弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

椅子を選ぶ

2007-01-18 19:56:15 | 弁理士
私が特許事務所で執務用に使っている椅子は、イトーキ製のごく普通の肘付き回転椅子です。KZシリーズといい、定価で5万円台でしょうか。開業以来この椅子を使い続け、特に不満があるわけではありません。左下の写真です。
  

ところで、以前、鈴木章著「法律事務所を作る!」(右上写真)を読んだところ、その中に椅子の選び方が載っていました。
「率直にいって、「椅子」というカテゴリーにおいては、国産各社の商品は(それぞれ善戦はしていますが)、遠く欧米のものに及びません。椅子文化の伝統の厚みといますか、つい100年前までタタミにだけ座っていた我々にはちょっと追いつかない「何か」を感じさせるものが、欧米の高級な椅子にはあります。
 そしてその違いは、ひとたび座ってみるや誰にもすぐに体感できるのですから恐ろしいものです。」

本の内容についてはこちらでも読むことができます。

椅子についてのこの記述がずっと気になっていました。
最近、事務所で椅子を買い足す話が出たので、この際私の椅子を買い換えようと思い立ちました。
しかし、どのメーカーの椅子が「国産とはひと味違う欧米の高級な椅子」なのか、情報がありません。ネットでいろいろ調べると、米国ハーマンミラーHermanMiller社のアーロンチェアAeron Chair、ドイツヴィトラVitra社のイプシロンなどは人気があるようです。いずれもワーキングチェアの範疇ですが。また、私が読んだ上記の本の著者である鈴木章さんにメールで問い合わせたところ、ご親切に回答をいただき、「ドイツのウィルクハーンwilkhahn社の製品がよい」と教えていただきました。
そこで、ハーマンミラーとヴィトラの製品を置いてあるというhhstyle原宿本店、ウィルクハーンを置いている秋葉原のヤマギワリビナ本館、ウィルクハーンと国産のコクヨ製品の座り比べができるコクヨショールーム、現在私が使っている椅子のメーカーであるイトーキショールームを行脚し、椅子の座り比べが始まりました。

いやいや、各椅子ごとに個性が違うこと、びっくりしました。単純に「良い椅子、悪い椅子」と序列することなど不可能です。それぞれが個性を主張し、座り比べていくうちにわけが分からなくなります。どうも「ひとたび座ってみるや誰にもすぐに体感できる」というわけにはいかないようです。

種々の椅子を座り比べた結果、最も大きな相違点あるいは特徴点が見いだされるのは、「背板で腰部をどのようにサポートするかしないか」という点であるような印象を受けました。
普段の自分自身の執務姿勢を改めて観察してみると、タッチタイプで高速タイピングを行うのであれば背筋を伸ばした姿勢を取ります。骨盤の配置を見ると、デレッとしているときは骨盤が後に傾き、背筋を伸ばすと骨盤が起きあがります。骨盤が起きあがった状態で長時間保つためには、座に深く座り、ベルトの下あたりで腰部を背板に押し付け、骨盤を保持しています。書類を読む際も同じような姿勢です。このとき、腰部が背板で強力にサポートされています。

アーロンチェア、イプシロン、ウィルクハーンのモダスModusなどでは、背板がメッシュである点で共通しています。そして背板がメッシュであると、腰部を強力にサポートすることはできません。メッシュの特徴は、「背中全体をふんわりと包み込む」という点にあるようです。
どうも最近の好評な椅子は、「背中をどっかと背板にあずけて執務する」スタイルを重要視しているようです。私はそのような姿勢で執務しません。その点が、好評な椅子に私が違和感を覚える原因かもしれません。
アーロンチェアには「ボスチャーフィット」という機能があり、メッシュの後に腰を支えるための機構が配置されていますが、モダスにはそのような機能がなかったと記憶しています。

国産各社の高機能の椅子は、「ランバーサポート」と呼んで腰部のサポート状態を調整できるようにしているものが多いです。

そこで、背板による腰部の支持状況を中心に、各銘柄の椅子の印象をまとめてみました。私が普段使っているイトーキのKZチェアを基準としています。

ハーマンミラーのアーロンチェア
第一印象に残る特徴は、「座ると同時に座板の後部が沈み込む」という点です。このような特徴は他の椅子には見られません。私自身はこのような機能を必要としないようです。
腰部支持として、ポスチャーフィットがとりたてて優れているとの印象は持てませんでした。
ヘッドレストが付かない点は減点です。

