<1030> 夏越しの大祓い
老いの身が 茅の輪をくぐる 通りゃんせ
今日は六月の尽日、今年の半分が無事に過ごせたことに感謝し、残りの半分を無事に過ごせるように願って行なわれる夏越(なご)しの大祓いの日で、各地の神社では穢れを祓う神事と厄除けの茅の輪くぐりが行なわれた。この行事は恒例になっていて、大和でも多く見られる。今日は磯城郡田原本町蔵堂(くらどう)の村屋坐弥冨比売神社(むらやにいますみふつひめじんじゃ)でも行なわれるというので出かけてみた。
六月三十日の夏越しの大祓いは十二月三十一日の年越しの大祓いとセットになっている厄除け神事の一つで、大宝元年(七〇一年)に制定された大宝律令によって定められた宮中の年中行事として始められ、夏越しの大祓いは六月(みなつき)祓いとも呼ばれ、茅で作った茅の輪くぐりをして穢れを払うのが慣わしとして見られ、夏の風物詩になっている。
水無月のなごしの祓する人はちとせの命のぶといふなり (『拾遺和歌集』・平安時代)
村屋坐弥冨比売神社の夏越しの大祓いは午後四時から四隅に忌竹を立て、周囲に四手縄を張って結界とした拝殿前の庭で行なわれ、まず、神主を先頭に氏子や参拝者が正面に作られた直径一.五メートルほどの茅の輪をくぐって結界内に入り大祓いは始められた。
この神社の大祓いは、茅の輪くぐりで穢れを払った後、配られた紙の人形に三回息を吹きかけて戻し、次に四手をつけたチガヤをもらって体に触れるように左右に振って、これも戻し、最後に麻に見立てた紙切れを手渡され、それを自分の体に振りかけるように散らして穢れを落とし、約一時間ほどで大祓いは終了した。
大祓いの神事が終わると、結界の四手縄が神官によって切られ、参加者の穢れを払った茅の輪や紙の人形、四手のついたチガヤ、麻に見立てた紙片などが参拝者全員によって神社の裏を流れる初瀬川(大和川)に運ばれ、橋の上からそれらを投げ落して流した。
この神社の地は、壬申の乱のとき、天智天皇の近江軍を大海人皇子(後の天武天皇)軍が迎え撃ったとされるところで、官道の中ツ道が通っていた場所に当たり、この夏越しの大祓いの行事がその当時から始められたことが思われる。また、神社の境内には平野部では珍しいイチイガシの巨樹が見られ、社叢が奈良県の天然記念物に指定されていることとこの大祓いの行事に何か重なるようなところがうかがえる。
写真は左から茅の輪をくぐる参拝者。大祓いの神事に参加した人たち。参拝者の穢れを払って戻されたチガヤ。茅の輪などを川へ流しに行く人々。橋から初瀬川(大和川)に茅の輪などを投げ落して流す人たち。
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