大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年12月13日 | 植物

<3617> 奈良県のレッドデータブックの花たち(149) シモツケ(下野)                           バラ科

                 

[別名] キシモツケ(木下野・草本のシモツケソウに対する名)

[学名] Spiraea japonica var. japonica

[奈良県のカテゴリー]  絶滅寸前種(旧絶滅危惧種)

[特徴] 日当たりのよい崖地や岩礫地などに生える落葉低木で、高さは1メートルほどになり、株立ちすることが多い。樹皮は暗褐色で、縦に裂けて剥がれる。葉は長さが3~8センチの狹卵形乃至は卵形で、先が尖り、基部は円形からくさび形になり、縁には不揃いの鋸歯が見られる。裏面は淡緑色で、有毛の葉柄があり、互生する。

 花期は5~8月で、よく分枝する枝先に半球状の複散形花序を出し、直径数ミリの小さな5弁花を多数密につける。花弁は円形に近く、淡紅色、紅色、濃紅色、稀に白い花も見られ、変化に富む。雄しべは花弁より長く、30個ほど。雌しべは5個。果実は袋果。

[分布] 本州、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国。

[県内分布] 五條市、天川村、上北山村、下北山村、十津川村。

[記事] 公園の生け垣などで普通に見られ、珍しくないが、大和地方では自生するものが極めて少なく、大峰山脈の高所や北山川河岸の岩場に見られるものの、自生地、個体数とも少なく、シカの食害の影響を強く受けているようで、絶滅の深刻さを増している。なお、北山川・瀞峡のものは「葉が細いタイプで、ドロノシモツケvar. ripensis として区別されることがある」とレッドデータブック2016年版にある。

                                             

 写真は花期のシモツケ(左)とアサギマダラやハナアブの来訪を受ける花(いずれも大峰山脈の高所岩場)。下の写真は北山川の岩場で見かけたドロノシモツケタイプ(参考)。葉の汚れは濁流によるものだろう。

    生きとし生けるものは

        みな小さな命の燈火だ

        風景に多少の相違が

        認められるものながら

        みなその命の燈火を

        灯しながら生きている