ヴィトラのイプシロン
私には座板が大きすぎました。座板を限界までスライドしても、深く腰を下ろすと足がつかえてしまいます。

ヴィトラのヘッドラインHeadLine
腰部支持については、特に問題ありません。
ヘッドラインの特徴は座板がフラットである点です。これ以外の大部分の椅子は、座板のおしりの部位が若干へ込んでいます。
背筋を伸ばして腰部を背板に押し付けると、その反力でおしりが前に押されます。ヘッドラインは座板がフラットなので、おしりが前に押し出されるような不安定感がありました。
この椅子の特徴は、リクライニングしても顔が前を向き続けるように背板が変形する点です。しかしその結果、リクライニングしたときに胃のあたりが屈曲して圧迫される気がします。私がリクライニングする目的はリラックスしたり居眠りすることですから、私のニーズからするとマイナスです。

ウィルクハーンのモダス
背板メッシュで腰部の支持が不十分でした。
ウィルクハーンにソリスSolisという銘柄があり、背板はメッシュではありません。ただし強い印象は残りませんでした。

コクヨの椅子:
上位機種中のお勧めであるAGATA/A
説明では、腰部支持に工夫が凝らされているようです。座った印象では、やや腰部支持力が心許ないように感じられました。
コクヨの他の製品のうち、Largoはランバーサポートを売りにしていますが、逆に腰部支持の自己主張が強すぎるようです。
フィロソフィーPhilosophyは、空気調整式のランバーサポートを具備しています。しかし空気枕で腰部支持を行うというのは、強く腰部を押し付けたときに逃げがあり、心許なさを感じます。

イトーキの椅子:
LEViNO
従来のメイン機種です。
ただ1点気になるのは、ランバーサポートの自己主張が強すぎる点です。
Spina
新しいメイン機種です。
腰を浅くかけても、背板が腰部によってくる、という点が売りです。一方、私のように深く腰掛けて腰部を背板に押し付けると、逆に背板が後方に逃げていきます。この点はマイナスです。腰部押し付け力を調整で変更することができません。なぜこのような設定にしたのか理解に苦しみます。
腰部支持という点で、LEViNOは自己主張が強すぎ、Spinaは逆に弱すぎます(私にとって)。ちょうど良い具合の椅子がなかったのが残念でした。

まとめ
定価で10万円~20万円であり、世の中で好評な椅子を中心に見て回りました。しかし現時点での結論は、「定価で5万円台のイトーキKZチェアと比較して明らかに良好な椅子というのが見つからなかった」ということです。
私の椅子選びの着眼点に何か問題があるのかどうか、ご意見をいただけると有り難いです。
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10 コメント

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Unknown (KAZZ)
2007-01-23 01:55:21
はじめまして。
検索の通りすがりにたまたま目に留まったものです。
10~20万円とは豪勢な選択範囲で羨ましいかぎり。私もこのところいろいろ座ってはみましたが、ごちゃごちゃ設定が多く、煮詰めないと真価を発揮できない椅子は、そういうのが好きな方には楽しげではあるが、いちいちうっとおしい気がしました。そういう視点であれば、バロン辺り良いのかとも思いましたが予算届かずです。
さてレビーノですが、私も職場で使っております。背中のアームが飾りとしてしっくりきすぎていて、カチコチぐいぐいするとランバー調整できるとは気付かず、かなりハードな設定で長期間使っていたりはしましたが、調整してみても、依然としてランバーサポートの自己主張が強すぎるような感じがします。
別部署で利用しているハイバックタイプでは、少しマシな感じでしたので、多少の予算をけちってローバックにしたのを後悔していたりします。そちらはどのタイプをご利用ですか?
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レビーノチェア (ボンゴレ)
2007-01-23 09:26:54
KAZZさん、コメントありがとうございます。
私が使っているのは、上の写真にあるイトーキのKZタイプで、定価で5万円台です。
KAZZさんの職場で使われているレビーノは、定価で12~3万円ですね(ハイバック)。ランバーサポートのレバーは、確かに飾りのように見えますね。また、調整して最も弱くしても、まだランバーサポートが強すぎるようです。せっかく調整機能を付加したのに有効ではないと感じました。
ショールームまわりに疲れてしまい、今はKZで我慢しています。しばらくしたらまた座り比べに出かけてみようと思っています。
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Unknown (KAZZ)
2007-01-24 02:31:03
ボンゴレさん、お返事ありがとうございます。
すいません、論旨が明瞭ではありませんでした。LEViNOが「従来のメイン機種です。」とあり、現在はKZタイプを利用しているとの所が気になり、コメントいたしました。
もしその理由が「KZタイプはLEViNOよりマシ」であったのならば、そのLEViNOはどのタイプであったのだろうかと。あるいは案外、KZも良いものなのかなと。

