花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

優等生の罪

2015-07-29 20:17:00 | Weblog
 7/28の朝日新聞夕刊に、先日亡くなられた鶴見俊輔さんの追悼記事が載っていました。追悼文を寄せた歴史社会学者の小熊英二さんは、鶴見さんの優等生嫌いについて触れています。『鶴見は「優等生」を嫌った。優等生は、先生が期待する答案を書くのがうまい。先生が変われば、まったく違う答案を書く。教師が正しいと教えた「枠組み」に従う』この文章を読むと、最近不正が発覚した東芝のことが頭をよぎります。そもそも論として利益を水増ししていいのかといった点には目を向けず、「チャレンジ」、「真水」、「C/O(キャリー・オーバー)などの言葉の下、いかに手際よく数字を作れるかに手腕を発揮した人たちは、紛れもなく鶴見さんの言う「優等生」なのだろうと思います。また、マックス・ヴェーバーの言う「精神のない専門人」とも重なってくるだろうと思います。褒められたい、あるいは叱られたくない、そういった気持が強いあまり、「枠組み」自体について考えなくなることがあってはなりません。「枠組み」の意味を不断に問い、褒められなくても自分の考えを述べる、それが鶴見さんの精神を絶やさないことにつながると思います。

張りつめた空気

2015-07-23 23:11:42 | 季節/自然
 7/22付・朝日新聞朝刊1面の「折々のことば」では「閑さや岩にしみ入蝉の声」が取り上げられ、「沈黙のなかにぴーんと張りつめた空気がある」とコメントが添えられていました。「ぴーんと張りつめた空気がある」と言えば、私は若山牧水の「白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ」を思い出します。「ただよふ」と言いながらもそこに緩んだ気配はなく、一羽の鷗が空と海の青の中を悠々と舞う姿を切り取って静止画にしたかのような、この歌の一刹那性に「ぴーんと張りつめた空気」を感じます。また、夏のくわっと強烈な日射しを浴びて、暑さを感ずるよりも一瞬呼吸が止まったかのように感じる時、この歌が頭をよぎることがあります。「張りつめた空気」、それから「夏」、これらが引き金となって「白鳥は」の歌が連想された朝でした。

取り換えっこ

2015-07-06 21:19:14 | Sports
 今朝、なでしこがバンクーバーに散りました。サッカー女子W杯決勝は、アメリカが日本を5対2と圧倒し、栄冠をつかみました。連覇を期待したなでしこファンは、さぞがっかりしたことだろうと思います。会社へ行くまでの時間、テレビ観戦していた私は、アメリカの速さについていけない日本の選手たちを見て、この4年間、アメリカの進化の方が大きかったんだなと思いながら、後半が始まって早々家を出ました。案の定、負けはしたものの、アメリカが高い壁として屹立してくれたのは、今後のなでしこにとって良い目標になるはずです。アメリカは前回ドイツ大会の決勝で日本に敗れてから、時計の針が止まったままになっていたと、フジテレビのアナウンサーが実況中に言っていました。カナダ大会決勝では、日本とアメリカが杯と時計を取り換えっこしたことになります。そう考えると、気持ちの切り替えも早くなるのではないでしょうか。決勝が始まる前、手に取った朝日新聞朝刊のスポーツ面には、ドイツ相手の3位決定戦に勝ったイングランドのバセット選手の言葉が出ていました。準決勝でオウンゴールをした選手です。「過去は変えられない、前を向かないといけない。」日本戦の後、泣きじゃくっていたバセット選手は、しっかり気持ちを立て直すことが出来たのでしょう。なでしこの各選手も、先ずは身体の疲れを癒して、また上を目指してもらいたいものです。
 ところで、阪神タイガースを応援することで、私には狡猾なる忘却と手前勝手な歓喜が身についています。今日は狡猾なる忘却を発揮しますが、五輪、そして次回W杯では手前勝手な歓喜を味わいたいと思います。