大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年11月20日 | 植物

<2153> 大和の花 (374) ヤマブドウ (山葡萄)                                                ブドウ科 ブドウ属

           

 山地の林縁や沢沿いなどに生える落葉つる性の木本で、他物に巻きひげを絡めてよじのぼって広がる。樹皮は濃褐色で、節ぐれ立ち、縦に長く裂けて剥がれる。葉は長さ10センチから30センチほどの5角状円心形で、普通、3浅裂し、縁には鋭い鋸歯がある。基部は深い心形で、20センチほどの葉柄を有し、互生する。

 花期は6月から7月ごろで、葉と対生して長さが20センチほどの円錐花序に黄緑色の小花を多数つける。雌雄異株で、雄株の花では雄しべの機能しか発揮されず、雄花の雄しべが長い特徴がある。雌株の花では雌しべの機能しか展開されず、両性花が展開し、雄しべは短く、不能で、5個の花弁は開花と同時に脱落する。

 実は液果で、直径が1センチ足らずの球形になり、ブドウの房状に集まってつく。秋になると紫黒色に熟し、粉白色になる。実は完全に熟すと美味で、生食するほか果実酒にしたり、ジュースやジャムなどに用いる。薬用としては疲労回復によいとされている。

 北海道、本州、四国に分布し、南千島、サハリン、アムール、鬱稜島などにも見られるという。大和(奈良県)では吉野の標高1000メートル以上の山中で見かけるが、産地が限られ、個体数も少ないとしてレッドリストの希少種にあげられている。 写真はヤマブドウ。左から若葉に対生してつく花序。円錐状の花序の花。花序につく小花のアップ(雄しべの短い雌花序)。紅葉の中で熟した実。  真っ先に足の冷えあり冬来たる

<2154> 大和の花 (375) サンカクヅル (三角蔓)                                              ブドウ科 ブドウ属 

                       

 山地の林縁などに生える落葉つる性の木本で、他の木々に絡んで伸び上がる。葉は長さが4センチから9センチの三角状から三角状卵形で、この名がある。葉の縁には歯牙状の浅い鋸歯があり、基部は心形。葉の表面は無毛で、裏面の脈上には短毛が生え、長い葉柄を有し、互生する。

 花期は5月から6月ごろ、雌雄異株で、雄株の花では雄しべの機能しか発揮されず、雌株の花では雌しべの機能しか発揮されないのはヤマブドウと同じく、葉と対生して長さ5センチから9センチほどの円錐花序を出すのもヤマブドウと同様である。花序には黄緑色の小花が多数つく。全体的にはアマヅル(甘蔓)によく似るがサンカクヅルでは葉の先端が細く尖る。実は液果で直径7ミリほどの球形で、黒く熟し光沢を帯びて、ヤマブドウより若干小さく、果序に集まりつく。甘みがあり食べられる。

 本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島から中国に見られる。ギョウジャノミズの別名を持つが、これは修行する行者がサンカクヅルのつるを切ってこの樹液によって喉の乾きを凌いだという謂われによるという。 写真はサンカクヅルの実(上北山村の山中、標高900メートル付近)。花の写真なし。 列島に冬の来る報笹さやぐ

<2155> 大和の花 (376) ノブドウ (野葡萄)                                                   ブドウ科 ノブドウ属

                

 山野の林縁や草叢など至るところに生える落葉つる性の木本で、葉と対生して出る2分岐する巻きひげによって他物に絡んで伸びる。茎は暗灰褐色で、節の部分が膨らむ。茎葉は毎年枯れるが、基部は木質化して残る。葉は長さが10センチ前後の円形に近く、3裂から5裂して、個体によって変化が見られ、葉だけを見ると、別種に思える個体にも出会う。葉の基部は心形で柄があり、互生する。

 花期は7月から8月ごろで、葉と対生して集散花序を出し、黄緑色の小さな花を多数つける。花弁と雄しべは5個、雌しべは1個で、花を形成する。実はほぼ球形の液果で、直径数ミリ程度、碧色や紫色に赤みの加わったものなど変化に富み美しいが、花の時期にブドウタマバエなどが雌しべの子房に産卵し、実の中で卵が孵り、実の中に幼虫が寄生し、虫えいの出来ることが多く、まともな実がない個体も見られる。

  実は食べられないので、イシブドウ(石葡萄)、イヌブドウ(犬葡萄)、ウシブドウ(牛葡萄)、ドクブドウ(毒葡萄)などの地方名が見られるが、春先の若葉を食べる地方もある。また、漢名は蛇葡萄(じゃぶどう)で、漢方では根を薬用とし、乾燥したものを煎じて服用すれば関節痛によく、煎じた汁で洗眼すれば目の充血に効くという。全国的に分布し、アジアの北東部一帯にも自生すると言われ、大和(奈良県)ではそこここで見られる。 写真はノブドウの花と色とりどりの実、葉の深裂が見られる個体。   行き交へる人みな冬を纏ひけり

 

 

 

 

 

 


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