花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

百人一首の源実朝

2015-02-26 20:41:45 | Weblog
 「世のなかはつねにもがもな渚こぐあまの小舟の綱手かなしも」
 この歌は百人一首に収められている源実朝の歌です。これなども、不遇の将軍としての我が身を詠んだ歌とみれば、実朝が痛く、哀しく思われます。「つねにもがもな」には平穏を望む気持ちが、「小舟」は己の無力さが、そして「綱手かなしも」には北条氏の傀儡に甘んじなければならない自分を憐れむ気持ちが、それぞれ込められているようです。「さけて散るかも」の「動」に対して、「綱手かなしも」は「静」と対照的ではありますが、どちらも同じく実朝のやるせない思いを詠んだ、双子のような歌ではないかと思います。

金槐和歌集

2015-02-23 22:32:38 | Book
 源実朝の「金槐和歌集」は前から欲しいと思っていた本です。図書館で借りて読んだことはありましたが、手元に置いておきたいと思っていました。岩波文庫版は品切れとなっていて、神保町へ行った際、時間があれば古書店を覗いて探してみたものの、いつも空振りでした。それが、この2月復刊されたので、早速書店へ足を運んで購入しました。
 私の好きな歌のひとつが、「おほ海の磯もとどろによする波われてくだけてさけて散るかも」です。最初に読んだ時、岩にぶつかって波がしぶく様を、「われて」、「くだけて」、「さけて」、「散る」と畳み掛けるように描写する、その感性にびっくりしました。「これでもかっ!」との勢いに圧倒されました。武家の棟梁としての荒々しさが出ているのかなと思う一方、政治の波に翻弄される自分自身を詠んだ歌と考えるなら、「われて」、「くだけて」、「さけて」、「散る」と言葉が強い分、置かれた境遇を実朝が如何に思っていたかを想像した時、同情の念はなおさら強くなります。