花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

2009-09-12 22:14:14 | 季節/自然
 果物が好きだった正岡子規は、随筆「松蘿玉液」の中で梨についてこう語っています。「梨は涼しくいさぎよし。南窓に風を入れて柱に倚り襟を披き片手に団扇を持ちながら一片を口にしたる氷にもまさりてすがすがしうこそ。」また、子規が「すがすがし」いと言った梨の魅力が現れている句には、「梨むくや甘き雫の刃を垂るる」があります。私は実家から送られてきた梨をほおばりながら、梨好きの子規のことを思い出していました。思うに、梨の味わいは最初のひと噛みに凝縮しているのではないでしょうか。梨をかじった時に口の中にほとばしる冷たい滴は、まさに「涼しくいさぎよ」く、涼しさ、いさぎよさを最も鮮やかに感じるのは初めの一口で、後はその確認、確認、確認です。
 味覚の秋の始まりを告げる梨は、その意味でも「いさぎよ」く、「すがすがし」い感じがします。子規は「松蘿玉液」の果物に触れたくだりで、「われ力を菓物に借ること多し」と言っています。季節の移り変わりを伝える果物は、私たちの心にアクセントを与えてくれ、ねじをひと巻きしてくれるようでもあります。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