大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年12月03日 | 創作

<3607> 写俳百句(99) 初冬の雑木林

             賑はへる小春の雑木林かな

                     

 落葉樹が主体の雑木林は、常緑樹が主体の森林に比べ、下草が豊富で、四季による表情の変化に富む。その傾向は春の芽出しから夏の旺盛な緑なす勢い、そして、秋の紅葉と落葉、それに、冬の枯木や枯草による枯れ色の風景。これらの彩りが一年の周期で廻る。

    小春日や雑木林の行き帰り

 春の芽吹きやスプリング・エフェメラル(春の妖精)と呼ばれる、春咲きの草花たちは落葉樹林を主体にした雑木林の産物で、特筆されるが、春はもちろんのこと、冬に向かう晩秋、初冬の雑木林も落葉樹が色づいた葉を落とし、暖かみのある日差しが枯れ行く草々に差し、辺りを明るく彩り、例えば、ススキの輝く穂波や散り残った木々の紅葉などが賑やかに語らい合っているような風景を呈し、道行く者の目を楽しませてくれる。

    小春日や何はともあれ今日の晴

 そのうち、寒風に吹き曝され、徐々に沈んだ風景になって淋しさを増すのであるが、その前の一時、その明るく温もりのある風景が晩秋、初冬の候の雑木林には見られる。この時期は暑くもなく、寒くもなく歩けるのもよい。そんな晴れの日の明るい雰囲気の雑木林ではある。 写真は小春の雑木林。ススキの穂群などが賑やかに語り合っているように見える。探せば晩秋、初冬を彩るリンドウの花に出会える気もする。