<3610> 奈良県のレッドデータブックの花たち(146) シコクフクジュソウ(四国福寿草) キンポウゲ科
[学名] Adonis shikokuensis
[奈良県のカテゴリー] 絶滅危惧種(旧絶滅寸前種)
[特徴] 落葉樹林の林床や山畑の畦などに生える多年草で、群生することが多い。太い黒褐色の根茎を有し、多数のひげ根を束生する。地上茎も太く、高さ20センチ前後になる。柄のある葉は羽状複葉で、細かく裂け、軟らかい。
花期は2~4月で、茎頂に1花をつける。花は直径3~4センチで、内側が光沢のある黄金色の花弁が太陽に向かいパラボラアンテナのような形に開く。早春に花開くスプリング・エフェメラル(春の妖精)として知られ、太陽光を求める向日性の強い草花で。日が当たると花を開き、夜や雨の日には花弁を閉じ、萼片が花芯を守る働きをする。
奈良県の吉野地方に自生分布するフクジュソウは、最近、葉の裏面が無毛のシコクフクジュソウであるという見解により、フクジュソウとは別種として扱われるようになったが、一般には普通のフクジュソウとして見られている。全草に有毒物質を含む有毒植物であるが、旧暦の正月ごろ、明るい黄金色の花を開くことから元旦草、歳旦草、正月花、報春花、賀正蘭などの縁起のよい名でも呼ばれ、開花が待たれる。
[分布] 日本の固有種?。本州、四国、九州。なお、シコクフクジュソウについて、国立科学博物館叢書『日本の固有植物』(加藤雅啓・海老原淳編)は「日本の固有種であるかどうかという点についてはさらに検討を要する」としている。
[県内分布] 五條市、下市町、天川村。
[記事] 大和地方に自生するものはフクジュソウと捉えられていたが、最近、シコクフクジュソウに改められたことについて、奈良県のレッドデータブック2016年版は「奈良県版レッドデータブック(2008)はフクジュソウとなっていたが、フクジュソウ属の専門家である西川恒彦氏(北海道教育大学)が、それまでフクジュソウとされていたものを4種に分類し、奈良県産のものをシコクフクジュソウとしたので、その見解に従い訂正する。レッドデータブック2014(環境省2015)では、奈良県産のものはすでにシコクフクジュソウとなっている。五條市のものは、奈良県が天然記念物に指定している」と説明している。
なお、自生地の自生箇所は以前より少なくなっているが、保護区域では保護の効果が見られ、個体数が増えているため、絶滅寸前種から絶滅危惧種に変更された。 写真は群生して花を咲かせるシコクフクジュソウ(左)、虫媒花らしく花にはハナアブの仲間がよく来る(中)、積雪の中から茎を出し、花を咲かせたシコクフクジュソウ(いずれも五條市西吉野町)。
生あるものは
大も小もみな
触れる環境に
影響されつつ
暮らしている