<3617> 奈良県のレッドデータブックの花たち(149) シモツケ(下野) バラ科
[別名] キシモツケ(木下野・草本のシモツケソウに対する名)
[学名] Spiraea japonica var. japonica
[奈良県のカテゴリー] 絶滅寸前種(旧絶滅危惧種)
[特徴] 日当たりのよい崖地や岩礫地などに生える落葉低木で、高さは1メートルほどになり、株立ちすることが多い。樹皮は暗褐色で、縦に裂けて剥がれる。葉は長さが3~8センチの狹卵形乃至は卵形で、先が尖り、基部は円形からくさび形になり、縁には不揃いの鋸歯が見られる。裏面は淡緑色で、有毛の葉柄があり、互生する。
花期は5~8月で、よく分枝する枝先に半球状の複散形花序を出し、直径数ミリの小さな5弁花を多数密につける。花弁は円形に近く、淡紅色、紅色、濃紅色、稀に白い花も見られ、変化に富む。雄しべは花弁より長く、30個ほど。雌しべは5個。果実は袋果。
[分布] 本州、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国。
[県内分布] 五條市、天川村、上北山村、下北山村、十津川村。
[記事] 公園の生け垣などで普通に見られ、珍しくないが、大和地方では自生するものが極めて少なく、大峰山脈の高所や北山川河岸の岩場に見られるものの、自生地、個体数とも少なく、シカの食害の影響を強く受けているようで、絶滅の深刻さを増している。なお、北山川・瀞峡のものは「葉が細いタイプで、ドロノシモツケvar. ripensis として区別されることがある」とレッドデータブック2016年版にある。
写真は花期のシモツケ(左)とアサギマダラやハナアブの来訪を受ける花(いずれも大峰山脈の高所岩場)。下の写真は北山川の岩場で見かけたドロノシモツケタイプ(参考)。葉の汚れは濁流によるものだろう。
生きとし生けるものは
みな小さな命の燈火だ
風景に多少の相違が
認められるものながら
みなその命の燈火を
灯しながら生きている