大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年12月29日 | 植物

<2911>  大和の花 (968) ヤマブキ (山吹)                                       バラ科 ヤマブキ属

          

  山地に自生し、ことに谷筋や川岸の崖地などやや湿ったところに多い落葉低木。叢生して高さが1、2メートルになる。新枝は緑色で、稜があり、しなやかで、後に褐色になる。葉は長さが4センチから8センチの長卵形で、先は細長く尖り、脈がはっきり見え、縁には重鋸歯がある。

 花期は4月から6月ごろで、新しい側枝の先に鮮黄色の5弁花を1個ずつつける。花は直径3センチから5センチほど、花弁は倒卵形から広倒卵形で、花弁の先は少し凹む。萼片5個は果期にも残り、痩果の実を守る。ヤマブキ(山吹)の名には、枝がしなやかで、風に吹かれて揺れやすく、山振から山吹になったなど諸説がある。

 北海道南部、本州、四国、九州に分布し、国外では中国に見られるという。大和(奈良県)では山地林縁や谷川沿いなどで普通に見られる。吉野川の上流に当たる川上村は昔からヤマブキの名所として知られ、松尾芭蕉が当地西河で詠んだ「ほろほろと山吹ちるか滝の音」の句に因み、村では村の花に指定しているほどである。

 『万葉集』の18首に見られる万葉植物で、ほとんどが花に寄せて詠まれている。大伴家持が好みだったようで、自邸の庭に植えたヤマブキを詠んだ歌が見える。ヤマブキには一重のほか八重咲きと白花の品種があるが、自生のものはほとんどが一重で、植えられたものに八重のものが多く、白花は別種。『万葉集』に詠まれているものはすべて一重のものと考えられる。

 なお、ヤマブキは花の観賞のほか、葉や花を利尿薬とし、枝木の白く太い髄はニワトコ(庭常)の代用として顕微鏡の実験などに用いられる。 写真は左から渓谷の崖地に花枝を垂れ下げる個体(川上村中奥)。風に揺れる花枝、一重の花のアップ(ともに黒滝村)。境内の庭に植えられ、花を咲かせる重弁のヤエヤマブキ(八重山吹・奈良市の般若寺)。 木枯らしや何処に果てて終はるのか

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