特許明細書の日本語は、原則として句読点(「、」「。」)を用いて構成しています。一方、発明者が執筆し出願人知財部で明細書を完成して持ち込まれる原稿のなかには、コンマ、ピリオド(「,」「.」)を用いたものが時々あります。
聞くところによると、学会誌の原稿は、句読点ではなくコンマピリオドが指定されており、そのため研究者はコンマピリオドで原稿を執筆する習慣があるとのことです。
また、われわれになじみが深い吉藤幸朔著「特許法概説」は、「,」と「。」を用いて表現されています。著者の吉藤氏は特許庁審査官の出身です。
明細書には【0001】から始まる連番の段落番号を付すことになっています。通常、パソコン出願支援ソフトによってこの段落番号を自動的に付与します。私が使っているパソコン出願支援ソフトでは、「。」-改行-「全角空白」がこの順序で出現したときに段落番号を付与するロジックになっています。従って、持ち込まれた原稿がコンマ、ピリオドで記載されていたとき、最低限ピリオドは「。」に修正する必要があり、そうしていました。しかし、コンマ(,)を「、」に変更するまではしていませんでした。
あるとき、以下のような拒絶理由通知を受けました。
「『,』は日本語として適切でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
もちろん、これ単独の拒絶理由通知ではなく、別に特許法第36条第6項第2号を指摘され、併せて上記指摘があったものです。
それにしても、特許庁はそのような考え方をしているということですね。
以後、出願人が明細書を完成して持ち込まれた原稿についても、「,」をすべて「、」に修正して出願明細書とすることにしました。
聞くところによると、学会誌の原稿は、句読点ではなくコンマピリオドが指定されており、そのため研究者はコンマピリオドで原稿を執筆する習慣があるとのことです。
また、われわれになじみが深い吉藤幸朔著「特許法概説」は、「,」と「。」を用いて表現されています。著者の吉藤氏は特許庁審査官の出身です。
明細書には【0001】から始まる連番の段落番号を付すことになっています。通常、パソコン出願支援ソフトによってこの段落番号を自動的に付与します。私が使っているパソコン出願支援ソフトでは、「。」-改行-「全角空白」がこの順序で出現したときに段落番号を付与するロジックになっています。従って、持ち込まれた原稿がコンマ、ピリオドで記載されていたとき、最低限ピリオドは「。」に修正する必要があり、そうしていました。しかし、コンマ(,)を「、」に変更するまではしていませんでした。
あるとき、以下のような拒絶理由通知を受けました。
「『,』は日本語として適切でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
もちろん、これ単独の拒絶理由通知ではなく、別に特許法第36条第6項第2号を指摘され、併せて上記指摘があったものです。
それにしても、特許庁はそのような考え方をしているということですね。
以後、出願人が明細書を完成して持ち込まれた原稿についても、「,」をすべて「、」に修正して出願明細書とすることにしました。
「,」は駄目って、重箱の隅をつつく審査官ですね。少なくとも、特許庁の公式見解では無いと思います。
仮に、私が審査するなら、そんな6項2号は出せません。出願人に無用の反発をさせるだけだし、審判や裁判所も支持しないと思うからです。
文法上の瑕疵であっても、特許を受けようとする発明を特定することが困難にならなければ、6項2号違反には該当しないことは明らかです。せいぜい、発明の特定に影響の無い些細な誤記という扱いになるでしょう。
文法上の些細な瑕疵が駄目なら、業界特有のクレーム表現、「・・・のA装置において、○○を特徴とするA装置」等も厳密には文法的に変なので使用できなくなりかねません。
さらに、学会誌等で「,」が普通に使われてるという事実があれば、日本語表現の一つとして許容されると思います。
他の記載不備は修正して、「,」については6項2号には該当しないと、意見書で反論して終わりで良かったのではないでしょうか。
もっとも、その審査官もその理由で拒絶査定をするつもりではなく、気になったから、ついでに指摘しただけなのかもしれませんが。
横書きの文書では、「,」を用いるのが正式というのを聞いたことがあるように思います。
「,」が日本語として不適切という指摘は、周囲に聞いてみると結構受けたことのある人が多いようです。従って、そのように考える審査官が決して少数ではないようなので、出願する側の予防措置としては「,」を使わない方が安心ですし、指摘を受けたときは素直に従っておくのが得策であるとは思います。
初めてそのような拒絶理由を受けたときはさすがにびっくりしましたが。
判決については気が付きませんでした。
私の手元にある判決で見る限り、確かに最近の判決は「,」を使っていますね。
昔の判決は「、」ですが、「縦書き時代は『、』、横書き時代は『,』」という単純な図式になっているかどうかまでは確認できませんでした。何しろ自宅では縦書き時代の判決を含めてすべて横書きで保有しているので。
7日に出勤したら、特許庁に電話で確認してみましょう。
「(2) 1及び2以外の事項は,「公用文作成の要領」(「公用文改善の趣旨徹底について」昭和27年内閣閣甲第16号依命通知)による。」
