花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

「いのちの重さ」の軽さについて (下)

2013-11-24 11:06:28 | Weblog
 戦後教育の中で「人命の尊さ」が教えられてきました。観念的には人の命が重いことを誰もが知っています。けれど、それは薄いヴェールのようなもので、しっかりと私たちに根を下ろしていません。そのため何かの拍子で私たちの地の部分が顔を出します。社会や組織の効率が個人に優先するのが当たり前になっているのを、私たちは身近に感じることが出来ます。かつて人の命が消耗品であり、如何に軽いものであったかは、インパールやガダルカナルでの日本軍を思い出すだけで充分でしょう。その頃の日本は狂っていた、今はそんな時代じゃないと思っていても、もしかすると五十歩百歩くらいの隔たりしかないのかもしれません。だから、教えられた「いのち重さ」はいとも簡単に消え去り、本然の姿が現れて「チェッ」と舌打ちが出てしまうのかもしれません。であるからこそ、しつこい程に「いのちの重さ」を教え込まなければならないと思いました。薄いヴェールがいつの日か私たちの皮膚にまで同化するように。私はそんなことを思いながら、西沢渓谷の滝の水流を受けて底深いコバルトブルーの水を湛えたお釜を眺めていました。

「いのちの重さ」の軽さについて (上)

2013-11-23 10:51:01 | Weblog
 先週の土曜日、山梨県の西沢渓谷へ行きました。紅葉は終わっていると思いましたが、木の枝にわずかに残った錆色の葉っぱと渓谷を流れるコバルトブルーの流れの取り合わせは、秋の終わりが近づいている中、晩秋の風情があったいいかもと期待して出掛けました。JRの駅で電車を待っていたところ、三鷹駅で人身事故があったとかで電車はなかなか来ません。新宿駅発の特急に間に合わせるため地下鉄で新宿へ向かい、発車予定の10分前に着くことが出来ました。新宿駅では中央特快が各駅停車になるなど、ダイヤの乱れを告げるアナウンスが次々に流れていました。私が乗った特急は10分遅れで出発。立川には20分遅れ、八王子には30分遅れで到着しました。秋晴れの行楽日和の土曜の早朝、相当たくさんの人たちが影響を受けたことでしょう。
 ところで、前に何かで読んだ文章に今でも頭に残っているものがあります。要旨は次のようなものです。「朝のラッシュ時、人身事故で電車が止まると、慌てて携帯電話で連絡を取り始めたり、舌打ちをしたり、うんざりした顔をする人で車内はいっぱいになる。今この時、ひとつの命が消えたというのに誰もそのことを考えてやしない。」 きっと、私が乗った電車や中央線の各駅、各電車でも三鷹駅でひとつの命が消えたことを受け止めもせず、やれやれと思っている人がたくさんいたことでしょう。

男の花道

2013-11-04 18:40:47 | Sports
 昨晩、日本シリーズをTV観戦していて楽天が3点リードした時、この点差で9回までいけばマー君が投げるかもと思いました。マー君はその前日の試合で9回完投したものの負けてしまい、日本一を決めることは出来ませんでした。しかも投げた球数は160球でした。ふつうに考えればマー君の出番はなさそうですが、オフシーズンには大リーグ移籍が噂されており、日本で投げるのはこの日本シリーズが最後になるかもしれず、そうとなれば星野監督がマー君に男の花道を飾ってあげるのではと思ったからです。日本での最後の試合が負け投手よりも優勝投手となる方が、どれだけマー君へのはなむけになるでしょうか。星野監督の胸の内が分かるはずもありませんが、3対0の楽天リードで9回を迎え、予感通りマー君がマウンドに上がりました。そして、2死をとった後、ジャイアンツの矢野選手を三振に切って取り東北楽天イーグルスが日本一になりました。
 ところで以前、中日の山井投手が日本シリーズで8回まで完全試合を続けていたことがありました。その時、落合監督は9回のマウンドを岩瀬投手に託しました。勝利の方程式に従ったまでと言えばその通りです。楽天も中日も日本シリーズを制したので、どちらの監督の采配も間違ってはいなかったのでしょう。しかしながら、山井投手はその後成績面ではもうひとつの感があります。来季、マー君が果たしてどのチームで投げることになるのか、そしてどのような成績を残すのか、
それが明らかになった時、もしかすると両監督の采配の違いについて何かを語ることが出来るかもしれません。