結果わかったことは、「私の配偶者は、退職者医療制度の退職被扶養者(家族)とはなり得ないので、今まで通り、国民健康保険の被保険者であり続ける」ということでした。
しかし、国民健康保険の被保険者(本人)は国民健康保険の退職被保険者(本人)に移動しました。本人が不在なのに、被扶養者のみが国民健康保険に残り得るのでしょうか。全くもって不可解です。
そこで、ウィキペディアの国民健康保険で調べてみました。
「被用者保険と異なり、自営業、無職(専業主婦、専業主夫、学生など)、未成年者等も、被保険者となる。
被保険者の属する世帯の世帯主は、保険料(又は国民健康保険税)を納付する義務がある。世帯主が他の医療保険の被保険者(国民健康保険の被保険者ではない)であって、その世帯内に国民健康保険の被保険者がいる場合は、その世帯主を国民健康保険の被保険者である世帯主とみなして保険料または保険税の納付義務者とする。この場合における世帯主を、実務上「擬制世帯主(ぎせいせたいぬし)」または略して「擬主(ぎぬし・ぎしゅ)」という。」

なるほど。国民健康保険には「被扶養者」という概念がないのですね。一方、勤め人が加入している組合健康保険には「被扶養者」の概念があり、年収130万円未満が条件なのでした。国民健康保険の退職者医療制度は、国民健康保険の中にありながら、組合健康保険の被扶養者の概念を持ち込んでいた、ということでしょうか。
私の配偶者は、自営業であって国民健康保険の被保険者であり、一方世帯主は私なので私が保険料を納付している、という関係にあるのですね。私が国民健康保険に加入していようがいまいが関係ないと。

もうひとつ。月々納める保険料の計算が心配です。今までですと、私と家内の保険料を合算して、合算した結果が納付最高限度額を超えていたら、その最高限度額を納めれば足りました。今回、私が退職者医療制度の本人、配偶者が国民健康保険の被保険者と別れたわけですが、今後とも納付額については今までと同じにやってくれるのでしょうね。
心配だから機会をみつけて確認してみましょう。
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