弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

1号機海水注入の中断

2011-05-22 17:23:28 | サイエンス・パソコン
《1号機の圧力容器への海水注入開始時の経緯》
海水注入が3月12日午後7時4分に始まり、同7時25分に注水を一時中断、同8時20分に注水が再開されたという経緯があるようです。
なぜ注水を一時中断したのか、また、午後7時4分の海水注入開始はどのような経緯だったのか、という点についてマスコミを賑わしているようです。私は5月20日から旅行に出かけ、ネット接続が困難な場所にいたものですからついさっき知りました。

私自身は、「もっと早く、少なくとも3月12日の朝には海水注入を開始していて欲しかった」と思っているので、それより半日ほど遅く始まったことが残念ではありますが、その後に1時間ほど中断したことは半日遅れたことに比較したら小さな事項です。それが、政局に影響するような事象として捕らえられているようです。

《1号機のベントが遅れたことの影響》
20日の夜にテレビを見ていたら、専門家が「1号機のベントがもっと早く行われていたら、1号機の水素爆発はなかった」という趣旨の発言をしていました。
私は専門家でないのでわからないのですが、全電源停止で排気系の送風機が全停止している中で、格納容器内の全圧が上昇するとともに水素ガスの比率が高くなっている状況で、ベントしたら水素ガスは原子炉建屋の上方へと流れていき、結局は水素爆発せざるを得なかったのではないか、という図式で理解しています。
たとえベントの時期が早かったとしても、ベント状態を継続せざるを得ず、格納容器内の水素濃度が高まった時点で結局は水素爆発に至ったのではないか、と理解しているのです。
はたして実態はどうだったのでしょうか。

《2、3号機》
3月12日における1号機で起きた諸々の事象は諸々の経緯に基づいて起こったとして、13~15日における2、3号機で起きた事象はなぜ防ぐことができなかったのか、その点は3月12日における経緯とは無関係に起こっています。むしろ、1号機の経験を生かして3号機の原子炉建屋水素爆発、2号機の格納容器爆発を防ぐことができなかったのか、そちらの方が残念ですし、しっかりと検証して欲しいところです。

p.s. 5/23
1号機の海水注入が一時中断となった経緯については、政府内部で混迷を極めています。
最初は、原子力安全委員長の斑目春樹氏が海水注入による再臨界の危険を主張したからだとの政府発表があり、班目氏がこの発表に激怒して政府にねじ込み、政府はすでにした発表の中味を修正するに至るという体たらくです。
3月11日の政府部内の会合における「言った、言わない」の話ですから、打合せメモを読み返せば一件落着だろう、と普通なら考えますが、ここへ来て「議事録は存在しない」ことが明らかになりました(「海水注入問題めぐる議事録はない」福山官房副長官~産経新聞 5月23日(月)12時37分配信)。
国家の一大事に対して政府が緊急に対応を協議するに際し、誰も発言メモを取っていないというのはあまりにも杜撰です。後の責任を回避するために意図的にメモを取っていなかったのだとしたら、政府首脳として姑息すぎます。
ただし、発言メモが存在しないことに私はさほど驚きませんでした。東電社長が病気療養で東電の会長がピンチヒッターに立ったとき、会長が「政府との連絡会議の議事録をオープンにしたい」と会見で述べたのに対し、「連絡会議の議事録など存在しない」と政府側が発言したのを覚えていたからです。

ところで、1号機海水注入中断がこのように大騒動になった源は、5月20日に東電が記者会見で明らかにしたことから始まったようです(<福島第1原発>海水注入55分間中断…1号機~毎日新聞 5月21日(土)1時23分配信)。また、震災翌日の原子炉海水注入 首相の一言で1時間中断~産経新聞 5月21日(土)1時6分配信によると、『3月12日に東電は原子炉への海水注入を開始したにもかかわらず菅直人首相が「聞いていない」と激怒したとの情報が入り、約1時間中断したことが20日、政界関係者らの話で分かった。』とあり、また安倍晋三元首相は20日付のメールマガジンで「『海水注入の指示』は全くのでっち上げ」と指摘したそうです。

東電はなぜ、このような話を今になって会見で公表したのでしょうか。また安倍元首相をはじめとする政界関係者は、なぜ「管首相の激怒が原因」というストーリーを述べるに至ったのでしょうか。
私は、東電の陰謀ではないかと疑い始めました。
政府の関係閣僚が取りまとめた賠償枠組み案(閣議決定ではない!)では、「発送分離」の話など一切なかったのに、管首相は唐突にそのような方向もあり得ると発言しました。これに対して東電が、首相を困らせようと画策して行っているのではないか、という推測です。
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