<2040> 大和の花 (281) ガマ (蒲) ガマ科 ガマ属
ガマ科はガマ属1属のみで、日本にはガマ(蒲)、コガマ(小蒲)、ヒメガマ(姫蒲)の3種が見られる。3種とも雌雄同株で、茎の先に雄花穂がつき、その下側に円柱形の雌花穂がつく特徴がある。3種はこの雄花穂と雌花穂の形やつき方によって分類されている。では、ガマから見てみよう。
ガマは全国各地の浅い池や沼に生え、湿地などにも群生する多年草で、溜池や湿地の多い大和(奈良県)ではよく見かけられる。茎は1メートルから2メートルに直立し、葉は剣状で、長さは1メートルほど、基部は鞘状になって茎を包む。花期は6月から8月ごろで、茎の先に円柱形の雌花穂がつき、その穂の上に接して雄花穂がつく。
雌花穂は緑褐色から褐色になり、ガマの雌花穂は3種の中で最も大きく、長さは10センチから20センチになる。雄花穂は細く10センチ前後の長さで、黄色の花粉を出す。この花粉は漢名によって蒲黄(ほおう)と呼ばれ、止血に効能があるとされる。雌花穂は最初直径数ミリほどであるが、果期には2センチほどと太いソウセージ様の形になり、秋には白い穂綿を見せる。
ガマは古くから見える植物で、『古事記』の神話にサメによって皮を剥がされた因幡の白兎が大国主神の助言によってガマの花粉蒲黄をもって傷を癒し治したという插話が見える。大昔からガマの花粉は止血に用いられ、薬用植物としてあったことをこの插話は物語っている。
また、若葉は食用に、成長した茎や葉は蓆や簾に、穂綿は寝具に用いられ、蒲団の名はこれによって生まれた。今は雑草然と見え、活け花の花材くらいにしか活用されないが、イネ科のアシやススキと同じく、昔は生活に密着した有用植物の1つだった。 写真は群生するガマ(左)と穂綿が露出し始めた蒲の穂群(大和郡山市と奈良市の郊外)。 蒲の池遠き昔もかくありや
<2041> 大和の花 (282) ヒメガマ (姫蒲) ガマ科 ガマ属
ガマの一種の多年草で、ガマと同じく浅い池や沼などに群生し、湿地でも見かける。茎の高さは1.5メートルから2メートルとほぼガマに等しいが、葉がガマより細いので、すらっとした感じを受ける。花期は6月から8月ごろで、雌雄同株の花は茎頂につき、下側に雌花穂、上側に雄花穂がつく。これはガマと同じであるが、ヒメガマは雌花穂と雄花穂が離れてつくので、接する他種との見分けになる。花穂が細身であるのも特徴。
日本全土に分布し、溜池の多い大和(奈良県)では、ガマと同様各地で見られるが、ガマほど多くはない。なお、ガマ類は花粉に止血の効能があり、これを漢方では蒲黄(ほおう)と言い、『古事記』にも登場することは先のガマの項で触れた。3種の蒲黄に薬効の違いはほとんどないが、ヒメガマの蒲黄は鮮黄色で、無味無臭、微細な粉末状であり用いやすいためか、漢方ではヒメガマの蒲黄を用いるという。 写真は雌雄の花穂が離れてつき、全体的に細身のヒメガマ(いずれも奈良市内)。 夏雲に照らされ遠き日を駈ける
<2042> 大和の花 (283) コガマ (小蒲) ガマ科 ガマ属
ガマやヒメガマと同じく、浅い池や沼、または溝や湿地に群生して生える多年草で、本州、四国、九州に分布し、大和(奈良県)では奈良盆地の北中部で多く見られる。ガマやヒメガマと混生していることもあり、「休耕田や放棄水田の増加に伴って増加傾向にあるが、土地造成や再耕作による自生地の消失も多い」との見解により希少種にあげられている。
雌雄同株で、雌雄の花穂が密着しているガマと同じタイプであるが、ガマより小さく、草丈は大きいもので1.5メートルほど、花穂も短く、比較すれば、全体に小振りで、その違いはわかる。写真は休耕田の湿地に群生するコガマ(奈良市東部)。
夏草や齢の塔に雲の峰
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます