花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

アードベッグ 後編(水で割って飲む)

2015-01-30 22:40:29 | Weblog
 アードベッグをいいなと思うもうひとつの理由があります。水で半々に割った時(半々じゃなくても良いかもしれませんが)、ピーティかつノーブルな味わいが一層引き立つように感じたところです。水で割った時こそアードベッグの個性が際立ちます。おそらく、ストレートでは、46度の度数で味わいよりも刺激が勝ってしまうからなのかもしれません。グレンケアンに三分の一ほど注いだアードベッグを、最初はストレートで、次いで水を加えて、全て飲みほした後、「このウィスキーを飲むのは、西の空に赤錆色の残る頃合が一番ふさわしいのではないか」と思いました。昼から夜、オンからオフへこころがうまく切り替わらない時、トンと後押しをして、こころの転轍手になってくれるお酒のような感じがしました。

アードベッグ 中編(生で飲む)

2015-01-28 22:23:14 | Weblog
 村上さんのリストの中では、ラフロイグ、カリラ、ボウモアを飲んだことがあります。ラフロイグは正露丸の臭いが強烈に鼻に突き刺さってくる、それこそ癖のあるお酒で、これが第3位なら1番のアードベッグはどれほどのものかと期待しながら壜を開けました。グレンケアンに注がれた液体は予想に反して薄い色合いでした。臭いも実力者のひと睨みといった感じの鋭さは持っているものの、正露丸、正露丸、正露丸といったパンチの激しさはありません。村上さんが「いちばんワイルド」と述べたその味は、ピート臭は強いながら私にノーブルな印象を与えました。ワイルドと言っても、弁慶ではなく牛若丸のそれであるような、洗練されたものを感じました。怒涛のハードパンチャーと思いきや、きりっとしたカミソリファイターだったので意外の感はありましたが、しかし、アードベッグを選んだことに後悔の念はありませんでした。むしろこの味を大変好ましく思いました。

アードベッグ 前編(買う)

2015-01-26 22:22:08 | Weblog
 前から欲しかったグレンケアンのグラスを手に入れました。これはウィスキーのテイスティング・グラスで、根元が膨らんで先がすぼまっている形は、ぱっと見傘をとったランプか漫画に出てくる海賊船の大砲みたいです。膨らんだ根元部でウィスキーをくゆらせ、狭くなった先っぽで香りを楽しみ、そして飲む、といったティスティングに合った形状なのだと思います。
 さて、新しいグラスには新しいお酒をと、今まで飲んだことがないウィスキーのうちどれを飲もうかと考えた時、村上春樹さんの「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」(平凡社刊)を思い出しました。スコットランドのアイラ島訪問記が収められているこの本によると、村上さんはアイラ島で飲んだシングルモルト・ウィスキーを次のような順番で癖のある順に並べています。①アードベッグ(20年)、②ラガヴリン(16年)、③ラフロイグ(15年)、④カリラ(15年)、⑤ボウモア(15年)、⑥ブルイックラディー(10年)、⑦ブナハーブン(12年)。「最初の方がいかにも土臭く、荒々しく、それからだんだんまろやかに、香りがやさしくなってくる。ボウモアがちょうど真ん中あたりで、ほどよくバランスがとれていて、いわば<分水嶺>というところだ」は、村上さんの評です。何となく癖のある、ガツンとくるのが飲みたいなと思ったので、百貨店へ行って一番癖があるとされたアードベッグを買ってきました。(ただし、20年ものではなく10年ものです。村上さんが飲んだものとは違います)

常識と非常識

2015-01-04 23:16:39 | Weblog
 「○○の常識、世間の非常識」といった言い方があります。例えば、「永田町の常識、世間の非常識」のように、ある特定の組織や集団の中でだけ通用している考え方やカルチャーを否定的に見る時に使われます。ところで、これを逆さまにして「世間の常識、○○の非常識」とすればどうでしょうか。誤解を招くといけないので多少砕くとするなら、「世間に対しては常識的に、組織内の常識は疑ってみよう」と言い換えてみました。対外的な付き合いにおいては、常識を逸脱してトラブルを起こさないように気をつけるのは当然です。また、組織内で当たり前と思われていることについては、本当にそうなのか、惰性でそうなってはいないか、懐疑の目を向けてみるということです。環境の変化が激しい今、以前は通用していたことが段々通用しなくなってきていることもあると思います。安易な前例踏襲を戒める言葉ともなりえます。自らを測る物差しとして常識感覚を磨くとともに、慣れ親しんだ物差しがいつの間にか錆びついていないか注意するために、「常識と言う名のコインの表裏を間違えないようにしなくちゃな」、ひつじ年の初めにそんなことを考えました。