花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

ハムレット

2014-07-28 20:57:29 | Weblog
 先日、子どもとハムレットを観に行きました。観終わってから感想を聞くと、「面白かったよ」。事前に子ども向けのダイジェスト版を読ませていたので、「本で読んだそのままの台詞があったし、あらすじも分かった」とも言っていました。「ローゼンクランツとギルデンスターンはハムレットの代わりにイギリスで殺されて可哀そうだったね」などと、帰りの道すがら登場人物について話しました。当然、話はハムレットにも及びますが、定番とも言える質問を投げかけてみました。「どうしてハムレットは、『このままでいいのか、いけないのか。それが問題だ』と言うばかりで、父親殺しの復讐をしなかったのだろう?」「レアティーズはお父さんのポローニアスが殺された時、フランスからすっ飛んで帰って来てハムレットを殺そうとしたのに、ハムレットは悩んでばかりだったよね」、子どももハムレットとレアティーズのふたりの若者の行動が対照的だったと思っているようでした。結局、ふたりが出した結論は、「ハムレットがレアティーズのような性格なら劇は2時間もたず、30分くらいで終わってしまうだろう。劇を面白くするためにハムレットは悩んでいなければならなかった」でした。私たち親子は文学的素養に欠けているらしく、身も蓋もない結論に至りました。

汗をかかないグラスで

2014-07-14 22:22:21 | 季節/自然
 朝、会社に着いて自動販売機で買ったペットボトルの水が見る間に水滴でびっしょりとなります。夏の訪れを感じさせる光景です。「今日は蒸し暑いぞ」と思う一方、ペットボトルを伝う露玉が涼しげに見えたりもします。もし露を帯びたのがペットボトルではなく、冷酒が注がれた酒器であるなら食欲が掻き立てられます。この季節では真っ先にハモが思い浮かびます。小津安二郎監督の「秋刀魚の味」で東野栄次郎が笠智衆らに「魚偏に豊と書いてハモ(鱧)」と言いながら頬張ったハモです。お箸を使う場合は多少指先に滴がついても平気ですが、お寿司をつまむ時は出来ればそうでない方が良いかと思います。お寿司の時は汗をかかないグラスが有難いです。bodum社の二重(ダブルウォール)になったグラスだとお酒は冷たいまま、外側は乾いたままで指先の濡れを気にする必要はありません。先日、鮭の切り身の焼いたのを食べながら、冷やした東長をbodumのグラスで飲みつつ、そんなことを考えました。そして、今度は冷たい稲田姫でお寿司をつまみたいものだと思いました。

 しめられて 身はシャリの上 涼みおり

野ばら

2014-07-03 22:19:20 | Weblog
 ある童話に国境を守る兵士の話があります。大きな国とそれより少し小さな国が接する国境で、それぞれからひとりずつの兵士が派遣され守備についていました。大きな国の兵士は老人、少し小さな国の兵士は青年でした。いつしかふたりの兵士は打ち解けて、野ばらに集まるミツバチの羽音を聞きながら挨拶を交わす仲になり、日中は将棋を指したりしていました。冬がやって来て、老人が「早く、暇をもらって帰りたいものだ」とつぶやけば、青年は「あなたがお帰りになれば、知らぬ人がかわりにくるでしょう。やはりしんせつな、やさしい人ならいいが、敵、味方というような考えをもった人だと困ります」と答えます。そのうち、ふたつの国は戦争を始めます。戦場はふたりがいる場所からは離れていたのですが、青年は戦場へ赴きました。残されて寂しい日々を送っていた老人は、通りかかった旅人から少し小さな国の兵士は皆殺しにされ、戦争が終わったことを聞かされます。青年の身を心配する老人は、青年が野ばらのにおいをかいで去って行く夢を見ます。その夢からひと月くらいして野ばらは枯れ、その年の秋に老人が南へ帰るところで話は終わります。これは、岩波文庫「小川未明童話集」に収められている「野ばら」というお話です。仲良くしていたしんせつな、やさしい人たちが引き裂かれ、踏みにじられるお話であります。