花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

自撮り読みとブーメラン読み

2022-05-28 15:28:28 | Weblog
 5月25日付けの朝日新聞朝刊の文芸時評で、「自撮り的な読み」という言葉に目が留まりました。評者の鴻巣友季子さんによると、「自分から遠く感じるものには無関心」な一方、親近感が湧くものを「私の物語だ」と愛好し、「本の中に自分の似姿を見つけ」ようとする読書傾向を指すそうです。

 こういった読み方では感動が均質なありきたりのものになってしまうので、「自分からちょっと遠いなあと感じる」本を読んでは、と勧めていらっしゃいます。

 さて、この時評を読みながら、私は「ブーメラン読み」なるものはどうだろうと思いました。と言うのは、最近、子どもとの間で次のようなやり取りがあったからです。何かの話の流れで作家の宮本輝さんの名前が出てきて、「大学生の頃、『青が散る』を読んだけど、あれは面白かったなぁ」と言って、あらすじを説明しました。子どもが興味を示したので、「読んでみたいなら貸してあげる」と、ページがすっかり茶色っぽく変色した文庫本を渡しました。

 子どもが読み終わったら、自分も何十年ぶりかで読み返してみようかと思います。自分が薦めた本の感想を聞き、それを頭に入れたうえで読み直してみる、その中で新たに感じるものがありそうな気がします。「ブーメラン読み」が如何なるものとなるか、子どもの読み終わりが楽しみです。

4630万円をネットカジノで使ったそうだけど

2022-05-17 20:59:24 | Weblog
 山口県阿武町でコロナ給付金4630万円を誤送金し、そのお金を返す、返さないの騒動から、全額ネットカジノで使ってしまったと、もっぱらお金の行方に話題が集中しています。けれども、そもそも論として給付金自体の有効性を問う声があっても良いのかなと思います。おそらく、かの24歳は10万円を振り込まれていたとしても、本来の意図には全然沿わなかったでしょうから。個人のモラルばかりでなく、改めて給付金のあり方に目を向けることも必要ではないでしょうか。

今もいますよね

2022-05-03 11:21:52 | Book
 処世術に長けたと言うか、組織の中での生き残り術が上手いと言うか、そういう場面を時々見ることがありますが、今に限ったことではないようです。「渡辺崋山書簡集」(平凡社東洋文庫)を読んでいて、次のような記述に出会いました。江戸詰の崋山が飢饉に苦しむ国元の家老に、救荒にあたっての心構えを訴えた手紙の一部です。

(口語訳)
 自藩に重大な災難が起こった時に同じ役目の者たちが相談し合うと、まず月番が誰だったかとか、その上司の所見はどうかなどと言って責任を転嫁し、自分の意見はなかなか発言しません。たまたま軽率な者が何か一言発言すると、その者に責任を押し付けてごまかし、もしも事に失敗した場合には初めから良策ではなかったなどと言いふらした後に、自分の意見をとり混ぜて同役つぶしの発言をする者が世間には時々あるそうです。

(原文)
 一国大変の生ぜし時、同勤評議の間、先月番先御上席之御了簡などゝ推譲して容易に発言不致、偶麁忽なるもの一言を出せば其ものにゆづり、若し仕損候に及び始より良策にてはなかりしなどゝ、後にて己が了簡を取まぜ、同役つぶしを申もの世間に間々有之候よし。

 今もいますよね、こんな人。