花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

励ましになる人、そしてならない人(中)

2013-01-27 13:21:10 | Weblog
 同志社大学脳科学研究所教授の杉本八郎さんは、アルツハイマー治療薬を開発し、製薬分野のノーベル賞と言われる「ガリアン賞特別賞」を受賞された方です。杉本さんは高校卒業後、製薬会社のエーザイに就職し、研究の補助的な仕事をする傍ら中央大学理工学部の夜間部に通い、同大学を卒業した後は、創薬や人事の仕事に携わっています。その後エーザイを退社し、京大を経て現職に就いています。その杉本さんのインタビュー記事が日本マーケティング協会から出ている「マーケティングホライズン」12月号に載っています。そこで、杉本さんは就活生に向けてこう語りかけています。『今の人たちはスマートに仕事をし過ぎています。失敗しないようにうまく立ち回る人が多い。自ら選んで壁にぶち当たるような仕事をしなさいと言いたい。壁にぶち当たって跳ね返される、これを何回も繰り返さないと本当に良い結果は生まれません。失敗が怖いのは皆同じです。でも失敗して「もうだめだ!」というときにがっかりしない道があります。それは自分が生きている意味は何かを考えることです。私はその人生の価値は「どれだけ人々のお役にたてたか」ということに置いています。そして「自分は人のために生きている」ことを決意すると人生の風景が変わるのではないかと思います。私は失敗してもくじけないために「人の為になる生き方を選ぶこと」これをお進めしたいとおもいます。「助かりたいより助けたい」、この言葉を若者に贈りたいですね』
 ドイツ語で職業のことを”Beruf"と言います。同じ意味の英語は”calling"で、どちらも意味は天職です。杉本さんの言葉は、職業に使命感を持って取り組むこと、すなわち天職としての職業を言い表していると思います。(つづく)

励ましになる人、そしてならない人(上)

2013-01-19 15:01:26 | Weblog
 これから働こうとする人、あるいは既に働いている人に力を与えてくれる2つのメッセージを最近読みました。ひとつは朝日新聞出版から出ている「AERA」1月21日号の「現代の肖像」で取り上げられている孫崎亨さんの言葉です。孫崎さんは、外務省が「対米追随」に傾いていく中「自主外交」を主張して、挙げ句、給与が3分の1に減るような人事の仕打ちを受けることになりました。しかしながら、現在は、22万部を超える「戦後史の正体」(創元社刊)の著者として、また5万6千人のフォロワーを持つツイッターの発信者として、その外交論が注目される評論家です。
 以下、私が「いいなぁ」と思った孫崎さんの言葉を「AERA」の記事から抜き出します。(孫崎さんが好んで語るCIA職員から聞いた話)『ひとりひとりの死は犬死に見えても、犬死にの上に築かれるものもある』、それから、(防衛大学の学生に対する孫崎さんの話)『自分という種が蒔かれる場所を自分で選ぶことはできない。しかし、蒔かれた場所で花を咲かせる努力はできる』
 「矜持」とは如何なるものかをよく表している言葉だと思います。(つづく)

年頭書感

2013-01-05 11:05:00 | Book
 三箇日、司馬遼太郎さんの「街道をゆく」シリーズの「モンゴル紀行」(朝日新聞社刊)を読みました。新年早々の清々しい気分の中、すっきりと清朗な物言いに耳を傾けてみたいと思ったからです。案に違わず、司馬さんの文章は明快で、該博な知識に裏打ちされた細かな観察が綴られていました。また、読んでいて何より心地よいのは、古今の人間の営みに対する親愛の情が伝わってくるところです。「少年のころ、夢想の霧の中でくるまっているほど楽しいことはない」とは、本書の書き出しですが、この「夢想の霧」とは濃密な好奇心を含んだものに外ならず、そして豊かな想像力を携えた好奇心が、人の営みを見る眼に優しさを与えているのだろうと思いました。