弁理士の日々

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プライムニュース-陸前高田市長

2011-09-13 20:18:01 | 歴史・社会
津波で町全体が流されてしまった被災地。被災からとうとう半年が経過しました。しかし、ニュースで見ても、流された町の瓦礫は撤去されていますが、町そのものが再建される様子はまったく見受けられません。新聞によると、町に期限付きで再建禁止令が出ているのですが、その期限が延長されているというのです。一体何が起きているのでしょうか。
私は、「国が行うべきことが滞っており、それがために現地の復興が進まないのではないか」という懸念を抱いていました。しかしその実態がなかなかつかめません。

9月5日の「BSフジ プライムニュース」は、陸前高田市長 戸羽太氏、ワタミ株式会社 渡邉美樹氏、前総務大臣 片山善博氏がゲストとして出演し、まさに私が知りたいと思っていた内容について議論がされました。

例えば、陸前高田市において、町の中心部の復興計画を立てるに際し、どこを非居住の緑地とするか、どこを居住地とするか、という区割りを行うためには、何メートル高さの防潮堤が建設されるかが決まっている必要があります。防潮堤は自治体の予算だけでの建設は困難で、国の補助が必要です。従って、国が「何メートル高さの防潮堤建設に補助金を出します」と決めてくれない限り、市の復興青写真作成を開始できないのです。
また、震災前まで住宅地であった地域について、非居住の緑地としあるいは新産業地区とするためには、その地域の多数の地権者から土地を買い上げる必要がありますが、平時の法律でそんなことをやろうとしても途方もない時間がかかってしまいます。ここは特別法を立法して迅速に対応しなければ不可能です。どんな特別法ができるかわからない限り、やはり青写真は作成できません。法律を作るのは国会の仕事です。

ところが、国の基本的スタンスは「現地の自治体から復興計画を出させ、それから法律を作っていく」ということで、順序が逆です。これでは自治体としては復興計画を作ることができないのです。

片山前総務大臣によると、第三次補正予算を審議する政府部内においては、「増税の枠組みができないかぎり復興予算を実現できない」という考え方が多数だったようです。片山氏は「復興は待ったなしだから、増税の枠組みが決まる前でも予算を成立させよう」と主張しましたが、少数意見であって取り上げられることはなかったといいます。

やはり、私が推定していたとおり、被災地で半年経っても復興建設が始まらないのは、国に問題があったのですね。
霞が関は、現行法の枠内でしか行動しません。今回のような大災害に迅速に対応するためには、必要とされる法律を早急に整備し、それによって霞が関を動かすことが必須です。そしてそれができるのが政府であり国会議員です。やはり管内閣はその点で十分に機能できなかったのでしょうね。

さて、野田内閣はどうでしょうか。
プライムニュースを見た直後のテレビで、安住財務大臣が報道ステーションに出ていました。「現地自治体から復興計画を出してもらって、それに対して予算をつける」という主旨の発言をしていました。まさにプライムニュースで「それじゃだめだよ」とクレームが付いた姿勢そのものですね。やはり野田内閣にも期待することはできないのでしょうか。

なお、9月5日のプライムニュースについてはネットで見ることもできます(前編後編)。ただし、2時間の番組を前後編合わせて30分に編集していますから、残念ながら番組を再現したことにはなりません。

今回、ネットで再度見ながらメモした内容を以下に残しておきます。

戸羽氏:管内閣時代は(復興が)ストップしていた。政局の具にされてしまった。なさけない。
渡邉氏:復興のためには2つ必要→法律の特区、前提を与えて予算を与える。
 これを与えないと市はなにもできない。
片山氏:増税プランを作らなければ予算を作らないという考えが政府の多数意見だった。片山氏は4月の段階でも予算を決めましょうと主張したが、勝てなかった。
渡邉氏:被災地には、「もう1回商売したい」という人がいる。陸前高田市で100近い商店が出店してイベントを行った。第2次補正予算で「土地さえ見つければプレハブの仮設店舗を建ててあげる」というのがあるので、今土地を見つけている。
渡邉氏:企業にできることは被災地で雇用を生み出すこと。ワタミが進出しようとしたら、中小企業整備機構は「大企業だからだめ」と(補助金適用を)拒否した。ワタミもボランティアではできない。
戸羽氏:雇用は県・国・市で生み出すことはできない。民間企業にお願いしなければいけない。これから特区ということで税金など面倒見ることが必要。早く特区を実現してほしい。ただし、特区実現以前から始めている人が割を食うような制度では、特区できるまでだれも進出しない。
片山氏:自治体レベルで復興の青写真を描くに際して「こういう支援がある、土地の買い上げもこうする」という方策を国で決めた上で青写真を自由に作ってくれ、という方法がある。別の考え方では、まず青写真を地元で作ってもらってから予算化しよう、というもの。政府内は後者が強く、前者はいたって少数派。その中で市は板挟みとなる。
戸羽氏:「陸前高田市 復興プラン」地図
 「基礎自治体でプランを作りなさい」ということで内々には作っているが、実現可能性が見えないので市民には公表していない。半年かけてプランを作って出しても、政府にバッテンを出されたら(国の予算をつけないと判断されたら)振り出しに戻る。国から担当者が陸前高田市に来ていただいて議論した方が先へ進む。何メートル高さの防潮堤で国から予算をもらえるかが決まらなければ、市街の復興プランを作ることができない。
戸羽氏:被災地には商店主が多い。自宅も商店も流されてしまった。そのような事業主にお金を貸してくれるところはない。
渡邉氏:種々のファンドに対して「被災地への支援とは商売を応援することだ」と声をかけている。
戸羽氏:国のファンドで支援してもらえることはありがたい。ただし、手続が面倒だと被災者には困難がある。
渡邉氏:国の対応として一番良いのは信用保証だと思う。
片山氏:鳥取県知事時代、被災した自宅については300万円の支援を決めた。それが今では国の支援として成立している。問題は事業主だ。ただし、損をした人だけが支援を受けるのでは、無借金で事業をしていた人が支援を受けられないこととなり、不公平になる、という問題がある。

片山善博氏は、管政権の総務大臣としては常に閣内の少数派で意見が採用されなかったようです。むしろ閣外に去ったこれから、マスコミで発言することによって政府を動かすことができるかもしれません。
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