花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

舞いあがれ!

2023-03-31 21:55:00 | Weblog
(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)

 「およー」

 NHKの朝ドラ「舞いあがれ!」でたびたび出て来る「およー」は、長崎県五島列島の方言で「はい」「そう」「イエス」の意味。語尾に力があるので強い肯定の感じが出て、言われた方も言った方も前向きな気持ちになれそうだ。また、ドラマのヒロインの祖母が言った「向かい風が強ければ凧は高く上がる」も、困難に立ち向かう人を鼓舞し、試練を励みに変える。多くの組織では明日から新年度。新入生や新社会人、環境が新しくなる人もそうじゃない人も、気分新たな全ての人に「舞いあがれ!」はエールを送って半年間の放送を終えた。

大衆の反逆

2023-03-15 19:15:00 | Weblog
 本日、ガーシー参議院議員の除名が正式に決まりました。ガーシー元議員は有名人の暴露ネタをSNSで発信していることで知られていて、そもそも問題のあった人物のようです。さて、SNSと言えば、寿司チェーン店での迷惑行為をネットに流して問題になる事件が続きました。また、昨晩は日本テレビのnews zeroで、コンビニのレジにホームレスの人を並ばせて嫌がらせを行った動画を取り上げていました。この動画の投稿者は動機を「バズらせたかった」と語っているそうです。

 SNSとスマホで簡単に動画が撮れるようになったことで、表現活動が人の面でも機会の面でも一気に広がりました。しかし、評価が「いいね!」の数だけで一面的になされがちなため、煽情的なと言うか低俗と言うか、下品な笑いを誘う内容に走ることがまま見られます。折角、表現することのすそ野が広がったのに、人間の卑しい行為を助長しているようで悲しく思います。また、表現の手段を手に入れたように見えても、実は手段の虜とされ逆に使われているような悲しさも感じます。

暁の宇品 その2

2023-03-03 19:43:00 | Book
(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)

 「そのあとの戦さというのは、掛け声だけですね」

 太平洋戦争中、アメリカ軍は戦地へ向かう輸送船に狙いを定め、次々と沈めていった。補給路を断たれた南方各地の兵士は敵と戦うのと同時に飢えとも戦わなくてはならなかった。ガダルカナル島では3万1400名のうち2万800名が戦死し、その7割が餓死であったとされる。戦闘で負けたのではなく、兵站で負けたのである。当時を振り返り陸軍の元船舶参謀はそう嘆く。支援体制を欠いたままの戦争続行は、否が応でも精神論に訴えるしかなくなる。それはやがて特攻という人間を消耗品扱いにする片道切符の戦法に行き着く。

堀川惠子著 「暁の宇品」(講談社刊)から

暁の宇品

2023-03-02 20:25:00 | Book
(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)

 「唯一決まっていたのは、南方物資を還送するという『方針』だけだった」 

 日中戦争継続のための資源を南方に求め、戦線は拡大し太平洋戦争に至る。陸軍は占領目標に対する戦術を入念に練り上げたが、兵站はナントカナルと軽視した。輸送体制の重要性を訴えた田尻中将は、トップの怒りを買い罷免。その後、輸送船はアメリカの攻撃で次々と沈められ、日本と南方を結ぶ海運は壊滅的な状況になる。戦争遂行のための南方進出の結果、目論見とは逆に戦地への補給が滞り、戦力の疲弊を招いた。国内では産業への供給物資が不足し、国力は急速に衰えていった。著者はあとがきで、「狭窄的な軍事的視点でのみ正論を掲げ、全力を投じて闘っても、戦そのものに勝利することはできなかった」と述べている。

堀川恵子著 「暁の宇品」(講談社刊)から