弁理士の日々

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ウクライナ問題

2022-03-14 08:47:34 | 歴史・社会
テレビのニュース番組、時事解説番組では、ウクライナへのロシア軍侵攻問題のオンパレードです。
しかし、戦争の実態については誰も把握できず、専門家といえども想像で話をするばかりです。また、戦場を遠く離れたこの平和な日本の地で、「プーチンは間違っている」と議論することに意味を感じることができません。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まる前の段階では、「プーチンにウクライナ侵攻を思いとどまらせるにはどうしたらいいか」が必要な議論だったでしょう。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってしまった現在、「当事国、当事者の不幸を少しでも減らすにはどうしたらいいか」が必要な議論です。

《ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まる前の段階》
プーチンが戦争に踏み切った最大の理由は、「NATOの東方拡大」にあったように思います。ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアは緩衝地帯を失います。それだけは絶対に許容できない。ウクライナへの軍事侵攻を行ってでも、ウクライナのNATO加盟を阻止したい、というのがプーチンの動機だったのではないか。ウクライナのNATO加盟はプーチンにとってのレッドラインであると。
ウクライナ国民を不幸のどん底に落とさないための対応とは、「ウクライナはNATOに加盟しない」とプーチンに信じさせることではなかったか。
2008年にNATOの東方拡大が図られたとき、ドイツとフランスはウクライナのNATO加盟に反対した一方、アメリカはむしろ推進の考えを持っており、結論は「時期は未定だがいずれウクライナはNATOに加盟する」ということのようでした。
アメリカという国は、リベラルな理想を追い求めるばかりで、それが当事国国民に不幸をもたらすことまでは配慮が及んでいないように思います。
(逆に、「2008年にウクライナが電撃的にNATOに加盟していれば、プーチンのウクライナ侵攻を防げたのではないか」との議論もあるかもしれませんが。)
アメリカは、ウクライナのNATO加盟を後押しすることによってプーチンを刺激する一方、最近のバイデン大統領は「ウクライナに米軍を派遣することはない」と繰り返し宣言し、プーチンの開戦に対する抑止の反対の動きをしていました。

2014年、ウクライナに政変があり、それまでの親ロ政権が倒れて反ロ政権が成立しました。その後、大統領が現在のゼレンスキーに交代しました。
ゼレンスキー大統領は、プーチンの上記レッドラインにどれだけ神経を使ったでしょうか。政治リアリズムに徹するのであれば、真の理想や希望を後ろに置いてでも、「ウクライナはNATOに加盟しない」と表明することにより、ロシア軍事侵攻を思いとどまらせ得たのではないか、と考えたりします。世界的英雄に上り詰めたゼレンスキーは、結果としてはウクライナ国民を不幸に追いやったのではないかと。

《ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってしまった以降》
戦争は始まってしまいました。始まった以上、上記の議論はもう後の祭りです。
ウクライナ軍は善戦しています。ロシア軍は侵攻が頓挫し、甚大な被害を受けている模様です。ウクライナ軍善戦の背後には、アメリカを始めとする西側によるロシア軍情報の供与、対露兵器(対戦車携帯ミサイルや対空携帯ミサイル)の大量かつ迅速な供与が役立っているようです。
しかし、西側による兵器供与は、戦争を終わらす役には立っていないようです。逆に、ロシア軍の被害拡大と戦線の頓挫は、プーチンの激怒を呼んでいます。開戦当初は、できるだけウクライナ国民に被害が及ばないように作戦していたように思いますが、これからはウクライナ国民の殺戮を遠慮することなく、強力な火力でキエフ侵攻を実行しそうな気配です。
そうとすると、西側による兵器供与は、ウクライナ国民を結果としてより不幸にしているのではないでしょうか。

アメリカという国は、ロシア軍の軍事侵攻が始まる前も始まった後も、ウクライナ国民の不幸を最小限にするとのスタンスに立った冷徹なリアリズムで行動するのではなく、結果としてウクライナの不幸を増大しているように見えます。
ウクライナのゼレンスキー大統領も、ロシア軍の軍事侵攻が始まる前も始まった後も、ウクライナ国民の不幸を最小限にするとのスタンスに立った冷徹なリアリズムで行動するのではなく、結果としてウクライナの不幸を増大しているように見えます。

ウクライナ関連のニュースを見るたびに、ロシアに対して怒りを感じるよりも、どうすることもできずに悲しみを感じてしまう、その理由は以上のような認識によるのだと思います。
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