高級ブランド輸入物があうかどうかは、体型や執務姿勢、レイアウトにもよるだろうと思っています。5~10万程度で自分に合う椅子が転がっていないものかと彷徨っていますが、なかなか無い。実際座ったなかでは、意外にもDUORESTの類がいい塩梅なのですが、デザインが微妙すぎて躊躇しています。
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レビーノ (ボンゴレ)
2007-01-24 10:24:34
私の方こそ書き方があいまいでした。
レビーノを「従来のメイン機種」と書いたのは、私の職場でのメイン機種ということではなく、イトーキが販売する椅子の中でのメイン機種という意味でした。
私の職場(といっても7年前に開設した個人事務所ですが)は最初からKZオンリーです。

また良い情報を入手されましたらぜひ教えてください。
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Unknown (椅子おたく)
2007-03-08 13:26:03
こんにちは。
いろんなチェアの解説、とても参考になります。私もリビングで使う椅子をがんばって探しております。そこで私が第一候補にしているのがレカロのオフィスチェアです。カーシートで有名ですが、さすがに座ることにかけては一級品で、国産品とは次元の異なるレベルを感じました。ご参考になれば幸いです。
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椅子選び (ボンゴレ)
2007-03-08 17:26:58
椅子おたくさん、コメントありがとうございます。
レカロですね。覚えておきます。
オフィスチェアの展示場があれば座りに行くのですが、ホームページで見る限りは見つかりませんでした。
首都圏で試着できる場所をご存じでしたら教えてください。
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Unknown (椅子おたく)
2007-03-09 15:45:37
こんにちは。レカロのホームページでは、オートバックスなどカーシートの販売店しか書いてないですね。私が試したのは、愛知県稲沢市のアピタというデパートなのです。こんな片田舎にあるのですから首都圏にはきっといくつもあると思うのですが今のところちょっと分からないです。すみません。

ところで、レカロについて思うところをもう少し。
一般のオフィスチェアは、リクライニングを大変重視しているように思います。しかし、私が考えるに、リクライニング機能は不要と思うし、それがついてるとかえって腰に悪い気がするのです。
さてレカロですが、元々カーシートが本業です。運転中に背もたれが動くようなことがあっては大変です。レカロオフィスも、さすがに剛性感は抜群で微塵も動きません(ダイヤルで角度調整することは出来ます)。では、休憩のときなどどうやってリラックスするのか??このためにロッキング機能がついています。背もたれと座面が一体となったまま揺り椅子になるのです。これがまた非常に気持ちがよいのです。

今週末東京に行くので、本文にも出てきたヤマギワリビナで、レカロと同じドイツのウィルクハーンなど試して最終的に決めようと思ってます。
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レカロ (ボンゴレ)
2007-03-09 19:59:30
椅子おたくさん、ありがとうございます。
レカロのチェアは通常のオフィスチェアとコンセプトが全く異なるのですね。一度どこかで探して座ってみましょう。
ウィルクハーンとの比較結果など、わかったら教えてください。
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比較レポート (椅子おたく)
2007-03-11 23:59:09
こんにちは。
ヤマギワリビナに行ってきました。セダスやアーロンもあったのですが、ウィルクハーンが一番良いように思いました。

まず、メッシュ椅子に関しては私も同様に話にならないと思いました。
ウィルクハーンのソリスとネオスにじっくり座ってみました。ボンゴレさんの印象には残らなかったということなのですが、私には腰部の支持は十分なように思えたのです。むしろ、少し強すぎるとさえ感じました。とすると、ボンゴレさんは相当に強い腰部支持を求めておられると考えられます。
さて、レカロですが、レカロはエアランバーサポートを採用しています。コクヨのエアは心許なかったということなのですが、私がレカロを試した際には心許なさは毛頭感じず実に心地よいものに感じました。これがどれだけボンゴレさんのお役に立てるのか、やはり実際座ってもらわないと難しいですね。

リクライニング機能について。ウィルクハーンの、オートシンクロ機構とかいうリクライニングは大変上質に感じ、これなら使えると思いました。ただ、先日も触れたリクライニング機能がついてるがための心許なさ。すなわち、リクライニングを固定した状態でも背もたれが若干がたついてしまう。この点でも国産よりは良いのですが、レカロのように微動だにしない状態にはちょっと及びません。
ということで、私の中ではやはりレカロ優勢ではあるのですが、インテリア性も考えたりしてまだまだ迷い中です。

いつか、レカロオフィスを試座できたらぜひ感想を教えてください。
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比較レポート (ボンゴレ)
2007-03-12 13:04:59
椅子おたくさん、試乗ポートをありがとうございます。
ウィルクハーンのソリスについては、それほどしっかりと試乗しなかったというのが実状です。今度座り比べをするときには、印象に残るようにきちんと試乗してこようと思います。
レカロのオフィスチェアについては、東急ハンズの通販などに出ていますので、きっとどこかで試乗が可能なのだと思います。見つけたら試乗した上で、またこの場でレポートします。
どうもありがとうございました。
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