<3153> 大和の花 (1100) テイカカズラ (定家葛) キョウチクトウ科 テイカカズラ属
つる性の常緑木本で、気根によって他の樹木や岩などに這い上がる。葉は長さが3センチから7センチの楕円形で、縁に鋸歯はなく、革質で、表面には光沢があり、ごく短い柄を有し、対生する。地を這うつるにつく葉は小形で、波状の鋸歯が見られ、斑が入る。
花期は5月から6月ごろで、枝先や葉腋に集散花序を出し、直径2、3センチの白い芳香のある風車形の花をつける。実は長さが15センチから25センチの紐状の袋果で、二股になってぶら下がる。種子は長さが1.3センチほどの線形で、先に長く白い冠毛がつく。
テイカカズラ(定家葛)の名は、中世の歌人藤原定家に因むもので、定家が後白河天皇の皇女式子内親王への恋情により死後もカズラになって彼女の墓にとりつくという謡曲「定家」に由来するといわれる。マサキノカズラ、チョウジカズラの別名でも知られ、『古事記』の天の岩屋戸の神話に見える「天のまさき」に、また、『万葉集』の「つた」にテイカカズラの説がある。
本州の秋田県以南、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島に見られるという。大和(奈良県)では全域で普通に見られ、白い芳香のある風車形の花は陶芸家富本憲吉が好んで描き、憲吉の出身地安堵町では町花に指定している。
なお、薬用植物としても絡石(らくせき)の生薬名で知られ、茎葉を煎じて解熱に用いる。別種に葉裏に毛が生えるケテイカカズラ(毛定家葛)がある。 写真はテイカカズラ。花と実。 秋茄子のどこか人生思はする
<3154> 大和の花 (1101) ケテイカカズラ (毛定家葛) キョウチクトウ科 テイカカズラ属
つる性の常緑木本のテイカカズラの一種で、テイカカズラに似て、気根によって他の樹木や岩などに取りついて伸び上がる。葉は長さが4センチから8センチの楕円形に近く、地を這う枝の葉には斑が入り、這い上がる枝につく葉は鋸歯もなく、斑も入らない。
花期は5月から6月ごろで、花期もテイカカズラとほぼ同じで、花も白色の風車形で似るが、葉の裏面や花柄、若い枝などに毛が生える特徴があり、判別点にあげられる。実も紐状の袋果で似る。
本州の近畿地方以西、四国、九州、沖縄に分布し、国外では朝鮮半島、中国に見られるという。大和(奈良県)では北部地域に限定的に見られる、分布の状況からケテイカカズラはテイカカズラより温暖な地方の植生で、どちらかと言えば、テイカカズラは山地、ケテイカカズラは人里近くに見られる傾向がある。 写真はケテイカカズラ(奈良市郊外。植栽起源かも知れない)。
夕立の後の空中烏飛ぶ