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=show&id=1000005544&clc=1000000068&cmc=1000005514&cli=1000005532&cmi=1000005540
とあります。この文により、句読法については「公用文作成の要領」に従うべきというのが政府見解であると解釈できます。
そして「公用文作成の要領」では、
<注>
2. 句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。
事物を列挙するときには「・」(なかてん)を用いることができる。
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=show&id=1000005544&clc=1000000068&cmc=1000005514&cli=1000005532&cmi=1000005540
となっていますね。
特許庁が自ら「,」を使用しないのは勝手だと言えなくもないでしょうが、他者にそれを強制するのならば、まずはこの依命通知や事務次官等会議申合せを撤回させてからにしてほしいものです。
ご参考まで。
出願人側が作成する明細書は公用文に該当しないと思います。
したがって、その通達は、「,」を使用することが日本語として妥当であることの有力な証拠にはなりますが、その通達それ自体が適用されるかのように主張すると、それは違うと言うことに成ると思います。
また、その通達を基準としてしまうと、「.」の方はやはり駄目だと言うことになってしまいます。
ですので、その通達は証拠の一つとして挙げる程度にした方が話がややこしくならないと思います。
ちなみに、ボンゴレさんの
>「,」が日本語として不適切という指摘は、周囲に聞いてみると結構受けたことのある人が多いようです。
という点ですが、そういう経験の有る者は、私の周囲にはあまり居ません。特定の審査官とその弟子たちか、特定の技術分野に限定される話のような気がします。
何れにしても、特許庁の公式見解とは思えません。
そのため、特許庁に確認する時は、審査基準室に、句読点の表記の仕方(「,」、「、」、「.」、「。」)が6項2号違反になるのか否かという確認をした方が良いと思います。
公式見解かと聞いても、違いますと帰ってくるだけではないでしょうか。回答を引き出すなら、汎用性の有る回答を貰った方が良いと思います。
句読点(「,」も句読点の一種なのですね)の使い方を書いた書類を探して見つからなかったのですが、unknownさんのコメントによってたどり着くことができました。
公用文に関する諸通知(一覧)
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=list&id=1000005514&clc=1000000068
の「別紙」3.その他
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=show&id=1000005544&clc=1000000068&cmc=1000005514&cli=1000005532&cmi=1000005540
に「(2) 1及び2以外の事項は,「公用文作成の要領」(「公用文改善の趣旨徹底について」昭和27年内閣閣甲第16号依命通知)による。」と記載され、
上記「公用文に関する諸通知(一覧)」の第3 書き方について
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=show&id=1000005568&clc=1000000068&cmc=1000005514&cli=1000005536&cmi=1000005557
に
<注>2.句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。
と書かれていることを確認しました。
特許庁にヒアリングするのが楽しみです。
これだけではなんなので、追加として「JIS Z8301:2005 規格票の様式及び作成方法」の「付属書G(規定) 文章の書き方,用字,用語,記述符号及び数字」について御紹介しておきます。
この付属書の「G4 記述符号 G4.2 区切り符号」においても、「b) コンマ“,”は,通常,文章中において語句の切れ又は続きを明らかにするために,次のような場合に付ける。」とされています。
この部分は基本的に「公用文作成の要領」を踏襲しているので、こうなるのは当然なのですが、日本語文中におけるカンマの使用が必ずしも不適切とはされていない、ということの例証の一つとは言えるでしょう。
JISの規格票はweb上で無料では見られないかもしれませんが、御参考まで。
「JIS Z8301:2005 規格票の様式及び作成方法」について、以下のサイトで閲覧「のみ」可能であることが分かりました。
http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=12128
このJISの規定によると、「,」のみ可能であり、「、」は規定さえされていないのですね。
お陰様で、「公用文」やJISでどのような規定がされているのかについて勉強することができました。